ブレーメンから期限付き移籍で加入した長田。さっそくフォレンダムの正守護神を務めている。(C)Pro Shots/AFLO

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 9月3日、オランダ・エールディビジ(1部リーグ)のフォレンダム対トゥエンテのキックオフ直前、私はオランダ人記者から「おい、お前、日本人選手もいないのにここに来る暇はないだろう。上田綺世(フェイエノールト)が初ゴールを決めたぞ」とからかわれた。

 試しに「長田澪」の名で検索すると多くの日本語記事がヒットする。しかし、オランダでプレーする日本人選手のひとりに訊いても「えっ、知りませんでした」と驚いた顔をした。

 現地での名はミオ・バックハウス。ドイツ人の父、日本人の母を持つ19歳GKは川崎で生まれ育ち、川崎フロンターレの下部組織に所属した。U-15日本代表でのプレー経験を持ち、今はU-20ドイツ代表に選出されている。昨シーズン、ヴェルダー・ブレーメン・セカンドチームの一員としてレギオナルリーグ(ドイツ4部リーグに相当する地域リーグ)でプレーした長田は、さらなる経験を積むためにオランダ1部リーグに所属するフォレンダムに一年の期限付き移籍でやってきた。

 その開幕戦、早くも正位置を掴んだ長田はフィテッセの放つ強烈なシュートをストップし続け、巧みなパスワークでビルドアップのリズムを作った。結果は1−2の敗戦。しかし現地テレビ実況は「ミオ・バックハウス、チームは負けましたが良いプレーを見せました!」と称えた。オランダでは「ホームチームのマン・オブ・ザ・マッチ」を選ぶことが非常にポピュラーだが、プロデビューマッチでいきなり長田はその賞を授かった。

 ただし、フォレンダムのチーム事情はかならずしも良くない。トゥエンテに0−2と負けたことでチームは開幕4連敗となった。そのなかで長田のプレーはどうだったか。私の印象は“非常にオランダサッカーに適したキーパー”だということ。常にビルドアップに参加し続け、ショートパスが安定しており、ボックス内右側から左サイドに大きく振るパスはとても正確。長田がダイレクトキックで左に振ると観衆が拍手を送った。

 ビルドアップに参加し続けるということは、立ち位置がおのずと高くなる。そのため相手のスルーパスに反応しやすいポジションを取っており、ボックス内外で相手より早くボールに触ることができていた。トゥエンテにかなり攻め込まれていたが、枠内シュートは4本のみ。そのうち2本がゴールになってしまったが、味方がブラインドになったり、1対1を巧みに流し込まれてしまったりで、GKとしては止めるのが難しかった。

 試合後、件の記者が「終盤、キックを相手にブロックされて危ないシーンはあったけれど、“あの日本人キーパー”は良かった」と私に語りかけた。あとはちょっとしたコミュニケーションミスをなくしていくことだろう。

 試合後はスポンサー対応のためスタジアム内のラウンジへ向かうなど、大忙しの一日を過ごした長田澪。それでも疲れた顔ひとつ見せず、とても丁寧に対応してくれた。

 トゥエンテ戦の感想を尋ねると「きれいに真ん中を崩されてしまいました。この2失点をなくせば勝点1を獲ることができる。俺も頑張ってオランダ語でコーチングしてますけれど……」と彼がなにか課題点を挙げようとしたところで、私は思わず「オランダ語でコーチング!?」と遮ってしまった。オランダなら英語が通じるし、ドイツ語が堪能な人も多い。サッカー選手に限らず、オランダに来て2か月に満たない外国人選手が仕事でオランダ語を使うケースはかなり稀だ。

「単語を自分の席に貼って、頑張って勉強しているんです。一年ローンでフォレンダムに来てますが、一年後にはオランダ語を喋れるようになりたいんです。俺、意外と英語が上手いんです。でも、オランダに来たからにはサッカー以外のことも吸収したい。今は長く話すのは難しいので英語ですが」