第23回『このミステリーがすごい!』大賞が発表!受賞者は26歳“現役漫画家”の土屋うさぎ氏『謎の香りはパン屋から(仮)』
大賞の『謎の香りはパン屋から(仮)』は、パン屋を舞台にした日常の謎を描く連作ミステリーだ。大学一年生の市倉小春が主人公で、彼女は大阪府豊中市にあるパン屋〈ノスティモ〉でバイトをしながら漫画家を目指している。物語は、親友の由貴子にドタキャンされたライブビューイングの件をきっかけに、彼女の行動を振り返るところから始まる。小春は、彼女の行動に隠された意外な真相に辿りつくことになる。
選評では、翻訳家・書評家の大森望氏が「生き生きした会話とテンポのいいストーリーテリング、なにより全体を包む空気感が魅力的」と評価し、コラムニストの香山二三郎氏は「完成度の高い人間関係劇とおいしそうなパンの魅力で読ませる」と称賛。ライターの瀧井朝世氏も、パン屋独特の事件を盛り込みながら、読者を楽しませる構成に高い評価を与えている。
土屋うさぎ氏は1998年に大阪府で生まれ、東京都府中市で育った。大阪大学工学部応用理工学科を中退後、漫画アシスタント兼漫画家として活動している。2023年には『あぁ、我らのガールズバー』で集英社・第98回赤塚賞準入選を果たし、その後もさまざまな賞で受賞歴を持つ。
【土屋うさぎ氏:著者コメント】
このたびは栄誉ある『このミス』大賞にお選びいただき、本当にありがとうございます。
昔から小説は好きでしたが、漫画家としてデビューし、小説に打ち込むタイミングはもうないと決めつけていました。しかし打ち込む時間は作るもの。人生でやりたいことは全部やろう、と『このミス』大賞に挑戦しました。
書き上げることができたのは、パン屋でのバイト経験、大阪での生活、漫画家としての活動、今までの出会い全てのおかげです。大賞の名に恥じぬよう、これからも全力で作品を書いていきたいと思います。
文庫グランプリには、松下龍之介氏の『一次元の挿し木』と香坂鮪氏の『どうせそろそろ死ぬんだし』が選ばれた。これらの作品に200万円(均等に分配)の賞金を受け取る。
『一次元の挿し木』では、ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨と失踪した妹・紫陽のDNAが一致することから始まるミステリー。兄の悠が人類史を揺るがす陰謀に巻き込まれる様子が描かれている。選評では、大森望氏が「冒頭で提示される謎の牽引力、ストーリーの面白さでは、今回これがダントツ」と評価した。
【松下龍之介氏:著者コメント】
「一次元の挿し木」は“迷宮”をテーマとした作品です。それゆえか、執筆中はストーリー構成に日々悩み、長らく自分自身が迷宮に迷い込んでいる状態でした。挫折しそうにもなりましたが、ある夜、近所の公園を五時間以上徘徊し、ようやく論理的破綻のない道筋を見つけたとき、忌まわしき迷宮を後にすることができました。
自分の全てを懸けて綴った物語です。読んで後悔はさせません。最高のエンターテインメント体験をお約束します。
もう一つの受賞作『どうせそろそろ死ぬんだし』は、余命宣告された人々が集まる交流会を舞台に、探偵業を営む元刑事の七隈が不審な死を解決しようとする物語。こちらも、独特の設定が魅力的であると評価されている。
【香坂鮪氏:著者コメント】
鮪は泳ぎ続けることで生を得る。私もまた、書き続けることで文学の海を生きていきたい。幼魚同然の私を海に放り出してくれた選考委員の方々に感謝申し上げます。5年先、10年先の受賞者から、「あの人の出身だから」と言われるような作家を目指します。
『このミステリーがすごい!』大賞は、ミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘を目的に、2002年に創設された新人賞で、これまで多くの有名作家を輩出してきた。受賞作は業界の活性化に寄与することを目指し、今後も新しい才能を発掘し続ける。
■第23回『このミステリーがすごい!』大賞 受賞作品
大賞:
・土屋うさぎ『謎の香りはパン屋から(仮)』 賞金1200万円
文庫グランプリ:
・松下龍之介『一次元の挿し木』 賞金100万円
・香坂鮪『どうせそろそろ死ぬんだし』 賞金100万円
※受賞3作品は2025年1月から順次書籍化される予定。
