鍋の季節はプリン体警報発令中!鱈の白子で一杯が命取り

■アクアビットと鱈

北風吹いて、わが家で鍋の出番が増えてくると、がぜん人気急上昇してくるのが、鱈だ。

この魚は世界的にも需要があるようで、ノルウェーでは、棒鱈にしたものを輸出していて、それがスペイン、ポルトガルあたりで民族好みの料理に変身している。日本でも、九州や東北の山間部では干物の料理が伝承されていて、これが手間のかかる分、特有の、えもいわれぬ魅力を醸している。

海産物を乾燥させるのは、保存と輸送のための知恵であろうが、煎海鼠(いりこ)に代表されるように、わざわざ干して、それを水で戻し、じっくりと調理したほうが、とろとろ、ほろほろの食感と風味が滲み出してくる例もある。ルーテフィスクも同様ではないだろうか。

その昔、欧州を放浪していたとき、デンマークから列車でノルウェーへ移動した。列車がそのまま船倉に積み込まれ、ドアがロックされて乗客は列車内に閉じ込められるのだが、若い連中はおとなしくなんかしていられない。私の前の席では青年3人が大盛り上がりで、スコール、スコールと叫んではグラスをあおっている。何を飲んでいるんだろう、とのぞいたら、腕を引っ張られ、肩を叩かれて、スコールをやれ、ときた。

そそがれた透明な液体を口にふくめば、たちまち拡散するスパイシーな香り。キャラウェイにちがいない。ジンに似ているが、もっとシンプルで、森をわたる風のようにさわやかに鼻腔を抜け去る。ボトルには「AALBORG」とある。「オールボー」と彼らは発音していた。これがアクアビットとの邂逅で、それはデンマーク産であった。

後で知ったのだが、アクアビットはノルウェーでも生産されている。彼らがデンマーク産を飲んでいた理由は、オスロに到着して判明した。税吏が彼らのリュックを強制捜索、ごろんごろんと大量の瓶が出てきた。免税品をナイショで持ち帰ろうとしたらしい。しょんぼりとする姿に同情しきりの私であった。

■白子も少しなら大丈夫!?

オスロでたまたま出会った日本人ツーリストから、まだ観光地化されていないけど日本の旅行会社が眼をつけていて、いずれメジャーになる、と教えられ、それなら先取りで、と行ったのがグドヴァンゲンである。

鉄道列車の車窓からは森林、氷河、滝などいかにもスカンジナビアな絶景が眺望できて、なるほど人気になりそうな、と予感された。ベルゲンの手前を北へ折れた先の港町がグドヴァンゲンで、ここから観光船でフィヨルドを眺めながらフロムという港町で下船するというルートであった。

そんな港町の大衆食堂で出されたのが、ルーテフィスクで、北欧風鱈の煮こごり、という印象をもった。ナマコも干して戻して煮ると、ぷるんぷるんの食感になるように、鱈も干して戻すとこうなるのか、などと感心した。

鱈は、100gにつき77〜79kcalと、低カロリー食材の部類に入る。ただし、プリン体含有量について私は正確な数値をあえて把握しようとしていないので、わからない。が、どうやら、鰹に次ぐ位置にあるらしい。

大量に食べると、痛風にはよくないのであろうが、鱈は100gでも、けっこう満腹感を味わえるほどの量になる。

鱈の白子は、プリン体の宝庫である。白子は精巣で、DNAがぎっしり詰まっているのだから、当然だ。

北海道では真鱈の白子を「マダチ」と呼び、明白に区別するが、他所の地域では、さほどでもないようだ。スケトウ鱈の白子は、加熱すると硬くなり、さかな臭くなる。ところが、マダチは加熱しても、なぜかとろりと柔らかく、臭みもない。

マダチも大量に食せば痛風発作につながるだろうが、チョコッとつまむ程度であれば、問題ない。などと、不穏な囁きで不安をごまかし、冷凍庫でとろとろにしたアクアビットに、湯びきしたマダチへ酢橘を数滴たらし、とろり、とろりと酔いをたのしむ夜寒である。

(作家 山本亥(がい)=文)