高市早苗首相の公式Xより

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先月行われた自民党大会で、高市早苗首相は憲法改正について「時は来た」と語った。

高市氏は、雑誌「諸君!」2005年6月号(文藝春秋)の特集「わが九条『改正』試案」への寄稿において、自衛のための「国防軍」保有と武力行使を明認する「九条改正私案」を公表している。また、それ以前から一貫して主張している「創憲」に近い改憲論を見ると高市氏の憲法観が浮かび上がってくる。

例えば、憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれわれの安全と生存を保持しようと決意し」とあるが、これに関して高市氏は2000年9月の衆議院憲法調査会でこう発した。

「この非常におめでたい一文を、もし改憲の機会があれば真っ先に変えようと思っている」

憲法前文を“おめでたい”とまで言い放つ有様だ。そして、TBS系「報道特集」によれば、2004年に発行された雑誌「ディフェンス第42号」(公益財団法人隊友会)には次のように書いている。

「独立した主権国家の国民としてのプライドにかけて、日本の心と言葉を持った憲法へと書き直すべきだと思っている。前文には目指すべき国家像を書き込む」

そして、憲法9条に該当する部分には「日本国は自衛のための戦力を持てる。日本国民は国防の義務を負う。有事の際(中略)私権の一部制限に協力する」との内容を書き込む考えを示した。

究極の目標は「創憲」か

高市首相は現行憲法が連合国軍占領下の「押しつけ」であるという認識を強く持っていることが透けて見える。その憲法観は、自民党内でも保守色の強い「自主憲法制定論」に基づいている。それ故、一部を修正する「改正」ではなく、日本の歴史・文化・伝統に根ざした新しい憲法を自らの手で作る「創憲」を究極の目標としているようだ。

2012年4月27日に出された自民党の憲法改正草案は自民党が野党時代に作成したものだが、「国防軍」や「緊急事態条項」が盛り込まれていた。

そして、現在、衆議院憲法審査会で議論の焦点となっているのが「緊急事態条項」で、自民党案には「内閣の緊急政令の制定」が含まれており、野党はこれに反対している。戦前、行政が「緊急勅令」を乱用し、独断専行で治安維持に走った過去があるからだ。

こうした高市政権の改憲姿勢には全国で反対デモが起きており、国民世論は二分している。ただ、改憲反対と言っても、「一文字たりとも変えさせたくない」という強硬な護憲派から「自民党案には反対」という柔軟姿勢の人まで濃淡があるだろう。

例えば、慶應義塾大学名誉教授の小林節氏は、かつてタカ派の改憲論者として知られた。しかし、自民党の改憲草案や解釈改憲(集団的自衛権の行使容認など)の乱暴さを機に「憲法は権力の乱用を防ぐもの」という立憲主義の原点に回帰した。改憲の必要性は認めつつも、時の権力に都合の良い改憲姿勢に危機感を抱き、現在は「護憲的改憲論」を唱えている。

自民党には結党以来、宏池会を中心に護憲派の議員が数多くいた。現在のまま改憲議論が進むのかどうか、注目したい。

文/横山渉 内外タイムス