10月13日の大阪駅は16時半頃に列車の運転が終了。まだ夕方ながら、ホームは終電後のようになった。

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台風接近前に大規模な運休を決定したJR西日本。私鉄が大きく混乱することなく運行していたせいか、賛否両論がわき起こっています。JRにも事情がありそうですが、なぜこのような状況になったのでしょうか。

公共交通機関としての「社会的責任」と「安全」

 2014年10月13日(月・祝)に台風19号で大きな影響を受けることが予想されたため、その前日に京阪神地区での大規模運休を決定したJR西日本。しかし台風が去ったいま、その判断についてネット上でも賛否両論がわき起こっています。

 まず否定的な意見について、「安全」という錦の御旗を盾にして「公共交通機関としての社会的責務を果たしていない」「逆に無責任」「状況に応じて柔軟にできる限りのことをすべきだ」「これが許されるとすぐ運休するのが当たり前になり、社会活動に影響が出る」といったものが見られます。私鉄は大きく混乱することなく運転されていたことも、こうした否定的な見方に関係していそうです。

 これに対し肯定的な意見としては「安全が最優先」「予想されたリスクに明確な対応を行い、広報に努めたことで混乱が最小限になった」「事故が起きたり、実際に大勢の乗客が混乱に陥ってからでは遅い」「早期に運休が決断されたことで、乗客も商業施設も予定を変更するなど対処ができた」「中途半端に止まってハラハラ心配しながら乗るより良い」「不安定な運行より安定した運休のほうが良い」「私鉄が動き、大ごとにならなかったのは結果論」といったものが見られます。

 仮に今回の台風で私鉄に大きな影響が出ていたら、こうした賛否両論の状況にはなっていなかったかもしれませんが、そもそもJR西日本と私鉄では状況が違うため、単純に比べられない部分もあります。

休み明けの通勤電車が混乱した可能性も

 私鉄は路線が短く、列車の走行距離も短めで、運行体系も比較的単純です。それに対しJR西日本は路線が長く、列車の走行距離は長め。運行体系も他路線への直通運転が多いほか、特急から普通、貨物まで様々な列車が追い越し追い抜かれながら複雑に絡み合う場合があります。

 つまり柔軟に列車を運行することがあまり簡単ではないうえ、ダイヤが混乱すると私鉄に比べJR西日本は収拾が難しいのです。もし運行して大きく混乱してしまった場合、車両や乗務員のやりくりに影響が出て、休み明けである14日(火)朝の通勤時間帯に列車の運休などが発生したかもしれません。デメリットもありますが、台風による影響を最小限に抑え、翌日の運行をより安定、確実なものにするという意味では、こうした計画運休は効果があるといえます。それにもちろん「安全が最優先」です。

 ただ「安全は最優先」ですけれども、次のような例もあります。

 1970年代、国鉄の労働組合が上層部との闘争手段として「順法闘争」を行いました。例えば、列車が60km/hに速度制限されているカーブを通過する場合、運転士は「安全のため」として、止まりそうな速度まで減速しながらカーブを通過。当然、ダイヤは大きく乱れていきます。簡単にいえば「安全のため」「法令や規則を厳密に守るため」といった名目で非合法とは言い切れない手段を用い、ダイヤを乱すなどして上層部へ圧力をかける、というものです。当然、乗客は大きく憤慨。暴動が発生したこともありました。

 これはあくまで極端な例で、今回のJR西日本の決断と直接結びつけることは難しいですが、「安全のため」がどんなときでも順当な理由になるとは限りません。

 「安全な運行」と「安定した運行」。似たような言葉ですけれども、背反するものです。その背反するふたつの要素をいかに両立していくか。今回得られたデータを含めて研究と対策が進み、鉄道が社会においてより便利で信頼できるものになることを願うばかりです。