ブラジルのルラ・ダシルバ大統領(左)との会談に臨む高市首相(16日、仏エビアンで)=米山要撮影

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農畜産物 流入警戒

 政府は月内に、南米5か国が加盟する関税同盟「南米南部共同市場(メルコスル)」と経済連携協定(EPA)の締結に向けた交渉に入る方針だ。

 経済界は自動車部品など日本製品の輸出拡大に大きな期待を寄せる。一方、低価格の牛肉をはじめとする農畜産物の流入で、国内産業への打撃を警戒する声も上がっている。(池下祐磨、貝塚麟太郎)

GDP480兆円

 フランス東部エビアンで16日、高市首相とブラジルのルラ・ダシルバ大統領が会談し、交渉入りで合意した。高市首相は17日、自身のX(旧ツイッター)に「相互に利益となる協定を実現し、経済関係を更に強化していく」と書き込んだ。

 メルコスルはパラグアイで30日に加盟国の首脳会議を開き、日本との交渉開始を正式決定する。政府関係者によると、交渉には少なくとも数年かかる見通しだ。

 メルコスルにはブラジルとアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビアが加盟。人口約3億人を抱え、国内総生産(GDP)が約3兆ドル(約480兆円)の成長市場だ。EPAが締結されれば、環太平洋経済連携協定(TPP)や欧州連合(EU)とのEPAに次ぐ大規模な協定となる。

日系1000社が拠点構える

 経済界にとって、メルコスルとのEPA締結は「25年越しの悲願」(財界関係者)だ。経団連は2000年に公表した報告書で協定の意義を訴えていた。筒井義信会長は16日、「約1000社の日系企業が拠点を構え、市場のポテンシャルは大きい」とコメントした。

 加盟5か国への日本の輸出品目は自動車部品や電気機器が中心で、25年の輸出額は約9500億円だった。現地にはトヨタ自動車やホンダのほか、多くの外資系自動車メーカーも工場を構える。日本の自動車部品の需要は高く、関税の引き下げが実現すればさらに競争力が高まる可能性がある。

 また、ブラジルはレアアース(希土類)の埋蔵量が中国に次ぐ2位で、中南米の原油輸出量は世界の約1割を占める。資源の多くを輸入に頼る日本にとっては、「資源の調達多角化につながる」(政府関係者)メリットも大きい。

「畜産の巨人」

 一方、メルコスルには牛肉や鶏肉の輸出量が世界首位のブラジルなど、農畜産物の輸出大国が名を連ねる。日本のメルコスルからの輸入は鉄鉱石のほか、トウモロコシや肉類など農畜産物が中心で、25年の輸入額は約1・5兆円だった。

 一般的に1キロ・グラムあたりの牛肉卸売価格が2000〜4000円の日本に対し、加盟国の輸出単価は800〜1000円程度だ。全国農業協同組合中央会(JA全中)の神農佳人会長は「安易な市場開放は容認できない」と懸念を示す。

 自民党は17日に経済協定の対策本部を開き、政府から交渉入りの方針について説明を受けた。本部長の江藤拓元農相は終了後、記者団に「メルコスルは『畜産の巨人』だ。個人的には、農林水産品は交渉の外に置きたい」と述べた。