ダービー大敗。香川抜きのマンUに未来はあるか?
今季初のマンチェスターダービーは、驚きの結果に終わった。昨季王者マンチェスター・ユナイテッドがマンチェスター・シティに完膚なきまでに叩き潰され、敵地エティハドで1?4の大敗。ユナイテッド唯一の得点は、試合終了間近にウェイン・ルーニーが決めた直接FKのみ。そして注目の香川真司は、ベンチ入りしたものの、最後まで出番は得られなかった??。
ユナイテッドの敗因はいくつか挙げられるものの、最も大きかったのは、主砲ロビン・ファン・ペルシーが軽度のケガで欠場したことだろう。突出した個人スキルでゴールを仕留められるオランダ人ストライカーの不在は、ダービーの戦い方を根本から考え直さなければならなかったに違いない。ただ、その再考した新たな作戦に、「香川の起用」は含まれていなかった。
モイーズ監督は、これまで香川を起用しなかった理由として、「コンフェデレーションズカップ出場によるチーム合流の遅れ」と、「国際親善試合での長距離移動」を挙げてきた。たしかに昨シーズン終了から現在に至るまで、香川は過酷なスケジュールをこなしてきた。6月はコンフェデレーションズカップに出場したことでオフが削られ、ユナイテッドへのプレシーズン合流が遅れた。さらに、プレミアリーグ開幕を3日後に控えた8月14日のウルグアイ戦、そして9月1日のリバプール戦と14日のクリスタル・パレス戦の合間に行なわれたキリンチャレンジカップ(9月6日、10日)への出場のため、短期間で二度も日英を往復移動しなければならなかった。また、9月12日のスポンサー記者会見や2日後のクリスタル・パレス戦を風邪で欠席するなど、香川自身が体調を崩した面もある。そんな背景を考慮すると、指揮官としては香川を起用しにくい状況だったのかもしれない。
とはいえ、9月17日に行なわれたチャンピオンズリーグ1次リーグ、レバークーゼン戦に出場した香川は、病み上がりのコンディションにもかかわらず、チームの中で『違い』を演出してみせた。4?4?2の左MFとしてプレイした71分間は、独特のリズムとファイナルサードでのパスワーク、そしてクレバーなパスコース作りといったお馴染みのパフォーマンスを披露。香川が出場しなかったマンチェスターダービーと比較すれば、レバークーゼン戦のユナイテッドのほうが明るい未来を感じさせた。
「(もはや加入)1年目ではない。このチームに『何かを』残していかなければならない。それがどんな状況であれ、結果に結びつけなければならない」
レバークーゼン戦後、香川がミックスゾーンで語っていた「何か」の中には、ユナイテッドの攻撃戦術をさらに進化させるという意味が込められていたはずだ。それは昨シーズン、サー・アレックス・ファーガソン前監督が香川を獲得した際に期待したように......。だが、新生ユナイテッドが進化を目指すべき『パス&ムーブ』のダイレクトプレイは、皮肉にもダービーで、ライバルのシティに見せつけられることになったのである。
ダービーでのシティは、緩急をわきまえた多彩な攻撃面において、昨シーズン以上の進化を感じさせた。FWネグレドが前線で激しいプレスを仕掛ける一方、アグエロ、ナスリを中心とするテクニシャンが巧みにショートパスをつなぎ、さらにサイドバックやボランチの攻撃参加をうながしてアタッキングサードへと迫っていく。そして、いざフィニッシュへのスイッチが入れば、サイド、中央を問わず、クオリティの高いパスとクロスから、一気にゴールを奪っていった。
一方、ファン・ペルシーの欠場により、ルーニーとウェルベックの2トップでスタートしたユナイテッドは、左MFにヤング、そして右MFにバレンシアという純正ウイングを配置し、中央には新加入の巨漢フェライニと職人肌のキャリックという組み合わせでダービーに挑んだ。だが、シティの多彩な攻撃にチーム組織は早々に崩壊し、後半開始直後の時点で4失点。ところが大量失点を喫したモイーズは、香川というカードを切ることはなく、ヤングに代えてボランチにクレバリーを投入。ルーニーを1トップに配し、トップ下にフェライニ、左MFにウェルベック、右MFにバレンシアという「4?2?3?1」への布陣変更で局面打開を試みた。
モイーズが期待を寄せるフェライニは、90分を通じて屈強なフィジカルを披露し、攻守両面において異彩を放った。だが、シティのような素晴らしい戦術に対し、たったひとりの新加入選手で対抗できるほど、プレミアの舞台は甘くはない。ユナイテッドの攻撃は完全に封じられたまま、ダービーを終えた。
「たかが1試合。どんな監督にも悪い日、悪い結果を迎えるときがある。私もその例外ではない」
試合後の会見で、モイーズ監督はそう言い放ったが、その「たかが1試合」で示されたシティとの戦術的な『違い』は極めて大きい。新指揮官は、その差を埋めるためのイメージと具体的な戦術的方策を、世界中のユナイテッドファンに提示できるのだろうか。シティが披露したハイクオリティな攻撃形は、まさしくレバークーゼン戦でルーニーやファン・ペルシーとともに、香川が示したものだったと思うのだが......。
次のダービーは来年の5月1日、会場は本拠地オールド・トラッフォードだ。そのとき、ユナイテッドはシティにリベンジを果たせるのか、そして攻撃戦術の進化の行方は??。この大敗を「エティハドの教訓」として次に生かすか、それとも「エティハドの悲劇」として語り継がれるかは、次節以降のモイーズの決断にかかっている。
鈴木英寿●文 text by Suzuki Hidetoshi

