静かな法廷内にペチペチと音が響く 判決を言い渡される男は自身の頬をこぶしでたたき続けた 女性客など10人に性的暴行・わいせつ行為等の罪里庄町ゲストハウス経営の男(52)控訴審で下された判決は【ゲストハウス連続性的暴行事件 第4回/全4回】
宿泊客など10人の女性が被害に
自身が経営する岡山県里庄町のゲストハウスで、宿泊客など女性9人に睡眠作用などのある薬物を飲ませて、性的暴行を加えるなどしたほか、女性客1人を盗撮した罪などに問われている男の裁判です。
9月24日、岡山地方裁判所は懲役26年(求刑 懲役28年)の判決を言い渡したのに対し、男は事実誤認と量刑不当などとして、翌日に控訴していました。
その控訴判決が2026年3月25日に行われ、広島高裁岡山支部は男の主張はいずれも理由がないとして退けました。
判決を受けたのは、里庄町のゲストハウス経営の男(52)です。準強制性交等、準強制わいせつ、準強制わいせつ未遂、岡山県迷惑行為防止条例違反の4つの罪に問われています。
送検時に男はテレビカメラを見つけると、テレビカメラに向かって親指を立てていました【画像①】。
岡山県里庄町 オーナーの男は女性泊客をターゲットに
人口約1.1万の町・岡山県南西部にある里庄町【画像②】でゲストハウスを経営していた男。
判決などによりますと、男は2018年から2022年の間に、自身が経営するゲストハウス【画像③】の宿泊客など女性あわせて9人に、睡眠作用などがある薬物をカクテルなどに混ぜて摂取させて抵抗できない状態にし、性的暴行やわいせつな行為などをしたほか、女性客1人を盗撮したとされています。
2025年6月3日の裁判で男は、
「当時は『黒い影』から脅迫され、命令されていた」
「犯行当時は記憶がない」
「犯行時は心神喪失状態だった」
と2024年の初公判から一貫して、“無罪”を主張していて、責任能力の有無が争点となっていました。
※関連記事(これまでの裁判傍聴録より)
【第1回】「きっかけは約20年前 そして知人女性に」
【第2回】「検察が指摘する『計画的かつ狡猾な手口』とは」
【第3回】 「心も体も踏みにじられた」女性客の訴え
【第4回】「女性を毒牙にかけていく様は、目を背けたくなるおぞましさ」
から続く
弁護側「一審が精神鑑定請求を却下したのは法令違反」などと主張
2026年3月25日に行われた控訴審の判決公判に、男は「グレーの上下スウェット」「マスク姿」で証言台の前に座り、まっすぐ前を向いていました。
弁護側は控訴審で、事実誤認、訴訟手続きの法令違反、量刑不当の3点を主張していました。
事実誤認については、
・一部の犯行で睡眠作用などの作用がある薬物を飲食物に混入させた
・わいせつな行為をした
・わいせつな行為をしようと考えて薬物を混入させた飲食物を摂取させた
などを否定しました。これに対し、広島高裁岡山支部は、
「一審の判決に論理則、経験則などから不合理な点はない」としました。
広島高裁岡山支部の菱田泰信裁判長が判決文を読み始めると、静かな法廷内でペチペチと音が聞こえてきました。男が自身の右頬を右のこぶしで10回ほど叩き始めたのです。
その後も判決文の言い渡しは続きます。
訴訟手続きの法令違反について、
「男は各犯行当時、統合失調症にり患し、幻聴や幻覚妄想の影響により犯行に及んだもので、是非弁別能力、行動制御能力に疑義があったにもかかわらず、一審が精神鑑定請求を却下したのは法令違反にあたる」
と訴えましたが、広島高裁岡山支部は、
「男は犯行当時、幻覚妄想状態や見当識を失うような意識障害を伴う統合失調症にり患していたとは認められないとし、責任能力に疑いはない」
として鑑定請求を却下した一審の判断が誤っているとはいえないと判断しました。
「自らの犯行のために用意した舞台装置」と評価したのは行き過ぎた認定
量刑不当については、弁護側は、
・一審判決がゲストハウスを「男が自らの犯行のために用意した舞台装置であったとすら考えられる」と評価したのは行き過ぎた認定である
・被害者の中には、捜査機関から事件を聞かされて初めて被害にあったことを知った者もおり、必ずしも事件当時に被害を認識したわけではないことは、「被害者の精神的苦痛」について考慮されるべき
・男を健常者と決めつけ、精神疾患について考慮していないのは不当
・男は犯行の記憶がないものの、謝罪の言葉を述べている
などと指摘していましたが、広島高裁岡山支部はゲストハウスについて、
・犯行のために用意した「舞台装置」という一審の評価は適切さを欠くとしながらも、「ゲストハウスの特性を利用した」という評価は免れず、悪質極まりない犯行という一審の判決が誤りとまではいえない
として弁護側の主張を退けました。
男が反省しているとは評価できない
そのほかについても、広島高裁岡山支部は
・薬物を摂取させて昏睡状態にするという犯行態様の悪質性の程度は、暴行脅迫などを用いた強制性交に比較して何ら劣るところはないとし、弁護人の指摘するような事情があるとしても、「被害者らの精神的苦痛が大きいことにかわりはない」から事情が男の有利に考慮されることはない
・各犯行当時の男の責任能力に疑問がない。何等かの精神疾患にり患していたとしても、各犯行の犯情に有意な影響を及ぼしたとは認められない
・一審で被害者らに謝罪の言葉を述べているものの、男の弁解状況を踏まえると、男が反省しているとは評価できない
などとしました。
男は何度も自身の右頬を右のこぶしで叩き、判決の言い渡しが終わるまで、100回以上叩いていました。証言台から去る際、男の右頬は赤くなっていました。
男は控訴審の判決を不服として、3月26日、最高裁判所に上告しています。
※関連記事(これまでの裁判傍聴録より)
【第1回】「きっかけは約20年前 そして知人女性に」
【第2回】「検察が指摘する『計画的かつ狡猾な手口』とは」
【第3回】「心も体も踏みにじられた」女性客の訴え
【第4回】「女性を毒牙にかけていく様は、目を背けたくなるおぞましさ」

