【特集】”拘禁刑”とは 刑の導入で変わる刑務所にカメラが潜入 殺人犯にインタビュー 刑務作業は「懲らしめる手段」から「立ち直りのための手段」へ(山形)
1000人近くの受刑者が収容されている山形刑務所です。今年度、118年ぶりに刑法が改正され、これまでの「懲役刑」がなくなり「拘禁刑」が導入されました。法改正で変わる刑務所を刑務官、そして受刑者の話からみつめました。
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「おはようございます」
午前6時45分。受刑者たちの平日の1日は、決まってこの時間から始まります。布団を決められたたたみ方でたたみ、決められた場所にしまい、朝食を待ちます。
配膳するのも、担当の受刑者です。
山形市の北部にある山形刑務所。ここでは1000人近くの受刑者や、起訴後に裁判の判決を待ち拘留されている人が生活しています。多くが26歳以上の男性で、懲役10年以上の長期受刑者です。
■変わる刑務所
刑務官「前へ進め(受刑者の足音)」
午前7時40分。受刑者の生活の多くの時間を占める刑務作業がはじまります。刑務所の中の工場に移動し、身体検査のあと、作業に入ります。
原則会話は禁止。黙々と作業に当たります。
作るのは、木工製品や金属製品、革製品など。長期間の刑務で作業練度も上がり、山形刑務所の製品は品質が高いといわれています。
そのため、展示即売会での売れ行きは上々。訪れた人が、受刑者が作った品々を買い求めていました。
今、全国で刑務所は大きな転換期を迎えています。
■拘禁刑、導入
「主文、被告人を拘禁刑1年に処する」
受刑者の更生と再犯防止を目的にした「拘禁刑」の導入です。県内では、去年7月に初めて言い渡されました。
全国的に刑法犯の検挙件数は以前に比べ減りました。しかし、再び罪を犯して検挙された人の数は大きくは減っておらず、いま検挙された人の2人に1人が、再び罪を犯している状況となっています。
そこで去年6月に刑法を改正し、刑務作業が義務の「懲役刑」と、作業義務のない「禁錮刑」を一本化した「拘禁刑」が導入されました。
受刑者たちが行う刑務作業の目的も、これまでの「懲らしめる手段」から「立ち直りのための手段」へと変わっています。
山形刑務所 土屋所長「まず拘禁刑になって被収容者の特性を細かく分けた。細かく分けた中で、その特性に応じた処遇というのをやっていっている」
■拘禁刑により、柔軟な組み合わせが可能に
「拘禁刑」では、年齢や刑期、薬物の使用状況や介護の必要性など、特性にあわせて受刑者を24のグループに分類し、教育・指導・治療などを受刑者一人ひとりにあわせて柔軟に組み合わせられるようになりました。
刑務作業も全員が行うものではありません。
刑務官「(ある受刑者について)人を殺めることについて何とも思っていないと。今までと変わらず、人と関わることは一切したくないと」
この日は、拘禁刑の導入を受けて始まった会議(個別支援処遇推進会議)が開かれていました。
出席しているのは刑務官のほか、看護師・社会福祉士などです。議題は精神障害や年齢、薬物依存などから集団行動が行えず工場で働けない人など、処遇が困難な受刑者について。
受刑者の様子を共有し、参加者がチームを組んで、更生に向けた今後の対応を検討します。
刑務官「でもやっぱり変わらないんでしょ。(別の刑務官)変わらない」「職員としゃべりたい気持ちはあるので、そこの部分を手厚くしていただければと」
■「対話」と呼ばれるメニューの内容は
拘禁刑で重要な「対話」と呼ばれるメニューを受ける受刑者の部屋に、刑務官がやってきました。
この受刑者は強盗殺人などの罪で服役していて、幻聴などの症状があり「別人格」が時折声を上げるということです。到着した部屋は、壁や椅子など、ほかの部屋とは違う雰囲気の部屋でした。
「対話」のための部屋で、日々感じていることや悩みを刑務官に打ち明けます。
強盗殺人などの罪で服役 受刑者「ずっと誤解されている状況が苦しい。俺の言葉をゆがめて届ける存在がいるらしい」
「(別人格が出てくる)きゃーそんなこと言っちゃう~そんなこと言われたら…」
刑務官「ちょっと待って、いま主さん(本人)としゃべっている」
対話中も幻聴や別人格が声を上げたと話す場面がありました。
■話を聞く刑務官
強盗殺人などの罪で服役 受刑者「こういう話をしたところで、真に受けてもらえないんじゃないか」
刑務官「自分が今感じていることとか、聞こえているものとかを話すと、周りは信じてくれないんじゃないかと感じているということ?」
強盗殺人などの罪で服役 受刑者「そうです」
刑務官は受刑者の発言を否定せず、話を聞きます。部屋の内装が違うのも、受刑者がリラックスできるようにするためで、刑務官も制服姿ではありません。
山形刑務所では、拘禁刑の導入に先駆けて、およそ2年前から受刑者の必要頻度に応じてこの対話の時間をとってきました。
山形刑務所 土屋所長「刑務所=刑務官というイメージが強いかもしれないが、受刑者に対して刑務官だけではなくて、いろんな人たちが知恵を出し合ったり、力を出し合って、受刑者が社会復帰できるように、再犯しないように動いている。そこが拘禁刑になっての大きな変化」
強盗殺人などの罪で服役 受刑者「話を聞いてもらったことによって、自分の意見を、普段話せないこととかを話せたから、それですっきりしている部分はある」
記者 Q今何を思って過ごしていますか?「今、聞こえてくる声でワーワーしていて、声に言われることで振り回されている状況だから、何を思うこともない」
強盗殺人などの罪で服役 受刑者「加害者受刑者は、衣食住に医療費に、望んで通れば職業訓練なんてものまで税金でやらせてもらえるじゃないですか。犯罪被害者がどうかといったら、やらせてもらえない(そうではない)。自分に使われた税金に見合う以上の社会貢献を、できることなら思っているけど、諦めているところ」
■更生と再犯防止へ…
1日の刑務作業を終えた受刑者。夕食後、午後9時までは自由時間です。本を読む受刑者、うつむく受刑者の一方で、テレビを見る受刑者も。
山形刑務所 土屋所長「刑務所で働いている職員は、人の可能性を信じる仕事だと思う。罪を犯したからダメというのではなくて、ダメなところを変えて、いかに社会で頑張ってもらうか。(拘禁刑の)メリットは、多様性に応じた処遇ができるようになったので、その点では効果が出やすくなっていると思う。再犯率が低下するかはこれからのこと」
受刑者の「更生」と「再犯の防止」を目的にした新たな刑罰「拘禁刑」。その試みが人を変えることにつながるのか。刑務所の現場では模索が続いています。
