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 車を運転中に、イラっとしてしまうことはないだろうか。「車や人が飛び出してきた」「前方の車が青信号なのに進まない」「クラクションを鳴らされた」など、不愉快なシーンに直面することもあるが、怒りに身を任せると、さらなる災難に見舞われるかもしれない。
 酒井美穂さん(仮名・23歳)は天気の良いある日、女友達Sさんとあてもなく山道をドライブしていた。周囲に走行中の車を見かけなくなってからしばらく経ち、岩を素掘りした珍しいトンネルを抜けたときのこと。

軽自動車がピッタリついてくる

「真っ直ぐの道が続いていたとき、後ろから年季の入った軽自動車が猛スピードで追い上げてきたのです。山道はスピードを出す人も多いので、後ろから来て追い抜いていくのかと思いました。でもその車は、ピッタリと後ろにくっついて煽ってきたのです」

 負けん気の強い性格のSはイライラしていたが、ただでさえ危険な山道。「そんなヤツにかかわっても、ロクなことないよ」と酒井さんが忠告すると、素直に耳を傾けた。車が停められるスペースを見つけ、端に寄って道を譲る。

「サッと追い抜いていくのかと思ったのですが、後ろの軽自動車は急に速度を落としました。そして私たちの車の横をノロノロと通過しながら、運転手の男が助手席に座っていた女性の唇に吸いついている姿を見せつけてきたのです」

◆見せつけるようにイチャイチャと

 しかも中指を立てて、あきらかに目も笑っていたとか。衝撃の絵面に怒りというよりは、「スゴイな、運転しながら……」と、2人で感心したという酒井さん。けれど鬱陶しかったのは、ここから。軽自動車は酒井さんの車を追い抜いたあともスピードを上げる気配がない。

スモークを貼っていない軽自動車の車内では、2人がこちらに見せつけるようにイチャイチャしているのです。車の走行速度は10キロぐらい。しかもイチャイチャしているからか、フラフラしていて蛇行運転が続きます」

 不定期に怒りを滲ませるSさんを宥めながら、酒井さんもイライラしていたとか。しかも、スピードを緩めると軽自動車も同じように速度を落としてくるため、車間距離も空けられない。とにかく、我慢するしかなかった。

◆周りに車もおらずやりたい放題

「そんな私たちを嘲笑うように、軽自動車の運転手が後ろに向いてアッカンベーや中指を立てるといったことを繰り返したのです。これには、本当にムカつきました。でも、私たちは女性2人。もし男が乱暴なことをしてきても、山道だし助けも呼べません」

 2人は、グッと我慢して走行を続けた。スペースを見つけたときには端に寄って止まり、軽自動車と間隔を空けようとしたこともあったが、思うようにいかない。軽自動車もサッと2人の車の前で停車して動かなくなるのだ。

「車から降りてきても怖いので、走行するしかありません。軽自動車は、そんな私たちを面白がっているかのようにイチャイチャしながらノロノロ運転を続けていました。まわりを走る車もいないので、やりたい放題です」

◆運転手が前に向き直った瞬間…!

 ところがそんなとき、助手席に乗っていた酒井さんは、前方に見えるクネクネとした山道のずっと向こうから走行してくる対向車の姿をチラリと捉えていた。そしてすぐにSさんに対向車の存在を知らせる。

「Sは相当イライラしていたので、『とにかく落ち着いて! このまま軽自動車の後ろを走ってたら、事故に巻き込まれるかも』と諭したのです。Sがしぶしぶ車を道の脇に停めると、軽自動車の運転手は、速度を落として前に向き直りました」

 酒井さんは、「また車を停止して、私たちに嫌がらせをしようと考えたのではないか」と推測する。そして、軽自動車の運転手が前に向き直ったと思った次の瞬間……。軽自動車が対向車の方向に、猛スピードでぶつかっていったのだ。