筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの病気や脊髄損傷による麻痺に苦しんでいる人のために、脳の信号を受けて機械や端末を動かせるブレイン・マシン・インターフェイスの開発が進められていますが、スタンフォード大学ではALS患者の脳とNexus 9を接続して、ブラウジングさせることに成功したそうです。

Scientists Connect Brain to a Basic Tablet-Paralyzed Patient Googles With Ease - Singularity HUB

http://singularityhub.com/2015/10/25/scientists-connect-brain-to-a-basic-tablet-paralyzed-patient-googles-with-ease/



Society for Neuroscience

https://www.sfn.org/annual-meeting/neuroscience-2015

ALSのような神経変性症や脊髄損傷による体の麻痺に苦しんでいる人は全世界に何百万人もいます。スタンフォード大学で臨床試験に協力している女性患者「T6」さんも、首から下をほとんど動かすことができません。

そこで期待されているのがブレイン・マシン・インターフェイスです。例えば視線や頭の動きを追跡することでマウスカーソルを動かし、アウトプットにつなげる試みが行われており、いろいろな機器が開発されていますが、まだまだ追跡技術に不正確な部分があったり、視線追跡だと利用者の目が極端に疲れたりと、問題点があります。

これに対する解決策を示したのがスタンフォード大学のPaul Nuyujukian博士で、神経工学を利用した方法です。脳にマイクロアレイチップを埋め込み、手などの感覚器官を通してではなく、脳とコンピューターとを直接接続する方法。意思に関係する神経信号が、最新のアルゴリズムによってリアルタイムでデコードされ、マウスカーソルを動かすことができる、という仕組みです。



by Chris Potter

Nuyujukina博士のページの「Research」の項目に、実際に女性患者がどのように操作を行っているのかという画像が掲載されています。



Nuyujukian博士らのチームが女性患者とともにこの問題に挑み始めたのは2013年ごろ。動きを司る左脳にアレイを埋め込み、女性がターゲットの文字をじっと見つめるときの脳の活動を記録。信号をカーソル移動とクリックという実際の操作に変換していました。いわば、キーボード操作の苦手な人が人差し指だけでキーボードを推しているようなスタイルでの入力です。当時としては最先端の技術で高い精度を誇りましたが、その処理は非常に遅く、長いトレーニングをしていても、たびたび誤入力が発生して「Delete」キーに視線を移す必要がありました。

博士らは、もっと柔軟な入力方法が必要であると実感。ポイント・アンド・クリックというマウス操作が、タッチスクリーンをタップする動作と似ていることから、自分たちでタッチスクリーン端末を開発するのではなく、すでに市場に出ているタブレットを活用することにしました。



by Matteo Doni

さっそくNexus 9を購入してセットアップした研究チームは、女性患者がどこをタップしようとしたかという脳波を読み取れるようにカスタマイズ。ブラウザアプリを使ったところ、細かい文字のリンクであっても操作に詰まることはなく、QWERTY配列キーボードも難なく使えて、現在、女性はGoogle Playにもアクセスしています。

従来の研究から、マイクロアレイチップは最低でも2年はハードとソフト、両面の問題が出ないことがわかっていますが、チームではもっと長く使えるように改良を進めているとのことです。