若かりし頃の佳那さん

写真拡大

 映画『魔界転生』(1981年)や『陽暉楼』(1983年)、ドラマ『金曜日の妻たちへ』(TBS系、1983年)などで妖艶な存在感でファンを魅了した名女優・佳那晃子さん。2013年にくも膜下出血で倒れて以来、約13年にも及ぶ闘病生活を送っていたが、2026年3月21日に、多臓器不全のため70歳でこの世を去った。

【写真を見る】若かりし頃の佳那晃子さん。夫の源さんは涙を浮かべながら思い出を語る

 華やかなスポットライトを浴びた女優の、長きにわたる壮絶な闘病生活。最期まで寄り添い、その手を取り続けた夫であり、放送作家の源高志氏(78)が、NEWSポストセブン取材班に口を開いた。愛妻の最期は、過酷でありながらも、どこまでも女優・佳那晃子としての矜持を感じさせるものだった。【前後編の前編】

 * * *
「亡くなった時は、最後の48時間ずっと病院に付き添っていました。これはもうまずいなとなったのは2月の終わりぐらいで、血中酸素濃度が下がってきてね。1月まではまだ目をパチパチしたり、足を上げて意思表示をしていたんですよ」

 静かにそう語り始めた源氏。佳那さんがくも膜下出血で倒れたのは2013年1月10日のことだった。当初は「脳圧か何かの数値が300で即死するレベル」と診断され、医師からは「医学的な死は避けられない」とまで宣告される絶望的な状況だったという。しかし翌朝、数値が170にまで下がり、奇跡的に手術が可能に。10時間に及ぶ大手術を乗り越え、一命を取り留めた。

 その後は寝たきりの生活を余儀なくされたが、彼女の生命力は凄まじかった。

「意識がない状態から、瞬きや足を動かして意思表示できるくらいまで回復しました。お見舞いに行くと必ずこっちに顔を向けてくれて、どんどん良くなっているなと思っていたんです」(源氏)

 懸命のリハビリにより、一時は車椅子に乗り、補助があれば立ち上がれるまでに回復を見せていたという。

 しかし、順調に見えた回復の兆しを無情にも奪い去ったのが、世界を覆ったコロナ禍だった。

コロナ禍で面会やリハビリが制限

「コロナで面会やリハビリが制限されてしまって、全部ダメになっちゃいましたね。苦労してここまできたのに……。コロナが明けてリハビリを再開しても、もう良くなることはなく、現状維持が限界でした。やっぱり一度、空白期間ができるとダメですね」

 そして2026年になってから、佳那さんの体調は急速に悪化の途をたどったという。

「2月の真ん中ぐらいに出血がすごいと言われて、それに比例して血中酸素濃度も悪くなっていた。3月の頭ぐらいには胃ろうから大量出血して、もうダメかなと思っていました」

 主治医によれば、胃と腸が潰瘍を起こし、体液に血が混じり出している状態。尿も4日ほど出なくなり、腎臓の機能も失われつつある「多臓器不全」に陥っていたという。

 手術すらできない過酷な状況のなか、それでも佳那さんは命の火を燃やし続けた。そこには、彼女らしいある"理由"があったのではないかと源氏は推測する。

「あいつはなんでも先に計画を決めて生きるんですよ。3月8日は彼女の誕生日、3月15日は僕の誕生日だから、そこを過ぎてから死のうと思っていたんじゃないかな」

 そして迎えた3月21日。最期の時が刻一刻と迫るなか、病室で源氏は佳那さんの手をずっと握りしめていた。

「意識は亡くなる4時間ぐらい前にはなくなっていたんだよね。血中酸素濃度が1時間でどんどん落ちていく。口をずっとパクパクさせていて、苦しくて息を吸おうとしているのかなと思ったんだけど、お医者さんは『物理反応だ』と言っていました」

 徐々に血中酸素濃度がゼロになり、やがて脈拍と心臓が止まっていく。心臓が止まると、固く握りしめていた彼女の手から、わずかな力がすっと抜けていった。

「もういいよ、無理するな。13年前には戻ってきてくれたけど、今戻ってきても管だらけの体だし辛いだけだから」

 源氏はそう心の中で語りかけた。しかし、息を引き取った後も、佳那さんはただ一つだけ、強い意志を残しているかのように見えたという。

「目は開けていたんですよ。だから『お前、もう女優はやめていいんだから目を閉じろよ』と言ったんですけど、閉じないんですよ」

 最期の瞬間まで、彼女は「女優・佳那晃子」であり続けた。その顔は、13年もの壮絶な闘病を感じさせないほどに美しかったという。

「死に顔が綺麗だったんですよ。ずっと額にできていた赤いアザも無くなって、ちょっと顔が歪んでいたところも不思議と治ったんです」

 最後まで己の美学を貫き通したかのように、安らかに旅立った佳那さん。

 後編では、スクリーンで見せた妖艶な姿とは裏腹な、源氏だけが知る"知られざる素顔"と、2人の馴れ初め、そして海への散骨に込めた思いについて明かしている。

(後編に続く)