うまくいかないのには理由があった(写真はイメージです)

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 結婚に関する厚生労働省の統計によれば、2025年度の婚姻件数は約49万組前後と減少傾向が続き、平均初婚年齢は夫が31歳前後、妻が29歳前後と、昭和に比べると“高齢化”も続いている。原因としては若者人口の減少が大前提として挙げられるが、日本の経済状況が低迷していることも大きいと指摘する専門家は多い。【藤原良/作家・ノンフィクションライター】(全2回の第1回)

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【写真を見る】「一生結婚するつもりはない」男性が17.3%も…。未婚男性の7割近くに共通する「独身生活の利点」とは? 厚労省の調査から見える“結婚しない男”のホンネ

 結婚5〜9年で子供がいない夫婦は1割を超え、さらに割合は増加傾向にある。結婚してもなかなか子供を持てないため、近年は毎年のように全体出生児数が過去最少を更新し続けている。

うまくいかないのには理由があった(写真はイメージです)

 理由としては「子育てにお金がかかりすぎる」という経済面が約52%に達し、欲しいけど産めないという状況が依然として続いている。また初婚年齢の高齢化も重なって「結婚しても産むタイミングが見つからない」という声もある。

 2023年ごろから政府は子育て支援を加速させたが、現役世代の苛酷な税負担を軽減するまでには到っていない。その結果、婚姻件数の減少傾向は続いている。さらに医学的に見た出産適齢期である「20歳から35歳までの間」に女性が結婚と出産を望んでも、職場環境や家族の状況、共働きするパートナーからの了解を含め、その実現には様々なハードルがある。

 実際、結婚に大きな壁を感じている若者も少なくないが、それでも結婚に前向きな女性がいる。興味深いのは「女性にとって婚活は都会と地方のどちらが有利か?」という議論がネット上で盛んなことだ。

 都会に比べると地方は、言うまでもなく「若い男性」の絶対数が少ない。限られた人数の中で“運命の人”に出会える確率はどれくらいあるのだろうか──?

都市部に集中する「若い男性」

 逆に都市部は「若い男性」の絶対数が多い。だから「都会のほうが結婚しやすいはずだ」と考える地方出身の女性は少なくない。

 もちろん、彼女たちが地元を離れる理由は婚活だけではない。進学や仕事のキャリアアップなども当然に考慮している。その上で“都会での婚活”は若い女性の夢を実現する手段と受け止められ、これを元に彼女たちは行動する。

 全国の大都市における転入超過率を見てみると、やはり東京都がダントツだ。転入超過率とは、その地域から出て行く転出者よりも入ってくる転入者の方が多い状態の比率のことを指す。

 2月3日、総務省は「住民基本台帳人口移動報告」を公表したが、それによると2025年の東京への転入超過数は、女性が約3万7000人、男性が約2万7000人で、女性が上回っている。特に20代前半の女性の転入超過が多いことが分かっている。

 ちなみに東京都だけでなく、仙台市、名古屋市、福岡市といった大きな地方都市でも女性の転入超過率の方が男性よりも大きく、都市部への女性の集中は著しい。

 このように若い女性が地方から出て行く流れが2023年以降から特に深刻化しており、全国の大都市の中でも彼女たちの行先はやはり東京都が最も多い。まさに「東京一極集中」の様相を見せている。

 若い女性の流出が止まらない地方を見てみると、例えば山陰地方や東北地方の某地域では女性1人に対して男性が1・5人という男余りの状況が発生している。

「都会の可能性」

 そもそも昨今の男性は「仕事や趣味に没頭し、あまり結婚を急がない」という傾向が認められる。地方はたとえ「若い男」が余っていても絶対数が少ないし、結婚の意欲を感じられない男性も目立つ。

 こうして結婚を求めて大都市に向かう女性は増える一方だ。そして目的地は東京を選ぶのが“令和のセオリー”ということになる。

 東北地方で次女として生まれ育った麻衣さん(仮名)は、地元の美容専門学校を卒業後、地元の中心駅近くの美容室に美容師として勤務しながら実家暮らしをしていた。

 順調に美容師としてのキャリアを積みながら、休日はマイカーで観光名所巡りに出かけるなど充実した毎日を送っていた。そして25歳を過ぎた頃から結婚を強く意識するようになった。

 美容室で働いていると、若い男性との“出会い”も少なくない。しかし彼女は客との距離感を重視するタイプで、男性客と必要以上に親しくなることは避けていた。周囲にめぼしい出会いも少なかったことから、マッチングアプリも利用したが思うような結果は得られなかった。

 ここで初めて彼女は「都会という可能性」に目が向いた。都会に行けば男性との出会いも増えるだろう。さらに美容師としても一層の経験を積めるはずだ。

自然消滅してしまった関係

 彼女のような地方出身の女性を「婚活難民女子」と呼ぶ人もいる。結婚願望とキャリアアップの向上心が合体すると、躊躇なく動く女性は多い。麻衣さんは翌年、東京の美容室で働くことが決まり、さっそく上京した。

 これまで勤めていた地方の美容室に比べると、東京はずっと来客数が多い。麻衣さんは多忙な毎日を過ごしながら“婚活”にも取り組んだ。結果、同じ美容室に勤務する4歳年上の男性美容師と休日にデートを重ねるようになった。

「この人と結婚するのかな」──互いのアパートを行き来するような半同棲生活を送りながら、男性美容師を結婚相手と考えるようになった。だが、彼からのプロポーズはない。

 実は男性美容師は自分の給与が少ないことを気にしており、とうとう麻衣さんに「結婚しても子供を育てる自信がない」と打ち明けた。このまま恋人関係を続けるのが無難だという。

 結婚願望が強い麻衣さんは「共働きで頑張ろう」と提案したが、相手が結婚に同意することはなかった。そのまま関係は自然消滅した。

 第2回【“まじめで責任感が強い男性”ほど結婚に踏み切れない…令和の「婚活パラドックス」が生んだ日本人男性の“3人に1人が生涯独身”という現実】では、男性美容師は自身が持つ「一家団欒の記憶」に悩まされていたという意外な展開と、女性は「理想の男性像」を時代に合わせてバージョンアップできたにもかかわらず、男性は「理想の女性像」を再構築できていない事実について、詳細にお伝えする──。

藤原良(ふじわら・りょう)
作家・ノンフィクションライター。週刊誌や月刊誌等で、マンガ原作やアウトロー記事を多数執筆。万物斉同の精神で取材や執筆にあたり、主にアウトロー分野のライターとして定評がある。著書に『山口組対山口組』、『M資金 欲望の地下資産』、『山口組東京進出第一号 「西」からひとりで来た男』、『闇バイトの歴史 「名前のない犯罪」の系譜』(以上、太田出版)など。

デイリー新潮編集部