『キミプリ』プロデューサーが語る映画化の意義 「ファンありきで“無限の可能性”がある」
現在公開中の『映画キミとアイドルプリキュア♪』は、「“キミ”がいるから輝ける、強くなれる!」をテーマに、“アイドルプリキュア”を描いたTVアニメの劇場版で、シリーズ第22弾。本作の公開を機に、TVアニメでアシスタントプロデューサーを務め、映画ではメインプロデューサーを務めた皆川英未來に、企画の背景やコンセプトへの想い、さらに社会で盛り上がる「推し活」をテーマにした狙いについて話を聞いた。
参考:松岡美里×内田真礼、“推し”と『プリキュア』に懸ける想い 「日常の一部にしてほしい」
■TVアニメから映画へ、魅力を知り尽くしたプロデューサーの視点
ーー最速上映で実際にお客さんと一緒に劇場で本作をご覧になったそうですね。劇場の空気感や、ご自身の手応えはどのように感じられましたか?
皆川英未來(以下、皆川):上映中にはすすり泣きしている方もいて、自分たちが届けたいと思って作ったものがちゃんと観てほしい方々に届いていると感じられて、とても嬉しかったです。
ーーこれまでTVアニメではアシスタントプロデューサーを務め、今回は映画でメインプロデューサーとして作品を送り出されました。スクリーンだからこそ届けられる体験について、どのように考えていましたか?
皆川:映画で意識したのは「スクリーンならではの体験」です。TVアニメだとスマホなどで観る方もいるでしょうし、画面や音にどうしても限界があると思われますが、映画館は大きなスクリーンと迫力ある音響で没入できる場所です。ライブやステージのシーンはTVアニメでも描いてきましたが、映画ならより迫力のある体験をお子さんたちに届けられると思いました。監督とも最初に「ライブ感を大切にしたい」と話し、カメラワークもライブの一瞬を切り取るような見せ方を意識していただいてます。今回の楽曲には映画主題歌「♪HiBiKi Au Uta♪」に加え、TVアニメ版のオープニングをプリキュア5人でカバーしたものもあり、彼女たちが輝いて見えるように工夫しました。
ーー映画制作にあたって、アシスタントプロデューサーとしての経験が活かされたと感じたことは?
皆川:アシスタントプロデューサーとして関わってきた経験は本当に大きかったです。TVシリーズには立ち上げから携わっていたので、「このキャラクターはどういう経緯でここに至ったのか」「TVのプロデューサーがどんな思いで作っているのか」といった背景を常に把握していました。その積み重ねがあったからこそ、映画ではキャラクター性をきちんと表現できたと思いますし、TVアニメではできなかったことを映画ならどう描けるかという視点も持つことができたと思います。映画のプロデューサーは必ずしもTVシリーズのシナリオから関わっているわけではなく、まずTVシリーズを学んでから映画を作るケースも少なくありません。そうした中で、今回はTVシリーズと映画を兼任するという珍しい形で取り組むことができた分、この作品の素敵さに関しては誰より知っている自負がありましたし、それが今回の映画における自分の大きな強みになったと思っています。
ーー今回の映画では“宇宙1”のアイドルフェスの会場・アイアイ島を舞台に、アイドル嫌いの少女・テラとの出会いが描かれます。この題材にした理由は?
皆川:映画だからこそ、TVアニメでは描ききれない大規模なライブフェスを描きたいと思いました。お祭りや音楽、わちゃわちゃと楽しむプリキュアの姿は、お子さんたちにも楽しんでもらえるだろうと考えました。屋台やジュース、伸びるチーズ棒など、細かい楽しさも盛り込みながら、種族や世界を超えたアイドルたちの姿を見せられるフェス形式を選びました。こうした中で、アイドルはファンありきで無限の可能性があり、みんな輝いているんだなと実感する機会も多くありました。
ーー「“キミ”がいるから輝ける、強くなれる!」というテーマをアイドルの物語に重ねる際、特に大切にされたポイントは?
皆川:今回の映画では、“キミ”の存在を丁寧に描くことを意識しました。アイドル嫌いのテラちゃんが、主人公・咲良うたに出会い、人間性に惹かれてファンになり、一緒に戦う過程を通して心が動く……。テラちゃんの瞳に映るキュアアイドルや、心が惹かれる瞬間をしっかり表現できたことが、今回のテーマを伝える上で大切だったと思います。
■“キミ=視聴者”を巻き込む楽曲の魅力
ーー皆川さんご自身の考え方や価値観といった部分で、どのようなインスピレーションが作品づくりに生かされているのでしょうか?
