背中筋トレは3分割で考える! 部位ごとのオススメ筋トレ種目とは【鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ】

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背中は3分割で鍛え上げる

まずは背中の構造を知っておこう

 「背筋」と呼ばれる背中の筋肉は、大きく分けて「僧帽筋」「脊柱起立筋」「広背筋」で構成されています。肩甲骨の下部から腰部にかけて広がり、上腕につく逆三角形の広背筋は、背部でもっとも大きく背中の広がりをつくる筋肉です。一方、背中の厚みをつくり出しているのが、首の後ろから背中や肩にかけて広がる僧帽筋と脊椎に沿うようにつく脊柱起立筋(腸腰筋・最長筋・棘筋の総称)です。

 背筋は特段目立つ筋肉ではありませんが、前面の大胸筋や腹直筋ばかりを鍛えて背筋を鍛えずにいると身体のバランスが悪くなるだけでなく、体幹が弱くなり、腰痛や肩こり、円背の原因ともなるため、必ず両面を鍛えるようにしましょう。

僧帽筋はアップライトローで鍛える

 背筋は、それぞれ動きも役割も異なるため、個別に鍛える必要があります。まずは、僧帽筋上部を鍛え、背中の厚みを出す種目です。

 2008年、デンマークのコペンハーゲンから「シュラッグ」や「アップライトロー」などの5種目を行い、僧帽筋上部の筋活動の変化を分析した研究が発表されました。もっとも筋活動が高かったのが肩すくめ運動であるシュラッグ、次に側方挙上、そしてアップライトローでした。これだけ見れば「僧帽筋を鍛えるにはシュラッグがもっとも有効」となりますが、この研究の対象者は「僧帽筋を痛めてリハビリをしている運動経験のない女性」であり、筋肥大を目的にしている人がこのデータを鵜呑みにするのは危険です。基本的にシュラッグは、筋活動が認められやすいものの強度の設定が難しく、僧帽筋上部単独でしか筋収縮を行えないという欠点があります。しかも、肩をすくめる動作(肩甲骨の挙上)は可動範囲も狭く、この動きだけでトレーニングを行うのは現実的ではありません。

 2005年に早稲田大学から発表された僧帽筋の筋電図解析でも、僧帽筋上部の筋活動をもっとも高めるのはアップライトローであるというデータが出ています。アップライトローは三角筋外側部を鍛えることもできるため、肩の上部と外側の厚みをつくるにはシュラッグよりも有効といえます。

 また、2013年のメンフィス大学の研究では、アップライトローのグリップ幅による筋活動の変化について調査が行われ、グリップ幅を広くすると三角筋と僧帽筋の筋活動は向上し、上腕二頭筋の筋活動は低下したという結果から、僧帽筋上部に強い負荷をかけるには、グリップ幅を広くすることが効果的なことがわかりました。これらのことからも、痛みがあって無理な負荷をかけられない場合や、筋トレ初心者にはシュラッグがおすすめですが、三角筋外側部と一緒に肩の上部を分厚くしたいときは、グリップ幅を広くしたアップライトローが有効となります。

脊柱起立筋はベントオーバーローで鍛える

 前から後ろに肩甲骨を引き寄せる動きをする僧帽筋中部・下部と、身体を後ろにそらす脊柱起立筋には、ローイング系の種目が有効となります。ローイング系とは、前から後ろに引っ張る種目です。2009年にウォータールー大学から、3つの異なるローイング種目での筋活動の調査が行われ、背中全体に強い筋活動が得られたのがベントオーバーローであり、特に脊柱起立筋に強い筋活動が認められました。そして脊椎の負担がもっとも強かったのも、ベントオーバーローでした。つまり、僧帽筋中部・下部や脊柱起立筋を大きくしたいのであれば、ベントオーバーローがもっともおすすめとなります。

 ただし、ベントオーバーローは脊椎への負担も大きいので、少しでも腰に違和感がある場合は、ベントオーバーローよりもマシンを使用した安全なロー種目を行いましょう。

広背筋は懸垂で鍛える

 背中の広がりを決める広背筋のトレーニングで、科学的にもっとも有効なのが「懸垂」「ラットプルダウン」と「シーテッドロー」です。懸垂とラットプルダウンとの比較では、懸垂のほうが広背筋をはじめとした上腕二頭筋、上腕三頭筋、脊柱起立筋が高まることが確認されており、広背筋のトレーニングには懸垂が優先種目となります。

 広背筋の筋活動を意識するのであれば、素早く身体を持ち上げていくコンセントリック動作だけでなく、ゆっくりと身体を下ろすエキセントリック動作を意識することが有効です。コンセントリックだけでは腕や胸の筋肉の代償動作が入りやすいため、エキセントリックを意識する必要があるというわけです。

 そして、そのときに重要になるのが、可動域と伸長刺激です。2021年にスペインのムルシア大学から発表されたメタ分析によれば、筋肉の一部を動かすパーシャルレンジよりも、全可動域を広く動かすフルレンジのトレーニングのほうが、筋肥大率が向上することが明らかになっています。

 広背筋でいえば懸垂動作で下ろす可動域を最大化させることで広背筋に伸長刺激を与えることができるので、広背筋に収縮が入りやすいと感じるグリップを選び、無駄な筋収縮を入れないようにエキセントリック動作を意識して、広背筋に伸長刺激を与えられるように最大限の可動域で懸垂を行う、これが科学的根拠に基づく効果が高い懸垂の実践方法になります。

 どうしてもいきなり懸垂をやろうと思うと腕の力で身体を持ち上げたり、保持してしまいますので、可能であれば補助付きでの懸垂がおすすめになります。

背筋の筋肥大を促進する筋トレ種目

・アップライトロー(僧帽筋上部)
・ベントオーバーロー(僧帽筋中部・下部、脊柱起立筋)
・懸垂(広背筋)

【出典】『鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ』著:理学療法士・パーソナルトレーナー 論文男

【著者紹介】論文男(ろんぶんおとこ)
理学療法士。パーソナルトレーナー。現役理学療法士として、小児・スポーツ選手・高齢者のリハビリに従事する傍ら、13年以上の指導経験を生かし、科学的データに基づいたエビデンスレベルの高いトレーニング方法を発信。年間500本以上の論文を読み漁り、最新研究を現場で実践に落とし込む。YouTube 『論文で解決 ~筋肉と栄養を科学する』は登録者23万人以上。3児の父として、忙しいワーカー向けに最短で理想のボディを作るメソッドも開発。筋トレ・栄養・リカバリーを科学的に体系化した指導に定評がある。