【朝香 豊】旧安倍派が「最大勢力」から屈辱の「党内第5位」に転落…!総選挙で惨敗した石破総理「本当の狙い」

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早期解散総選挙を発案したのは実は誰か

今回は10月27日に投開票された総選挙結果を分析してみたいが、その前に多くの人が考えているのとは明らかに異なる私の前提を話しておきたい。

報道においては、石破総理は早期に解散するつもりはなかったが、森山幹事長などに押し切られる形で解散総選挙に踏み切ったとされ、そのことを信じている人が多いのではないかと思う。

しかしながら、私の見立てはこれがそもそも違っていたのではないかというものだ。

石破総理は自民党を勝利させるために今回奮闘したのではなく、自民党の保守派にダメージを与えることを最優先し、その結果として自民党が敗北しても全く構わないという考えのもとで選挙戦を戦ったのだと、私は考えている。

「ルールを守る自民党、国民を信じ、逃げることなく正面から語る自民党を作っていく」と公約して総裁選挙で勝利しながら、それを完全に裏切る行動に自ら出るということは、普通の考えでは導けない話だ。

敵を作らない人格者として知られる森山幹事長が、石破総理が総裁選挙で公約したことを踏みにじらせるようなことを、本当に進言するようなことがあったのか。汚れ役を引き受けながらも、そういう裏事情を決して人に明かさない森山氏を隠れ蓑にして、石破総理は自民党を裏切る所業に出たとみた方が、私は正しいのではないかと思っている。

自民党が大敗するということは百も承知で、能登の復興予算を補正予算で通すということもやらない、政策活動費の廃止を盛り込んだ政治資金規正法の改正も行わないまま、解散総選挙に打って出たのだ。こんなことをやれば、こうした批判の総攻撃が自民党にやってくることは十分に計算していたはずだ。石破総理やその取り巻きのブレーンたちが、そんなこともわからないほどのバカばかりしか集まっていないなんてことの方が、私には信じられないのだ。

自公合わせて過半数割れという事態まで想定していたかどうかはわからないが、自民党を敗北させることで、自民党の保守派に大打撃を加えることを意図していたとしか、考えようがないというのが、私の考えだ。

結局、旧安倍派のひとり負け

そしてその意図は、非常に大きな成果を上げた。

総選挙前後での衆議院議員における旧茂木派の減少率が約15%、麻生派、旧岸田派の減少率が約20%、旧二階派の減少率が約30%にとどまる一方で、総選挙前は最大勢力であった旧安倍派は、59人だったところから20人へとなんと66%も数を減らし、ほぼ1/3にまで勢力を大きく落とした。自民党内の圧倒的な最大勢力だったはずが、衆議院だけで考えれば、党内第5位の勢力にまで衰えたのだ。

石破総理は安倍元総理と対立的な関係にあったことは知られているが、単なる安倍憎しの感情からこんなことを行ったとは考えにくい。石破総理は中国を利するような動き、中国に気を遣う動きをすることでも知られており、今回の動きの背景にも中国が絡んでいるのではないかと、私は考えている。

大した根拠はないので、邪推と言われれば、否定はできない。

しかしながら、それを示唆するような妙な動きは指摘できる。

石破茂自民党総裁選挙に出馬する際に、大阪で開かれた決起集会には、中国大阪総領事御用達として知られるある中華料理屋が使われた。

もちろんどこでやろうが石破陣営の自由だが、大阪にもいろんなお店がある中で、またホテルなどもたくさんある中で、なぜ中国大阪総領事御用達として知られるお店をわざわざ選んだのか。開催費用がどのように負担されたのかについても疑惑が持ち上がっているが、証拠がある話ではないので、ここを深掘りすることはできない。それはともかくとして、こんなお店をわざわざ選んだのは、中国側にアピールするような動きだったと見るべき話ではないか。

この閣僚人事は誰を利するものか

石破政権発足後の人事にも、中国へのアピールではないかと思われる動きがあった。その最大のものは、村上誠一郎を総務大臣、岩屋毅を外務大臣という重職に就けたことだ。

村上誠一郎は安倍総理が凶弾に倒れた後に、安倍総理を「国賊」だと罵るという常軌を逸する言動に出て、自民党内で1年間の役職停止処分を受けた人物である。

岩屋毅は日本の防衛費をGDP比2%にすることへの反対を表明したことで知られる。政治とカネの問題が飛び出した時に、自民党内部では外国人による政治資金パーティーのパーティー券購入禁止を求める声が上がる中で、「開かれた党を守る」との見地からこれに反対したことでも知られている。

中国側に強い姿勢を示した安倍総理を貶めたり、中国側が嫌がる防衛費の増額に反対し、中国側の影響力を引き下げる可能性のある外国人によるパーティー券購入禁止に反対するような人物を、重要ポストにわざわざ据えたところにも、中国への「アピール」が感じられるのだ。

