【戸塚啓コラム】松田選手をつき動かしていた“揺るぎない思い”
松田直樹選手が亡くなったというニュースに接して、本当に言葉を失ってしまった。ご本人の無念さ、ご遺族の悲しみの深さを思うと、何と言っていいのか分からない。
チームメイトに聞く彼は、ほぼ例外なく「とにかくサッカーが好きだね」という答えの返ってくる選手だった。まだ20代前半当時には、「精神的にちょっとムラがあるかな」とか、「負けていると熱くなって、すぐに攻めに行っちゃうんだよね」といった補足も聞かされたが、「でも、あいつの身体能力はすごいよ」とか「当分は代表でもレギュラーでしょう」いった評価が追いかけてきた。話し手は決まって、穏やかな表情を浮かべていたものだった。
個人的に親しかったわけではいが、松田選手はJ1で16年もプレーした実績を持つ。いくつかの接点を探すことはできる。すぐに思い出したのは11年前の2000年6月、モロッコで行われたハッサン二世杯の彼だった。フランス戦で西澤明訓が強烈な右足ボレーを叩きこみ、ジャマイカを4-0で一蹴した大会である。
この大会で、松田選手はゲームキャプテンを任されていた。試合後にはフラット3についてはもちろん、ゲーム全体を総括するコメントを求められる。キャプテンマークを巻いた選手に課せられるちょっとした使命だ。
ジャマイカ戦にはこんな話をした。
「フランスとやっていい経験になったけど、今日はね。ジャマイカは身体能力が高いけど、何とも思わなかったですよ」
彼らしいストレートなコメントだ。そうは言っても、表情は引き締まったままである。
「結果は4-0ですけど、『DFラインはミスが多すぎたぞ』とトルシエが話していた。確かにそのとおり。修正点はある。それを改善していければいいと思う」
やがて話題は、キャプテンシーに移る。松田選手は「いや、ホントに」と切り出した。フィリップ・トルシエ監督が招集したベテランの名前をあげて、松田は熱っぽく語っていく。
「カズさんと中山さんのサッカーに取り組む姿勢は、ホントに凄いんですよ。練習からホントに全力で、100パーセントで取り組んでいる。それに比べたら、自分なんてまだまだですよ。やらなきゃいけないことが、マジでたくさんある。サッカー、もっとうまくなりたいし」
ここから先は僕の想像に過ぎないが、彼はずっと同じ思いを抱いていたと思う。「もっとサッカーがうまくなりたい」という真っ直ぐで、太くて、強くて、揺るぎない思いが、松田直樹という選手をつき動かしていたと。
あまりにも早すぎる別れである。本当に言葉が見つからない。いまはとにかく、松田選手のご冥福を心からお祈りしたい。
※毎週金曜日配信のメールマガジンでは、サッカー小説「コラソン」や、昔の取材ノートから回想する「昔の現場・むかしのだいひょう」なども連載しています。こちらもお楽しみにください。
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ジャマイカ戦にはこんな話をした。
「フランスとやっていい経験になったけど、今日はね。ジャマイカは身体能力が高いけど、何とも思わなかったですよ」
彼らしいストレートなコメントだ。そうは言っても、表情は引き締まったままである。
「結果は4-0ですけど、『DFラインはミスが多すぎたぞ』とトルシエが話していた。確かにそのとおり。修正点はある。それを改善していければいいと思う」
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あまりにも早すぎる別れである。本当に言葉が見つからない。いまはとにかく、松田選手のご冥福を心からお祈りしたい。
※毎週金曜日配信のメールマガジンでは、サッカー小説「コラソン」や、昔の取材ノートから回想する「昔の現場・むかしのだいひょう」なども連載しています。こちらもお楽しみにください。
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1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している