盛んに煙がはきだされ、力強さを感じさせるSLの姿を一目見ようと多くの鉄道ファンが集まった

写真拡大

 東武鉄道は日光・鬼怒川エリアで運行する蒸気機関車(SL)を、「SL大樹土津(はにつ)」として27、28日、福島県会津若松市のJR会津若松駅まで特別運行する。

 一部区間では、半世紀ぶりにSLが走る。4日、特別運行に向けた試運転が行われた。(大池紘平)

 4日朝、下今市駅に、「プシュー」という蒸気が漏れる音が響いた。黒塗りのSLは重厚感があり、カメラを構えた鉄道ファンはもちろん、駅の利用者も物珍しげに車体をのぞき込んでいた。

 午前9時半、同駅をそろりと出発し、少しずつ速度をあげていった。

 特別運行に使用されるC11形325号機は1946年に製造され、一度は廃車となった。その後、真岡鉄道でSLもおかとして運行され、2020年から東武で活躍している。動態保存する東武博物館の学芸員(53)も同乗していた。学芸員は、「所蔵する車両がどんな景色の中で走るのか自分の目で確かめたい」と興味津々の様子だった。

 出発して約30分後、鬼怒川温泉が見えてきた。渓谷沿いに並ぶホテルや旅館が車窓を通り過ぎていき、旅情をかきたてる。

 車内を移動してみると、より車窓を楽しめる展望車もあった。開放式の展望車は、心地よく風が抜けた。

 特別運行は、大型観光企画「ふくしまデスティネーションキャンペーン」の一環。日光と会津を結ぶ観光周遊ルートを確立しようと、東武のほか野岩鉄道、会津鉄道、JR東日本の計4社が連携し、実現した。このうち、旧国鉄会津線の会津田島―西若松駅間でSLが走るのは52年ぶりだ。

 愛称の土津は、会津藩の藩祖・保科正之にちなんだ。幕政でも文治政治を進めるなどした名君で、福島県猪苗代町の土津神社でまつられている。東武は2017年からSL大樹の運行を行っているが、目的の一つに、東日本大震災の復興支援があった。小林秀一広報部長(56)は「10年という節目を前に、東北に乗り入れることができ感慨深い」と語った。

 沿線には、手を振る人の姿が見られ、停車した駅でも利用者が興味深そうに車両を見るなど、試運転でも沿線の高い関心がうかがわれた。

 午後0時20分頃、会津鉄道の会津田島駅に到着。鉄道ファンの姿が多く見られた。埼玉県久喜市から訪れた会社員の男性(37)は運行日にも訪れたいといい、「福島の田園風景の中でSLが走る様子を見てみたい」と期待に胸を膨らませた。

 特別運行は27日の午前9時33分に下今市駅を出発し、会津若松駅に午後4時53分に到着する。28日は午前9時30分に会津若松駅を出発し下今市駅に午後5時19分に到着する。チケットはすでに完売している。