【クィン・スロボディアン】【ベン・ターノフ】AIの犠牲になるのは「地球」だ…イーロン・マスクは「環境の救世主」になると言えるのか

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マスクが全インフラを支配し、人々の思想にも多大な影響をもつ「マスキズム」の時代。マスクが導く4種類の未来を紹介していこう。(本記事は、『マスキズム 新たな独占の時代』(飛鳥新社)の内容を再編集したものです)

前回記事はこちら:イーロン・マスクはもはや「国家と一体化」した…資本主義を支配する「マスキズム」の全容

第1の未来:環境の救世主

第一の未来はマスクが環境の救世主となる、「カーボン・マスク」とでも呼べるものである。マスクが、自身を最も有名にした分野、つまり電動化のパイオニアの立場に進化して戻ってくる可能性は十分にある。個人向け乗用車の電動化が脱炭素化された未来への最良の道かどうかは意見の分かれるところであったとしても、テスラのエコシステムが人々の生活を実質的に改善しうることは確かだ。命を脅かすような天候であれ、単に不便な天気のときであれ、太陽光発電による蓄電システムをバックアップとして持つことは利点となるだろう。

Xプライズ財団は、マスクの慈善活動の数少ない、しかし最大の受け皿のひとつである。彼は炭素除去に向けた最良のアイデアに1億1200万ドルを提供すると約束した。

地球の気候を人間にとってより住みやすいものに変えるため、マスクがジオエンジニアリング気候工学や類似のテクノロジーへと突き進んでいく姿は想像に難くない。どれほど激しく劣化した地球であっても、テラフォーミング(地球化)された火星よりも遥かに快適だと批評家たちは長年指摘してきた。いずれマスクも、このもっともな結論に達するかもしれない。

テスラは電気自動車企業からロボット企業になる

同時に、マスクはテスラをロボット企業として位置づける決意をますます固めている。同社のビジョンを示す第4次「マスタープラン」のトップ画像に掲げられているのは、食料品の袋を車にしまうオプティマスロボットの姿だ。マスクは、同社の利益の80パーセントがオプティマスの大規模展開から得られるようになると予測している――商業用にまだ1台も販売できていないにもかかわらず、いつものように途方もない主張を展開している。

マスクはまた、人工知能も優先課題としてきた。何百万台ものテスラ車を「巨大な分散型推論艦隊」とみなし、待機状態のときに計算能力をAIモデルの処理に転用する未来を描いている。さらに、やがて太陽のエネルギーが――そしてのちには、銀河全体のエネルギーが――知能を持つ機械を動かす動力として使われるようになると予測している。

AIによる環境面への負荷はよく知られており、それはメンフィスにあるxAIの施設が排出する大気汚染を見ても痛ましいほど明白なものとなっている。データセンターのエネルギー使用量は、まもなく都市や国家に匹敵するものになるだろう。

研究者のケイト・クロフォードは、AIを「未来を食い尽くす」メタボリックなテクノロジーと呼んでいる。エコなカーボン・マスクとロボットの大量生産は両立しない。サイボーグ的な夢を突き詰めることは、住みやすい地球を犠牲にすることによってしか成り立たない。

第二の未来:国家と一体化した「コントラクター・マスク

マスクの未来には、国家との共生をさらに深めていくバージョンも考えられる。これを「コントラクター・マスク」と呼ぼう。

DOGE(米政府効率化省)で公職に就くことの見返りが限られたものであったのなら、国家のニーズを満たす民間の請負業者という、より伝統的な役割に退く方が簡単かもしれない。

パランティアの共同創業者であるアレクサンダー・カープは、著書『The Technological Republic(技術共和国)』(未邦訳)のなかで、そうした役割の青写真を描いている。シリコンバレーが政府資金によって形成されたこと、ネットワークが軍とテック界双方の思考に影響を与えるようになった経緯、そして、ソフトウェア駆動の安価なドローンにますます左右されるようになった戦場が新たなビジネスチャンスを生み出している、といった点である。

カープは、シリコンバレーが利便性重視の消費者向けアプリに集中していることを批判し、国防総省の請負業者としてのルーツに戻るべきだと主張している。ただしそれは、ノースロップ・グラマンやロッキード・マーティンのような既存の軍産複合体よりも、遥かに洗練され、俊敏で、起業家的な形においてである。パランティアは、第2次トランプ政権下で企業価値を急速に高めた。政府のあらゆる機関にデータ統合や分析サービスを販売しているからだ。

トランプによるミサイル防衛網「ゴールデン・ドーム」構想の発表は、軍事請負業者に新たな地平を開いた。それはレーガン時代のスターウォーズ計画を強く思い起こさせる一方で、宇宙のさらなる軍事化を示している。スペースXは、ゴールデン・ドーム向け衛星を開発するため、国防総省と20億ドルの契約を締結した。それと同時にマスクは「プロジェクト・スターフォール」において、新型宇宙船「スターシップ」を使って軍事物資を世界中に輸送するアイデアを模索している。

「反撃するか、死ぬか」進む右傾化

他方、右派政治への傾倒により、彼の言葉はこれまで以上に暴力的になってきている。2025年6月、彼はやや不可解なツイートを投稿した。

「何が起きようとも、我々には宇宙船がある。彼らにはない」

これは作家であり政治家でもあったヒレア・ベロックからの引用である。彼は1898年にこう書いている。

「何が起きようとも、我々にはマキシム機関銃がある。彼らにはない」

マキシム機関銃とは、世界初の完全自動機関銃であり、植民地戦争で絶大な効果を発揮した。ある歴史家の言葉を借りれば、それは「戦闘を一方的な大虐殺へと変えた」ものであった。

2025年9月、極右活動家トミー・ロビンソンがロンドンで主催した「王国を団結させよ(Unite the Kingdom)」集会に集まった10万人以上の聴衆に、マスクはビデオ通話を通して語りかけた。「大量の制御不能な移民による、イギリスの急速な浸食」を非難しながら、マスクは言った。

「みなさんが暴力を選ぶかどうかにかかわらず、暴力はみなさんのもとに向かってきている。反撃するか、死ぬかだ」

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