美容消費に本格参入の アルファ世代 2026年に市場トレンドはどう変わる?

記事のポイントアルファ世代は2025年に美容消費者として本格的に市場へ参入した
TikTokとセフォラが若年層の美容消費を後押しする構造を作った
2026年に向けてアルファ世代が美容業界の前提を変えつつある
2023年以来、Glossyはアルファ世代の美容に対する執着心の高まりを密着して追ってきた。
子どもやティーンエイジャーは成長するにつれ、家で母親を見たり学校で友人から学んだりして常に美容製品を発見してきたものだが、アルファ世代はTikTok上のインフルエンサーから、リアルタイムかつトレンドのサイクルと歩調を合わせて学ぶ最初の集団のひとつである。
同時に、その時流に乗るようにブランドが登場した。そのなかには、アーリー(Erly)、ライル(Rile)、セイント・クルー(Saint Crewe)などがある。
アルファ世代はTikTokを起点に美容トレンドを形成
2018年にベビー用品で立ち上げたエバーエデン(Evereden)は、2021年にティーン向けのスキンケアコレクションを展開して拡大した。2024年には売上高が1億ドル(約150億円)を突破し、市場の需要を証明した。
2025年10月、エバーエデンはセフォラの棚に並んだ。これは、クリエイターのサリッシュ・マターによるティーン向けブランド、シンシアリー・ユアーズ(Sincerely Yours)のセフォラ・デビューからわずか1カ月後のことだった。
これら一連のローンチは明確なメッセージを放っている。本稿へのコメントを辞退したセフォラは、周囲がどう思おうとも、若年層の来店を歓迎するリテール環境づくりに本腰を入れているということだ。
これらのブランドは、より広範な経済的変化も象徴している。
セフォラは若年層を正式な顧客として受け入れはじめた
「セフォラ・キッズ」はもはや一過性のトレンドではなく、市場の重要なシェアを占め、本格的な投資に値する人口統計層となった。
ミンテル(Mintel)は、2029年までにアルファ世代の購買力は5.5兆ドル(約825兆円)に達すると予測した。
エバーエデンでは、すでにビジネスの転換が起きている。収益の85%は、当初のベビー向け製品ではなく、アルファ世代向け製品からもたらされているのだ。
しかし、このカテゴリーの成長は論争なしには進まなかった。
発売を記念して、シンシアリー・ユアーズはアメリカン・ドリーム・モール(American Dream mall)でイベントを開催し、8万7000人の来場者を集めた。
アルファ世代向け美容は巨大市場であると同時に論争の的に
これにより、子どもが26ドル(約3900円)の保湿剤をそもそも使うべきかどうかという、現在進行形の議論が増幅された。
発売時、サリッシュの父親であるジョーダン・マターはGlossyに対し次のように語った。
「彼女(若年層)の肌によいとされる製品は、彼女の目には特に楽しくもクールにも映らないのでは? という話をはじめた。そのとき、子どもたちが実際に使いたくなるような製品、自分の肌によい製品を使う意欲が湧くような製品を開発するのは面白いのではないか、と考えはじめた」。
しかし、その反発も、11月の出来事に比べれば微々たるものだった。
俳優でありモデル、起業家でもあるシェイ・ミッチェルが、4歳から12歳までの子ども向けシートマスクを皮切りに自身のブランド、リニ(Rini)の立ち上げを発表すると、それは瞬く間に正真正銘の道徳的なパニックへと発展した。
子ども向けスキンケアは倫理的議論に
ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)の見出しには「『ディストピア的』:4歳児向けのスキンケアが冷ややかな歓迎を受ける」と記された。
ミッチェルは最終的に「ザ・トゥデイ・ショー(The Today Show)」に出演し、批判に反論した。
「本当に、スキンケアは誕生した瞬間からはじまるものである。新生児の肌を保湿し、落ち着かせ、ケアするのと同じことだ。これはただ、より楽しいフォーマットになっているだけであり、美容の話ではない。子どもたちはマスクを見て修正や改善を考えるわけではない。ひんやりとした感覚や、共有する時間として捉えているのである」。
インフルエンサー主導の美容は「憧れの圧力」を生む
サブスタック(Substack)の「アフター・スクール(After School)」のライター兼コンサルタントであるケイシー・ルイス氏の、リニに対する警戒心は、インターネット上の多くの反応ほど強くはなかった。
「ブランド立ち上げの思考プロセスは理解できる」と彼女は言う。
「彼女自身がマスクを使い、子どもたちがそれを見て『楽しそうだ』『華やかだ』と感じる。そして市場を見渡すと、既存のマスクは子どもの顔には大きすぎる。親子で楽しむ、ちょっとした儀式として考えれば納得できるのである」。
