『地獄に堕ちるわよ』細木数子を演じた戸田恵梨香さん「ひとの弱さが生み出したものの一つが占いなのではないか」

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4月27日配信のNetflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』で、かつて一世を風靡した占い師・細木数子の10代から60代までを演じきった戸田恵梨香さん。

インタビュー前編「細木数子の人生を演じ切った戸田恵梨香さん「物真似をする必要はないと最初から言われていた」」では、細木数子という人物を演じるために行った役作り、作品との向き合い方についてお話を伺いました。後編では戸田さんご自身が人生のなかで信じるもの、占いという営みについて思うことなどをお聞きしました。

救われた人も多かったのでは

――10代から60代までの細木数子さんを演じてみて、なぜこんなにも世間が彼女に熱狂したのか、実感するところはありましたか?

戸田恵梨香(以下、戸田)自信に満ち溢れているところに憧れたのだと思います。私自身が憧れる人たちには、大人の余裕と説得力がある。そのふたつは、自信があってこそ生まれるものだと思います。「地獄に堕ちるわよ」という言葉はたしかに強烈で、人の心に刺さってしまうけれど、同時に細木さんは、相手を肯定する言葉も伝えます」

――ドラマでも、ただ厳しい言葉を言うだけじゃなく、寄り添うような言葉で相手の心をつかんでいましたね。

戸田「相談に来たおばあさんに「働き者の手だ、よくがんばったね」というシーンがありますが、誰でも弱っているときに言われたら嬉しいと感じると思います。ゆるぎない振る舞いで肯定してもらい、救われた人も多かったと思いますね」

――戸田さんは、占いはお好きですか?

戸田「好きです。でも、言われたことはすぐ忘れてしまいます。ということは、おそらく、信じてはいないんだと思います。自分が悩んでいることに対して何かヒントが欲しいとき、参考の一つとして聞いている感覚です。占い師の方々は、星回りや、目に見えない力が存在するというけれど、それがいつどんなふうに巡るのか、覚えていられません(笑)幽霊やおばけも見たことがありますが、信じていないんです」

――どういうことですか(笑)。

戸田「何回も見たことはあるんです。幽霊やおばけとしか思えないようなものを。それなのに、信じられない。不思議ですよね(笑)。でも、科学では証明できない見えない力を信じる人たちがいて、それが神様という存在を生んで、文化や文明が生またということはわかる。人は、自分たちを救ってくれる存在を生み出さずに、社会をかたちづくることはできないのかな、と。自分たちを導いてくれる何かが存在すると信じたい、守られたいと願ってしまう弱さが生み出したものの一つが占いなのではないかと思います。だから、信じるか信じないかはさておき、私も生きるためのヒントを与えてくれる一つとして、話を聞くことがあります」

後悔だけはしない

――細木数子自身が「占いなんて信じない」というシーンがありましたよね。だったら彼女は何を信じて生きてきたんだろう……と考えてしまったのですが、戸田さんが生きるうえで信じているものはありますか?

戸田「自分は成長していける、のびしろがあるはずだ、という期待と可能性でしょうか。それがあるから、お芝居を楽しみながら続けてこられました。人生にはいろんな岐路があり、揺らいでしまうこともある。選んだ道が本当に正解だったかどうかなんてわからないし、自信もない。でも、後悔だけはしないという自信があります。その感覚を信じて楽しむことができたら、その道が正解になるだろう、と。どんなに悩んだとしても、自分がどんな結果を導いていくかに重きを置いている気がします」

――ドラマの中の細木さんも、選んだ道を後悔しないために自分自身を信じ抜いていた感じがありましたね。

戸田「実際、後悔はないというセリフがありました。『唯一あるとしたら子どもができなかったこと』と言っていましたが、産むことはなくても、養子をとることで子どもという存在を得た。欲しいものはすべて手に入れてやるという彼女の欲望は、演じるうえで意識していたことですが、そうすることで孤独を埋めていたのではないかと私は感じています」

――細木数子さんの孤独は、さまざまなかたちで描かれていましたね。でも、彼女は簡単には泣けない。泣くのが特技、と1話で描かれるからこそ、本当につらいときは泣くこともできないのだなと感じられる演出が印象的でした。

戸田「涙は人知れず流すものよ、と数子が言うシーンがあるのですが、最終話の肝となるそのセリフを、監督はずっと決めることができなくて。悩み続けた末、そのセリフがあがってきたとき、はっとさせられました。これまで演じてきた人生の答えが出た、と感じたんです。と同時に、物語も人生も俯瞰でとらえることのできる瀧本監督のすごさに感動しました」

悲劇のヒロインのように

――監督は「細木数子が嫌いだった」と公言されていますが、現場ではどんなお話をされたんですか?

戸田「方向性については思うままにやってください、という感じでしたが、先ほどの特殊メイクの話のように、細かい演出についてはいろいろとお話ししました。ドラマの前半は細木数子自身が語る美化した世界観ですがあるシーンで『このシーンはディズニーのプリンセスなんだよね』と言われたときは、少し驚きました(笑)。照れくさいことを……と思いながら、悲劇のヒロインのように酔いしれている自分も気持ちがいい、という感じで演じたりして」

――初めて夜のお店で働きだしたときの、お客さんとのダンスシーンは、確かにプリンセスみたいでした。

戸田「あのシーンの撮影はクランクインの日だったので、撮影より前にダンスのレッスンが始まりました。軽いダンスと思っていたらミュージカル調の演出で、とても焦りましたし、筋肉痛になりました(笑)。10代は、とにかく人生を謳歌しているように演じていました。でもだんだん、ふつふつと湧き上がってくる欲望を隠しきれなくなっていって……。後半、彼女の実像が暴かれていく過程で『もっと声を張って、荒らげてくれ』と監督に言われたときは『そうか、そういう一面も彼女にはあるんだ』と気づかされました」

――先ほどのセリフもそうですが、監督から引き出されたものも大きかったんですね。

戸田「そうですね。最近は、監督から細かい演出を受ける機会が少なくなり、自分が考える芝居をしていましたが、今作では、監督が思い描いている細木数子像に近づきたい、近づかないと細木数子になれないという感覚が強く芽生えて。監督とセッションしたというより、監督に追いつくために必死で走り続けていました」

――走り続けた結果できあがったこのドラマが、どんなふうに届いてほしいですか?

戸田「ラストカットで、数子がにかっと笑うシーンが使われているのを見たとき、賛否両論はあるけれど、やはりこの人は人生の勝ち組なんだなと思わされました。人に好かれようが嫌われようが、自分の欲しいものをすべて手に入れて、満足のいく人生を生き抜いたのだと。それがいいことなのか、悪いことなのか、このドラマはジャッジするものではありませんが。細木さんを過剰に美化するわけでも悪人として断罪するわけでもなく、一人の人間としてその人生をただ描いたもの。占いと同じように、何を受けとるかは自分次第。生き方の一つとして見ていただけたら嬉しいなと思います」

とだ えりか

1988年、兵庫県生まれ。06年、映画『デスノート』で注目を集める。同作ほか『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』『LIER GAME』など人気シリーズに多数出演。ほかNHK連続テレビ小説『スカーレット』、ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』、日曜劇場『リブート』、映画『母性』など主演多数。

撮影:安田光優(講談社) スタイリスト:影山蓉子 ヘアメイク:Haruka Tazaki 取材・文:立花もも

衣装問い合わせ先:クロエ カスタマーリレーションズ 03 4226 3883

【前編】細木数子の人生を演じ切った戸田恵梨香さん「物真似をする必要はないと最初から言われていた」