1300万円超で中古ポルシェ購入もまさかの欠陥トラブルで「公道を走れない」 裁判所が契約の取り消しを認めた理由【2025年度の読まれた記事】
2025年度に掲載した記事の中で、特に反響が大きかった、2025年10月9日に配信した特集「法廷ファイル」の記事を再構成して掲載します。
ポルシェを買ったのに、公道を走れない――。そんな信じがたいトラブルが法廷で争われた。
東京都の男性が中古車販売会社から購入したポルシェには、車検を通るために必要な装置がついておらず、公道を走ることができない状態だった。東京地裁は9月、契約を取り消すことができると判断し、販売会社に購入金額1300万円超の返還を命じた。
納車で耳を疑う言葉
流線型のボディーが特徴のポルシェ911。あの名車がついに手元に届く。
そんな高揚感のなか、車両を届けに現れた販売会社の担当者から告げられた言葉に男性は思わず耳を疑った。
「この車にはキャタライザーが付いていません。ECUにも分解の形跡があります」
キャタライザーとは、排気ガスを浄化する装置で、日本の公道を走るには不可欠な部品。つまりそれがない車は車検に通らず、違法状態となる。
ECU(エンジンコントロールユニット)は、車の心臓部ともいえる電子制御装置で、エンジンの動作や燃料の噴射などを管理する重要なパーツ。分解の形跡があるということは、性能や安全性に影響が出る可能性がある。
「車検のときだけ装着すれば問題なく通せます」
担当者はそう説明したが、そんな話は契約前に一度も聞いていない。男性は戸惑い、苦情を伝えたが、車はそのまま引き渡された。
男性は、その日のうちに担当者に「キャタライザーが付いてないということは違法状態で購入したことになりますので、早いうちに正しく装着していただきたく、よろしくお願いします」とメールで訴えた。
なぜこんなことが起きてしまったのか。
正規ディーラー取扱のはずが…
男性がこの中古車を見つけたのはインターネット上の販売サイトで、「ポルシェの正規ディーラーの取扱車」との旨が紹介されていた。問い合わせると、担当者から「1350万円ほどでお乗り出し頂けます」と返信があった。
7月、横浜市にある整備工場で実車を確認。その場で見積書を受け取り、3日後にはショールームを訪れて試乗した。
販売価格は計1355万円。登録手続きや希望ナンバーの取得、納車前整備などが含まれていた。
だが、キャタライザーが付いていないことは明記されておらず、契約前のやりとりでも説明はなかったという。
仕入れ時に不備を把握していた
販売サイトでは正規ディーラーの取扱車として紹介されていたが、実際に届いた車は車検に通らない状態だった。
販売会社は、このポルシェを2023年に第三者から仕入れた。その時点でキャタライザーが外されていることを確認していたが、販売ページなどでその不備を告知することはなかったという。
販売会社は契約前の説明を主張
男性は車を保管するために駐車場を借り、保険にも加入した。“走れない車”のために毎月費用がかかっていく。納得はできなかった。
男性は契約の取消しと代金の返還を求めた。
法律では、契約のときに重要な事実を知らされていなかった場合、「錯誤」として契約を取り消すことができる。
販売会社は、「契約前に説明した」と主張したが、裁判所は認めなかった。
営業日報にも記録はなく、注文書にも記載はない。納車の場で初めて説明されたことが、証拠から明らかになった。
東京地裁は「原告は、公道を走るために車を購入した」と認定したうえで、「キャタライザーが付いていないことは、契約の前提を覆す重要な事実であり、錯誤にあたる」と判断。販売会社に対し、男性が車を引き渡すことと引き換えに1344万4000円を返還するよう命じた。
男性は「キャタライザーがついていないと知らされ、引き取りを求めたのに強制的に車を引き渡された」などと主張。不法行為に当たるとして損害賠償も求めたが、裁判所は「引き取りを求めた事実は認められない」として、損害賠償については認めなかった。
高額な買い物、求められる誠実さ
待ちに待った納車日、届いたのは“走れば違法になる車”だった。
この事実を知ったときの男性のショックは計り知れない。
車は人生において家に次ぐともいえる高額な買い物だ。買い手が不幸になる事態を防ぐため、売る側にはより丁寧な説明と、誠実な対応が求められている。