しかし、ルイス氏はシンシアリー・ユアーズについてはより批判的だ。
サリッシュ・マターのオーディエンスは、本人(現在16歳)よりも若い層に偏っている。つまり、親に影響を与える可能性があるミッチェルとは異なり、彼女は子どもたちに直接影響を与えているということだ。
ルイス氏によれば、懸念されるのは「憧れによるプレッシャー」である。
リスクは、子どもたちが「サリッシュは私たちが憧れる美しい女の子。彼女のような生活を送り、彼女のような美しい肌を手に入れたいなら、セフォラでしか買えないこの4ステップのスキンケア・ルーティンが必要だ」と考えてしまうことにあるとルイス氏は指摘した。
ルイス氏がそのポップアップ・ストアについて言及したTikTokを投稿すると、「親への批判を恐れるのはやめるべきだ。これは異常だ」「親を責める必要はないが、私は責める。親は『ノー』と言うことを学ぶべきだ」といったコメントが寄せられた。
現在、最年長でもまだ14歳か15歳であるアルファ世代と良好な関係を築くには、ブランドは子どもとその親の両方にアピールしなければならない、とエバーエデンの創設者兼CEOであるキンバリー・ホー氏は述べている。
「購買を担うミレニアル世代の親と、クールだと思ってもらわなければならないアルファ世代、その両方を納得させる必要がある」。
少なくともホー氏は、すでにセフォラを納得させている。3月には、彼女のブランドは全米の全641店舗のセフォラに拡大する予定だ。
アルファ世代向け美容は今後さらに拡大
今後、アルファ世代が考える美容における「クールさ」がどのように定義され、誰がそれを形作るのか、そしてこの層を惹きつけるために設計されたブランドが、年長の顧客が使用するブランドから関心をそらすのに十分な力を持つかどうかが問題となる。
シンシアリー・ユアーズの場合、サリッシュがすでに持っているプラットフォームが有利に働いた。
彼女は3370万人のYouTubeフォロワーを持つ父親と共にコンテンツを制作しており、サリッシュ自身もインスタグラムで480万人のフォロワー、TikTokで490万人のフォロワーを抱えている。
そして、彼女がブランドを立ち上げる最後のアルファ世代クリエイターになるとは考えにくい。
ルイス氏は、シンシアリー・ユアーズの成功が2026年以降、このカテゴリーの成長を加速させるだけだと予想している。
「VC(ベンチャーキャピタル)で働く友人たちとの会話では、誰もがこの市場に対して非常に、非常に強気であり、そうあるべきだ」と彼女は語った。
「(シンシアリー・ユアーズをめぐる)熱狂によって、人々はある事実に気づかされた。サリッシュは一般的な有名人ではないかもしれないが、アルファ世代の家庭では有名人なのだ。そのような存在はほかにもたくさんおり、今後さらに多くの人々がブランド契約を結んだり、自社製品を発売したりするのを目にすることになるだろう」。
重要なのは「境界線」と「基本習慣」の両立
しかし、子ども向けのスキンケアや美容市場の成長が、すべて悲観的なものである必要はない。
子どもの肌はより敏感であるため、親は何を使っているかを認識しておくべきだが、アッパー・イースト・サイドの新しいニキビクリニック、スポットレス(Spotless)の共同創設者であり、認定皮膚科医・精神科医のエイミー・ウェクスラー博士は、2023年に初めてGlossyに語った内容を繰り返した。
それは、スキンケアのルーティンは子どもにとって有益になり得るということだ。もちろん、境界線を引くことも重要だと彼女は言う。
「大人用のものがあれば、子ども用のものもある。親が自分専用のものを持つことは許されるべきで、子どもたちはしばしばそれらに憧れる。それが子どもというものだ。彼らはより大きな子どものようになりたがり、大きな子どもたちは若者のようになりたがる。親として『これはお母さんのもの』『これはお父さんのもの』『あなたにはよくないし、安全ではない』と言うのはまったく問題ない」と彼女は述べた。
一方でウェクスラー氏は、若いうちに基礎的なスキンケアの習慣を確立することは適切であり、むしろ推奨されると強調した。
「健康的な肌の習慣を若いうちに形成するのは素晴らしいアイデアだ」と彼女は言う。
「そしてもっとも重要なのは紫外線対策であり、その次に顔を洗って保湿すること。それはよい衛生習慣だ。脇の下や指のあいだを洗う方法を子どもに教えるのはよいことだ。結局のところ、肌は体の外側にある最大の臓器なのだから」。
[原文:Glossy Pop Newsletter: In 2025, Gen Alpha arrived as beauty consumers - in 2026, they will reshape the industry]
Sara Spruch-Feiner(翻訳、編集:藏西隆介)
