聞き流せるニュースではない。

 AFCU−23選手権の1次予選で、日本は中国に敗れた。

 大会名が示すように、23歳以下の選手に出場資格がある。日本が1対2で競り負けた中国は、そのとおりのチーム編成をしてきた。中国にゴールをもたらしたふたりの選手は、いずれも22歳である。

 一方の日本は、20歳以下の編成だった。それも、ベストメンバーではない。過日のU−20W杯に出場したチームから、攻撃のキーマンがゴッソリと抜けていた。エールディビジのフローニンヘンへ移籍した堂安律、クラブの活動が優先された久保建英と岩崎悠人、ケガで長期離脱中の小川航基を欠いた。

 来年1月の決勝大会には、グループ2位の成績上位国で出場できる。だからといって、中国に負けた現実から目を背けていいとは思えない。

 2017年現在の20歳以下の選手は、2020年の東京五輪で主力となる。ところが、所属クラブで定位置をつかんでいる選手は少数派だ。

 堂安らが出場していれば、違う結果になっていたかもしれない。それにしても、20歳以下の選手層が決して厚くないことを、今回のU−23選手権は示唆している。同世代という“横のボリューム”が薄いのだ。

 主力と見なされる選手が出場できないのは、これからも起こり得る。東京五輪も例外ではない。

 堂安がヨーロッパでステップアップしていけば、所属クラブが派遣に難色を示すかもしれない。18歳になった久保がバルセロナへ戻ることになれば、このレフティーに日本代表のユニフォームを着せるのも難しくなってくる。

 昨夏のリオ五輪で久保裕也を招集できなかったことを、我々は忘れてはならない。久保と南野拓実の取り扱いについて、日本サッカー協会はクラブ側への配慮を積み重ねていった。23歳以下の選手は、各国協会が招集に強制権を持てない。クラブとの円満な関係を構築し、もっとも重要なリオ五輪に派遣してもらうために、控え目な立場を貫いた。

 ところが、久保が当時所属していたヤングボーイズから、最後の最後で派遣を拒否されたのは周知のとおりである。ケガ人が出たことによるチーム事情が理由だったが、同様のケースに見舞われるリスクは排除できない。ヨーロッパと日本では、五輪に対する絶対的な温度差があるからだ。日本と同グループだったスウェーデンも、クラブ側からの招集拒否を何度も受けた末にチームを組み立てていた。

 そうした事態を想定すると、“横のボリューム”を厚くしておきたい。東京五輪世代を、素早くかつ継続的に活動させていくのだ。国内でのショートキャンプや海外遠征などはもちろん、日本代表と連動してテストマッチを組んだり、リーグ戦に参加させたりするなどのプランも検討したいところだ。

 たとえば、ルヴァンカップにチームを出場させるのはどうだろう。今年の同大会は、21歳以下の選手をひとり以上先発させることが義務付けられた。その効果もあって、ルヴァンカップは若い選手の出場機会創出の機会となっているが、東京五輪世代がチームとして出場することで、世間一般の認知度を高めることにつながる。注目度のアップは、選手一人ひとりの意欲を刺激する。競争心が広がり、“横のボリューム”の厚みを促すきっかけになり得る。

 来年度のルヴァンカップには、J1からJ2へ降格した2チームが参加することが決まった。そこはかとない不公平感が、これから漂っていく気がする。ならば、東京五輪への強化を進めるべきだと思う。開幕まであと3年という時間に、余裕を覚えることはできない。