「慶應大にほぼ入学保証」のアメリカ高校留学に3年間で3000万円 息子のために貯金の半分を投じたサラリーマンが見た「円安地獄」
高市政権が推し進める私立高校の無償化が実現すれば、所得格差による教育格差は縮まると言われている。それでも親の力や教育方針で子供の将来が左右される現実に変わりないだろう。今回紹介するのは、一人息子のために3年間で約3000万円を投じたサラリーマン男性の話。「教育は投資」という考えのもと、清水の舞台から飛び降りた男性が見た“地獄”とはーー。(前後編の前編)
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【写真】あの有名歌手の息子も! 慶應義塾ニューヨーク学院卒で知られる「有名アナウンサーたち」
学力がなくても受験を回避して有名大に入学する「裏ワザ」
「転勤族だったこともあり持ち家もありません。資産と呼べるものは、コツコツ貯めてきた約5000万円の預貯金と一粒種の息子くらい。だからこそ、息子のために最大限の投資をしようと思ったのです」

商社勤務のAさん(50代)は3年前の大きな決断をこう振り返る。当時Aさんが悩んでいたのは、中学に通う息子の進学先だった。
Aさん自身は難関大学卒。それもあって苦労せずに有名企業に就職できた。だから息子にもそれなりの学歴を持たせてやりたかったが、息子の学力では難関高校の入試をクリアするのは難しい状況だった。
一方で、大学受験を経験させたくはなかった。理由は自身が負った高校時代のトラウマだ。「東大に進学できてこそ人生の勝ち組」という歪んだ指導方針の進学校で送った、地獄のような3年間は思い出すだけで胸が苦しくなる。愛する息子に同じような思いはさせたくはない。
学力がなくても有名私立の系列校に入れて、大学受験を回避できる「裏ワザ」はないだろうかーー。
そんな考えを巡らせながら、目に止まったのが慶應義塾ニューヨーク学院のホームページだった。
3年間で18万ドル以上
卒業生は希望すれば慶應義塾大学へほぼ進学できるとの触れ込み。英検2級程度の語学力があれば合格できるといい、倍率も2〜3倍とさして高くない。さらに魅力的だったのは、マンハッタン近郊という教育環境。授業の8割が英語で行われ、優秀な生徒ならば卒業時には“バイリンガル並み”の英語力を身につけられるというのだ。
Aさんは英語が堪能で、仕事で普段から英会話をしており、自身も海外赴任と外国出張を幾度となく経験した。一方、職場では英語に苦労する同僚たちの姿を目の当たりにしてきた。中学卒業を控えた息子は英語が得意で入試はクリアできそうだし、この留学を通してさらに磨きをかけられると考えた。
だが、この「ドリームチケット」はサラリーマンには簡単には手を出せない超高額なものだった。入学金5000ドルに加え、授業料と寮費は年間5万8,000ドル(現在は6万2800ドル)。学外活動などの費用も含めると、3年間で18万ドルを軽く超える計算だった。
寮は相部屋で「冷房なし」
Aさんが息子の高校進学を真剣に検討し始めたのは2022年12月頃で、当時の円相場は135円。初年度にかかる6万3000ドルは円に換算すると約850万円だった。Aさんの年収は1000万円を超えているが、稼ぎの大半が学費で消える、とてつもない出費だ。だが、Aさんは決断する。
「まだ50代前半だったので、再雇用期間を含めれば10年余りは働ける。妻は専業主婦ですが、夫婦ともに浪費しないタイプなので、自分たちの老後はなんとでもなる。一方、息子の人生を考えると残してやれるのは教育ではないかと」
何よりも決断を押したのが、息子本人の希望だった。選択肢として提示すると、ノリノリで「大学受験はイヤなので行く」と答えたのだ。その口ぶりは、奇しくも父親が味わったトラウマを避けたいと言わんばかりだった。
いざ受験させると晴れて合格。入学前、渡米して息子と一緒に視察しに行った。
「寮を見てびっくりしたのは、これだけ高い寮費を取られるのに2人部屋だったところ。うなぎの寝床みたいに狭いし、風呂なしでシャワーのみ。しかも冷房が付いていないので夏場はとても過ごせた環境ではない。それもあって、6月から9月の間は夏季休暇で日本に一時帰国するのです」
急激な円安で…
入学させてからボディーブローのように効いてきたのがこの一時帰国だ。
「渡航費だけで往復40万円以上かかる。子供だからLCC(格安航空会社)でいいと思われるかもしれませんが、東京―ニューヨーク間はLCCの直行便がないので節約しようがないのです。冬休みも加えると一時帰国は年2回。予定が決まるや、チケット代が値上がりする前にさっさと飛行機を抑えるようにしていました」
だが、時間の経過とともにそのような努力も虚しくなってきた。急速に「円安」が進み、毎年支払う授業料・寮費が想定外に重くのしかかるようになってきたからだ。
「23年夏頃に初年度の学費を支払った時には、半年前、受験を考え始めた頃より9円も円安ドル高になって144円に達していた。当初の想定より50万円余り高い。その後も円安傾向に歯止めがかからず、結局、諸々合わせると3年間で3000万円を超えました。当初の想定より300万円くらい高くなってしまいました」
後編【サラリーマンが息子を「慶應大にほぼ入学保証」のアメリカ高校に留学させたら、学友は「ビジネスクラスで帰国」「ウーバーイーツを注文」のセレブ子息だらけだった】では、円安など意にも介さないほどの財力を持った「セレブ親たち」の実態について伝えている。
デイリー新潮編集部
