高市政権で遠のく『夫婦別姓』、世界からは「明らかに人権問題」と批判が…“どちらかを選べる”のに、日本の夫婦がほとんど「夫の名字」を選ぶ残念過ぎるワケ
選択的夫婦別姓の実現が遠のいている。政府は「旧姓の法制化」の方針を打ち出し、旧姓のみを公的書類に記載できるようにする「旧姓単記」の法整備を目指すとされているが、実現性は不透明だ。そんななか、選択的夫婦別姓の法制化に向けて活動する一般社団法人「あすには」がエイプリルフールの啓発企画として「同じ名字の人と出会える婚活パーティ」を開催すると話題を呼んだ。
【激レアさん】結婚を機に「妻の名字」へと変更した男性の金山さんを見る
同施策の発案者である丸山優河氏は、「夫婦別姓を実現する一つの手段として企画しました。これを機に、現状の結婚制度への問題意識が高まれば」と話す。
また「あすには」の代表理事・井田奈穂氏は、「夫婦別姓が選べないために別れるカップルや、男性が改姓したことで家族との亀裂が生じる事例が少なくない」と指摘する。男性の改姓を巡っては当人ではなく親族が頑なに反対するケースもあるようだ。中には「あり得ない」「先祖への思いやりが足りていない」と言葉をかけられた人もいるようで――。

高市政権下でも進まない選択的夫婦別姓制度の法整備(高市早苗公式Xより)
「夫婦同姓の義務」は世界で日本だけ?
2018年から選択的夫婦別姓の実現に向けて活動する「あすには」では、選択的夫婦別姓に賛同する署名や意識調査など、さまざまなアクションを重ねてきた。なかでも「このままだと2531年に日本には佐藤さんしかいなくなる」として2024年4月1日にエイプリルフールアクションとして提唱した「#2531佐藤さん問題」は、世界102ヵ国で報道されるなど大きな話題に。世界三大広告賞であるカンヌライオンズ、クリオ賞、The One Show(ワン・ショー)で、いずれも金賞やグランプリを受賞した。
「法務省によると日本は世界で唯一、夫婦が同じ名字にしなくてはならない国です。国内では『クスッと笑える施策』という紹介にとどまりましたが、海外では『明らかに人権問題である』と報道され、狙っていた以上の反応を得られました」(井田氏)
2026年3月には、「同氏婚のススメ」と題したプロジェクト内で「同じ名字の人と出会える婚活パーティ」などの啓発企画を実施。大手結婚相談所のIBJが運営する婚活パーティー・街コンサイトのIBJマッチングと協業し、「鈴木」や「田中」といった日本人に多い名字の人に限定した婚活パーティーを開催した。
「同じ名字」限定の婚活パーティー、参加者の感想は?
丸山氏は、発案の背景をこう話す。
「私自身、過去のパートナーと改姓について真剣に悩んだ経験があり、周囲には夫婦別姓を望むために止むなく事実婚を選択した友人もいます。そうした課題を持つ人をひとりでも減らしたいと、同じ名字の人との出会いを推進する企画を思いつきました」(丸山氏)
これまで「鈴木」「田中」「佐藤」「伊藤」「サイトウ」「ワタナベ」「タカハシ」「ナカムラ」の名字に限定して複数のパーティーを実施。「サイトウ」「ワタナベ」「タカハシ」「ナカムラ」は表記ゆれもあるため、カタカナ表記で参加者を募った。「田中さん限定」だけは対象者が少なく中止となったが、3〜5月に4回を開催、のべ50人が参加した。前例のない企画だったが、参加者は想像以上に盛り上がっていたという。
「よくある名字ならではの『あるある』が共有できた」「同じ名字なので、最初から下の名前で呼び合えた」などの感想が聞かれ、スムーズに距離を縮めることができたようだ。また、4つの名字がつく事業者からの菓子やアルコールなどの協賛があり、それらが格好のアイスブレイクになったという。
名字を変えたくないというより、「おもしろそうだから参加してみた」という人が大半だったというが、この場で出会って成婚となれば、どちらも名字に悩むことはないわけだ。
「同施策は、どうしても『よくある名字の人』に限定されます。前向きな反響は得られましたが、サービスとして継続するには課題が多いですね」(丸山氏)
「妻の姓」を選ぶ夫婦は「わずか6%」
内閣府の調査によれば、2024年に婚姻届を提出した夫婦(48万5092人)のうち、約94%は女性が改姓している。この数字は長年ほぼ変わらず、「女性が姓を変えるもの」という風潮が根強く残っているように見受けられる。
しかし、「同氏婚のススメ」プロジェクトを開始するに当たって「あすには」が実施した調査ではまた異なる若年層の特徴が見えてくる。
「両親が猛反対」「改姓して再婚」夫婦と姓を巡る、様々な事情
累計登録数2500万の恋活・婚活マッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」を運営する「エウレカ」と共同で、2月に「『結婚後の名字』に関する意識調査アンケート」を実施した。そこから見えたのは、実態とは異なる若年男女の本音だった。
「いずれ結婚するつもり」と回答した男性に、「名字を変えることに抵抗はあるか」とたずねると、39.6%は「抵抗がない」と回答した(「全く抵抗がない」と「あまり抵抗がない」の合計)。対して、女性は「抵抗がない」が53%、「抵抗がある」が36.6%だった。
この調査結果を見ると、妻の姓に変える男性がもっと多くてもおかしくないはずだが、なぜ実際はそうなっていないのか。
「調査が示すように、それほど名字にこだわりがない男性は多くいます。ただ、男性側が名字を変えるとなると、男性の両親が黙っていません。両親が猛反対した挙句、女性側が改姓したケースは非常に多いんです。また、改姓に抵抗がないと思っていても、いざ婚姻届を出すとなった際に、男性が『やっぱり変えたくない』と気持ちが変わり、女性側に改姓を懇願して止むなく女性が受け入れたという話も割と聞きます」(井田氏)
妻が本意でなく夫の名字に変えた結果、高齢になって「どうしても亡くなる前に自分の名字に戻したい」と、一度離婚して、夫が改姓して再婚する夫婦もいるそうだ。また、さまざまな理由から「どちらも名字を変えたくない、でも法律婚がしたい」という場合、海外で結婚の手続きをすることで別姓のまま夫婦として認められているケースもあるという。法の抜け穴をくぐるような方法だ。一部の人にとって、それほどまでに名字が重要だということだろう。
続く記事では、結婚を機に妻の姓になった男性当事者2人のインタビューをお届けする。1人は親の猛反対に遭いながら、もう1人は日本で約500人というレア名字に……改姓した彼らを待ち受けていたものとは?
〈「すぐにでも旧姓に戻したい」「書類に名字を書くたび胸が痛む」…結婚を機に『妻の名字』に変えた“激レア男性”が語る後悔〉へ続く
(小林 香織)