総裁選挙後の党内融和を優先し、挙党一致姿勢が重要だと石破総理が判断していたなら、こんなことは絶対に行わなかっただろう。

ちなみに、1992年に拉致議連の会長として平壌を訪問した際に、石破茂は「女、女」とおねだりし、キーセン接待を受け、その様子をビデオ撮影されたのではないか、との話がある。これは「週刊現代」が元東ドイツ秘密警察幹部の証言として、2008年に報じた話だ。こうしたハニトラに石破茂が中国からも受けていたのではないかというのは、大いに疑うべきところだ。

もちろん真相は藪の中だが、こういう経緯があったとすれば、一連の話がつながってくることになる。

公約を平然と踏み躙り、自民党を敗北させるように動いた石破茂を、自民党は絶対に許してはならない。

立憲民主ではなく国民民主が選ばれた

ところで、今回の選挙結果を分析すると、実に意外な事実に辿り着くことになる。

朝日新聞が出口調査に基づいて報じた、今回の選挙での年代別の比例区の得票率によると、20代では自民党に投票した人が20%にとどまる一方で、国民民主党に投票した人は26%に達している。つまり20代が最も支持している政党は国民民主党なのだ。

この傾向は30代でも同様で、国民民主党に投票した人は自民党に投票した人と並ぶ21%で、やはりこの年代ではトップに立っている。40代になると、国民民主党は自民党と立憲民主党に抜かれて第3位となるが、それでも第3位なのであって、維新よりも多くの支持を受けている。10代においても、国民民主党への支持は、自民党に対する支持の26%に次ぐ第2位だ。

なんとなく弱小政党のイメージの強い国民民主党だが、若い層での支持では実は多数派になっている。

今回の比例代表の得票数を見ても、自民党が前回よりも533万票少ない1458万票に、公明党も前回よりも115万票少ない596万票にとどまる一方で、国民民主党は前回の259万票から358万票も増やした617万票となっている。得票数はざっと2.4倍に増えているのだ。これは自民に失望した層が国民民主に走ったということもあるが、万博に関わるゴタゴタなどで維新に幻滅した層が流れたというところもあるのだろう。実際、今回の国民民主党の得票数617万票は、維新の得票数の511万票を100万票以上上回っている。

この一方で、国民民主党の兄弟政党のように見られることのある立憲民主党の得票数は、前回の1149万票からわずか7万票しか増やしていない1156万票にとどまっている。

自民党が嫌だから立憲民主党を選んだという人よりも国民民主党を選んだという人の方がずっと多かったということが、ここから想像できる。

既存左翼政党もまた退潮

他に注目したい動きは、左派陣営においての大きな変化だ。

既存左翼の共産党が前回の417万票から今回336万票へと81万票も票を減らした。共産党は2割程度票を減らしたことになる。社民党も102万票から約1割減らした93万票に留まった。

既存左翼の勢いがなくなった受け皿として広がっているのが、れいわ新選組だ。れいわ新選組が前回222万票から381万票へと、今回159万票も増やした。

今回の動きからはわかりにくいと思うが、恐らくはこれまで立憲民主党を支持していた人たちの中にも、れいわ新選組に乗り換えた人たちがかなり出ていたのではないかと私は思う。

つまり、れいわ新選組が増やした159万票のうち、共産と社民から離れた分はれいわ新選組に移動し、さらに立憲民主党からも70万票から100万票程度流れたのではないかと思う。

立憲民主党は7万票増やしているではないかと思う人もいるだろうが、自民党から立憲民主党に流れた票が100万票程度あって、立憲民主党かられいわ新選組に流れた票93万票あったとすれば、立憲民主党の得票数は結果的に7万票増えることになる。こういう玉突き的な動きが生じていたのではないかと、私は考えている。

左派陣営の中で最も勢いがあるのが、れいわ新選組となっていて、もう共産党、社民党、立憲民主党(左派)の時代ではなくなってきているのだろう。

自民の自爆と新たなる受け皿の誕生

今回の選挙で、立憲民主党は公示前の98議席から148議席へと50議席という大幅な議席増を勝ち取った。しかしそれは、自民党が自爆しただけにすぎず、国民の期待が立憲民主党に集まっているわけでは、実はないのだ。

むしろ立憲民主党は、党内に共産党やれいわ新選組と変わらないような勢力がいることが災いして、建設的な政策を示すことができない政党、自民党のスキャンダルに存在意義を見出すことしかできない政党のように思われている。

今回の選挙でも、「政治とカネ」で自民党の脚を引っ張るところに立憲民主党はエネルギーを割いてきたが、それが真っ当な層からは相手にされなくなってきている。そうした不満の受け皿が国民民主党になっているのが、今回の選挙結果から見えるのではないか。

むしろ、立憲民主党は非現実的な左派を党内に抱え込むことによって、今後どんどんと退潮傾向を強めていくのは、ほぼ必然だと言ってよいだろう。

そしてそれに代わって勢力を伸ばしていくのが国民民主党になるのではないか。

そうした流れが見えたのが、今回の総選挙の興味深いところである。

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