「中学生のころ、自分の部屋にオーブンレンジがあってケーキを焼いてました」人気店“賛否両論”笠原将弘(53)が料理人を志したワケ《週刊文春の連載書籍化》
雑誌の連載、テレビのレギュラー出演、商品開発や食のイベント――寝る間も惜しむように働く、東京・恵比寿の予約が取れない日本料理店「賛否両論」店主・笠原将弘さん(53)が出版した書籍は、通算100冊以上。愛と料理で人生のお悩みを解決する“問答レシピ”形式で人気を博した「週刊文春」の連載「笠原将弘のご自愛めし ちゃんと食ってるか!?」の書籍化(文藝春秋刊)を機に、料理人としての原点を伺った。(全6回の1回目/続きを読む)
「中学生のころ、自分の部屋にオーブンレンジがあってケーキを焼いてました」人気店“賛否両論”笠原将弘(53)の写真を一気に見る

笠原将弘さん(撮影 志水隆/文藝春秋)
1年間にわたる連載「あと一周はできそう」
――1年間にわたる「週刊文春」の連載「笠原将弘のご自愛めし ちゃんと食ってるか!?」が終わりました。いかがでしたか。
笠原将弘さん(以下、笠原) 週刊誌の連載ってもっと大変なのかと思ってたけど、想像していたよりあっという間だった。もちろん大変でしたけど、あと一周はできそう。
――朝一番にテレビの生放送の収録を終えて、店に戻ってすぐ撮影ということも多かったですよね。ちゃんと寝ていますか。
笠原 そんなに寝なくても大丈夫な体になってしまった。若い頃はやっぱり寝たよね。よく言うじゃないですか、若い頃はたくさん寝れるから遅刻するって。あんまり遅刻するおじいさんとかいないじゃん。寝坊するおじいさんとかね。俺はけっこう朝は強いようだし、店に行ったらすることはいくらでもあるから、起きたらもう店に行っちゃおうみたいな感じで、ずっと仕事はしています。
ラジオにネタを書いて送ったり、オーブンレンジでケーキを焼いたり
――笠原さんは焼き鳥店の一人息子として育たれて、高校卒業後に「吉兆」に入社されて9年間修業されました。それまでは明確に料理人を目指されていたというよりも、パティシエになりたかったと。
笠原 近所に住んでいたおじいちゃんから、なぜか新品のオーブンレンジをもらって、置く場所がないから俺の部屋に。中学生で自分の部屋にオーブンレンジがあるやつは俺だけだったから、友だちが面白がって見に来て、レンジについてきたレシピ本を見ながらケーキを焼いてふるまってました。それを面白がったお袋が道具やなんだいろいろ買ってきてくれて、チョコレートケーキとかシュークリームとか、いろいろ焼いてたね。お袋はコーヒーが好きだったから、おやつにちょうどよかったんじゃないの。あとはラジオが好きで、ネタを考えて書いては送って、採用されたこともある。そんな感じでしたね。
「パティシエになりたい」って話したら「吉兆」を紹介されて
――高校卒業後、料理人の道を選ばれたのは?
笠原 パティシエの世界選手権というのをたまたまテレビで観て、「パティシエになりたい」って親父に話したら、「おう、いいじゃねえか」って。まあでも親父はパティシエがなんなのかもわかってなくて、「どうせやるなら一流のところでやれ」って「吉兆」を紹介されて、もう親父に言われるがままに。小さい頃から親父のことはずっと尊敬していたし、僕も「どうせやるなら一流のところでやりたい」と思って、「料理人は10年で一人前」という親父の教えを守ってやってましたね。
――お父さまを亡くされたことをきっかけに家業を継がれて、その後「賛否両論」を始められてからまもなく22年。雑誌の連載のほかにもメディアにもたくさん出演されて、いわゆる有名人といいますか、当時の笠原さんは、将来の自分がこうなっている姿を想像していましたか?
笠原 してないですよ。有名人とも思ってないし、ふつうに料理人で。夢はありましたよ。雑誌に出たいなとか、テレビ出たいなとか、売れたいなっていうのは。ラッキーなのは自分でお店が持てたくらいかな、と思いますよ。たまたま自分はラッキーで、いろんなお仕事ができてる。
「指針というかね、自分の軸というかね、そういうものはあります」
――日本料理の料理人、なのに、餃子もお上手ですし。
笠原 それはもういろんな仕事を引き受けてるから、やらざるを得なくなちゃった。
――このままでいいのかなって思うときはありますか。
笠原 常に思ってますよ。
――連載では人生や健康のお悩みを食で解決してくださいましたが、お題への回答も明確で、レシピも作りやすくて美味しくて、わりと迷いがないのかなって思っていたんですよ。
笠原 いやそんなことないですよ。指針というかね、自分の軸というかね、そういうものはあります。でもやっぱり悩みもあれば、いろんな人と話をして、いろんな意見を聞いて、心揺れるときもあるしさ、不安な夜もある。いろんな本を読んでこういう考え方もあるな、ちょっとそうしてみるかとか。そんなもんですよ。
撮影 志水隆/文藝春秋
〈仕事でもなく、メディア出演でもない…人気料理人・笠原将弘(53)が本当にやりたいこと〉へ続く
(中岡 愛子)
