原材料高騰下、製品値上げ・賃上げの好循環をどう作るか? 日本商工会議所会頭・小林 健の 大企業と中小企業のパートナーシップで
日本生命が7%賃上げ、日揮ホールディングスが10%、サントリーホールディングスが6%、アサヒグループホールディングスもそれ相当の賃上げに踏み切るなど、経営者の決断が相次ぐ。
一方で、賃上げまでできない所もある。まさに、今は時代が大きく動こうとする転換期。
この大きな時代の流れをどう捉えるか─。
「わたしのような、いわゆる団塊世代の経営者は、2025年には後期高齢者になります。そうなると、事業承継の問題に直面します。わたしの回りの中小企業の経営者はみな事業承継の問題を抱えています。事業承継というのは、自分の家族が継がない場合、M&A(合併・買収)をするか、廃業するかという選択に迫られます。こうした状況も考慮して、次の段階に発展できる企業はどういう企業かというと、自ら変革出来る企業だと思います」
では、そうした環境下にあって、次のステージに進める企業はどういう所なのか?
「中小企業の場合は、オーナーと従業員の距離がものすごく近いです。そういう意味では、状況に応じて素早く変化する力は十分あるし、やろうと思えばできるんです」
小林氏は出身母体の三菱商事で事業構造改革を体験。この時の構造改革をどう受けとめているのか?
「商社の場合は業態の変革ですね。わたしが中堅社員くらいの頃までは、いわゆる、商事会社というのは、仲介取引、仲介貿易を主としてやっていました」
〝仲介〟というのがポイント。商流、つまりモノ(商品、貿易材)の流れの袂に立って、タイミングをよく見て、「流れの中からビジネスチャンスをつかむ。それを自分の仕事として収益を上げていく。こういうことをずっとやってきた」と小林氏。
いわば、商流を傍から見ていて、他者の取引を手助けする形。小林氏が部長クラスになった時から、そうした業態からの改革を迫られる。1990年代から2000年初めにかけてである。
時あたかも、バブル経済がはじけ、金融危機が起こり、日本全体が〝失われた10年〟といわれ、現状のままでは事業の持続性が失われるという危機感。
商社はどう業態変革を進めていったのか?
「ビジネスの相手方や他の産業の方々と一緒に商流の中に入って、流れの中からビジネスチャンスをつかんでいく。即ち、事業に投資をして、投資した会社に人を送り、長期的に経営のサポートをして、企業価値を高め、さらには業態転換のお手伝いをするということ。そういう意味では、仲介から経営に舵を切ったと言っていいと思います」(インタビュー欄参照)。
業態は時代の移り変わりで変革させていかないといけないが、企業経営の本質は変わらない。
三菱商事は創業以来、『所期奉公(社会のために)』、『処事光明(何事もオープンに)』、『立業貿易(グローバルな視野で)』を綱領、つまり経営指針にしてきた。
言葉は古いが、今の企業経営に求められるものも同じである。
東京商工会議所の初代会頭・渋沢栄一は明治期、約500の会社を興した。その理念は、社会(国)に貢献し、国民のためになる事業を営むということ。その著『論語と算盤』は企業経営の規範を説いたものとして知られる。
もっと言えば、渋沢は江戸末期から明治維新を経ながら、いくつもの危機や試練をかいくぐってきたということ。「逆境の時こそ、力を合わせて」コトを成していくという生き方であり、働き方であった。
コロナ禍、ウクライナ危機の今、いろいろな危機が訪れる。そして国内では、この10年近く続いた金融緩和の時代が終わり、金利上昇という新しい経済局面を迎えて緊張感も漂う。