皆川:音楽に関してはかなり雑食で、ジャンルを問わず何でも聴きます(笑)。もちろんアニソンやアイドルの楽曲も聴きますし、邦ロックも大好きで、この前はONE OK ROCKのライブにも行きました。本当に音楽が大好きなんです。学生時代は吹奏楽部に所属していたこともありましたし、大学ではアカペラをやっていました。常に周りに音楽好きの仲間がいたので、自然とさまざまなジャンルを聴く機会に恵まれていたな、と。友人からおすすめされて聴いた曲も多く、そのおかげで自分の中の“音楽の引き出し”はかなり増えたと感じています。
ーーなるほど。では、皆川さんが感じる『キミプリ』ならではの楽曲の魅力はどこにあるのでしょうか?
皆川:『キミプリ』は“アイドルプリキュア”なので、アイドルの楽曲らしさ各曲に含まれているところだと思います。例えば、お客さんを巻き込むような部分などです。タイトルに“キミ”が入っているので、観てくれている方(=キミ)をどう参加させていくかが、考えられている楽曲だなと思います。
ーー具体的には、どのような点においてその“巻き込むような部分”を感じますか?
皆川:例えば、コール&レスポンスやアイドルソングとしてのテンポ感、リズム感ですね。最近はTikTokなどで楽曲が広まるスピードも非常に速く、プリキュア作品自体の楽曲がファンに長く愛されてきたこともあって、TVのオープニングやエンディングも注目される要素になっていました。その上で「アイドル」というテーマが加わったことで、期待値の高さや広がりにもつながったのだと思います。映画主題歌もTVシリーズで楽曲を手掛ける馬瀬みさきさんに作っていただきましたが本当に素敵な楽曲にしていただきました。
■“推し活”の感覚は子どもでも理解できる
ーー近年、社会全体で盛り上がりを見せている「推し活」を、プリキュアで扱うことは大きな挑戦だったと思います。特にお子さんたちに向けて、このテーマがどれだけ届くと考えていますか? また、実際に映画として形にしてみて手応えはどう感じていますか?
皆川:アイドルをモチーフにするとなると、「推し活」というテーマは切り離せないよね、という話は映画のシナリオ時にも出ていました。ただ、プリキュアのメイン視聴層であるお子さんにとって、「推し」という概念がどれだけ理解できるかは、正直、分からない……という議論もありました。ただ、「好きなものを応援する」という感覚は、お子さんでも理解できると思っています。そのため、作中では「推し活」という言葉を使いつつも、内容を噛み砕いて説明し、ちゃんと理解できるようには意識しました。そういう意味では、お子さんたちにもきちんと伝わる形で表現できたのではないかと思います。
ーー「アイドルプリキュア」というコンセプトは、企画段階から今回の映画化に至るまで、どのようなプロセスを経て形になったのでしょうか?
皆川:TVのプロデューサーがアイドル好きで、「アイドルでやりたい!」となったのがきっかけです。ただ、プリキュアでアイドルを扱うのは簡単ではなく、楽曲や振り付けが多く、アニメーションとして表現するのは大変でした。今回の映画でも楽曲の収録が何本もあり大変ではありましたが、立ち上げからずっと関わっていたので、「この子たちにたくさん歌わせたい!」という気持ちが強く、結果として多くの楽曲を入れることになりました。
■「アイドルアニメ」に括れない『キミプリ』の独自性
ーー近年、多くのアイドルアニメが登場していますが、他作品との差別化でプリキュアならではの強みはどこにあると考えますか?
皆川:まさにアイドルアニメ戦国時代ですよね(笑)。ただ、一概に『キミプリ』は「アイドルアニメ」に括れない作品だと考えています。普通、アイドルは戦わないじゃないですか(笑)。プリキュアでありつつアイドルでもある、この両立を大切にしているので、他作品にはない唯一無二の魅力だと思っています。
ーー皆川さんが作品作りで大切にしている“トキメキ”、『キミプリ』でいう「キラッキランラン♪」とは何でしょうか?
皆川:キャラクターショーや先日の親子試写会の映像を観ていても思うのですが、やっぱり作品を観て喜んでくれる姿を見たい、という気持ちです。チーム一丸となって作った作品で、誰かが楽しんでくれて、笑顔になってくれたら、まさに「キラッキランラン♪」だなと感じます。お子さんの笑顔はとっても眩しくて、全て吹き飛ぶくらいの喜びと何にも代えがたい幸せをもらえます。だからこそ、そこにいる“キミ”を思い浮かべながらに心を込めて作ることを大切にしています。(文=佐藤アーシャマリア)

