高カロリーな食事をたった5日間続けただけで「肥満になりやすい脳」になってしまうという研究結果

仕事や人間関係のストレスを感じている時や忙しくて食事の時間すら惜しい時、ついジャンクフードやお菓子を食べ過ぎてしまうことがあります。短い期間であれば、多少食べ過ぎたところで太ることはないだろうと思うかもしれませんが、新たな研究では「たった5日間高カロリーな食事を続けただけで、脳におけるインスリンの感受性が大幅に低下する」ことが判明しました。
A short-term, high-caloric diet has prolonged effects on brain insulin action in men | Nature Metabolism

Short-term dietary changes can lead to obesity, shows research
https://theconversation.com/short-term-dietary-changes-can-lead-to-obesity-shows-research-250939
インスリンはすい臓で産生されるホルモンであり、食事から吸収されたブドウ糖(グルコース)が細胞に到達するのを促進したり、脳内で食物摂取量を調節する信号を出したりしています。健康な人ではインスリンが正常に機能していますが、肥満の人ではインスリンの機能が損なわれるインスリン抵抗性がみられるとのこと。
脳内のインスリン抵抗性を持つ人は必要以上に多くの食物を食べたいと感じるため、食べ過ぎにより脂肪が増えやすくなります。特に腹部の脂肪細胞が多いほどインスリン抵抗性が高まることが知られていますが、脳内におけるインスリン抵抗性の高まりは、実際に肥満が起きる以前から発生しているそうです。
そこで、ドイツのテュービンゲン大学で糖尿病について研究しているステファニー・クルマン教授らの研究チームは、合計29人の男性ボランティアを被験者とした実験を行い、高カロリーな食事を続けることが脳内のインスリン抵抗性に及ぼす影響を調べました。

実験では、29人のうち18人を「1日のカロリー摂取量を1500kcal増やす実験群」に割り当て、残り11人を「健康な食事を続ける対照群」に割り当てました。
まず最初に、被験者のベースライン時点でのMRIスキャンを行ってインスリン抵抗性を調べた後、実験群に割り当てられた人々は5日間にわたって高カロリーのスナックを食べ、1日1500kcalを目安に摂取カロリーを増やしました。その後、再びMRIスキャンを行ってカロリー摂取量を増やした後のインスリン抵抗性を調べました。最後に、実験群の人々に7日間にわたって通常の食事をとってもらってからMRIスキャンを行い、食事を戻した後のインスリン抵抗性を調査しました。

実験の結果、5日間にわたってカロリー摂取量を大幅に増やした被験者の脳では、インスリン抵抗性が大幅に悪化したことが判明しました。この症状は、これまで主に肥満の人々にみられたものと同じだったとのことです。
また、実験群の被験者が通常の食事を7日間続けた後でも、やはりインスリン抵抗性が高いままであることが示されました。被験者に有意な体重増加はみられなかったものの、実験群では肝臓脂肪の量が有意に増加していたと報告されています。
クルマン氏は、「肥満の原因は食生活の乱れや運動不足だけではないようです。体重が増加する前の、短期的な食事の変化に対する脳のインスリン感受性の適応も、肥満に大きく関係しています」と述べました。

今回の研究では、脳内のインスリン抵抗性が食事を戻した後も持続したことが示されましたが、以前の研究から定期的な運動を行うとインスリン抵抗性が改善することもわかっています。この効果は肥満になる前の人々にも当てはまると仮定できるため、健康な食生活と運動を組み合わせることでインスリン抵抗性が改善する可能性があるとのこと。
クルマン氏は、「世界中の肥満人口は過去20年で2倍以上に増加しており、この傾向が間もなく終息するという証拠はほとんどありません。肥満を引き起こす体内のメカニズムは、単なる食生活の乱れや運動不足よりも複雑なものであり、脳の役割についても考慮しなくてはなりません」と述べました。
