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米国の警察車両、組織ごとに

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

米国の警察組織は日本よりもだいぶ複雑だ。

【画像】日本のパトカーも、地域によって実はちょっと違います【比べてみる】 全76枚

日本は47都道府県の警察があってパトカーのデザインは基本的に上が白、下が黒のボディに警視庁、神奈川県警、北海道警察、愛知県警、滋賀県警などの文字が記されている。


アメリカのパトカーの定番といえば大型セダン。しかしSUVに置き換わりつつあります。    加藤博人

「横浜市警察」や「足柄上郡警察」のパトカーは存在せず、神奈川県内の警察で使われるパトカーにはすべて「神奈川県警」と表示されている。

いっぽう、アメリカは州、郡、市それぞれに警察があり、パトカーのデザインも異なる。

一般人にとっては「市警察」が最も身近な警察組織となり、ニューヨーク市警(NYPD)やロサンゼルス市警(LAPD)などがこれに該当する。

また、これら以外に西部劇の映画などでおなじみの「Sheriff=保安官」という組織も存在する。

地方警察組織の1つで「郡の警察組織」として解釈されることが多い。

地方都市に行くほど見かける頻度が高くなるが市警察が十分に機能している大都市圏にはシェリフ自体が存在しない場合もある。

カリフォルニア州ロサンゼルス郡には2万人近いシェリフが存在しており、シェリフが使うパトカーはボディサイドに「○○○(地域名)SHERRIF」と記されている。

市警察と同レベルの権限が与えられており、捜査や取り締まりも同様におこなわれる。

そして、これらアメリカの警察組織で使われているポリスカーと言えば、長い間、クラウン・ビクトリアに代表されるいわゆる「アメ車」の大きく平べったいセダンがおなじみだった。

そのセダン型ポリスカーが近年、急激にその姿を消しつつある。何が理由なのだろうか?

SUVパトカー急増の理由は?

筆者は今年11月、2年ぶりにアメリカを訪れた。

そこでラスベガスやロサンゼルス、ニューヨークの街中でポリスカーにたくさん遭遇したわけでが、昔ながらのセダン型は激減していた。ほとんどがフォード・エクスプローラーに代表されるSUVだった。この2年で一気にSUV化が加速した印象である。


「Sheriff=保安官」という組織も存在する。 地方警察組織の1つで「郡の警察組織」として解釈されることが多い。    加藤博人

最大の理由はフォードが2011年にアメリカ警察車両を代表する「フォード・クラウン・ビクトリア・ポリスインターセプター」(CVPI)の生産を終了したことにある。

1980年代から全米各地の警察車両として使われてきた長い歴史を持っており、アメリカのパトカーと言えばクラウン・ビクトリア、というアイコン的存在でもあった。

それが生産終了となり、新たにポリスインターセプターとして普及が始まったのがエクスプローラーに代表されるSUVだ。

正式名称は「フォード・ポリスインターセプター・ユーティリティ」とSUVであることを示す「ユーティリティ」が車名についている。

ちなみに日本で言うところの「パトカー」は、アメリカにおいては自動車メーカー各社によって呼称が異なっている。

フォード:「フォード・ポリス・インターセプター」「フォード・ポリスインターセプター・ユーティリティ」

ダッジ:「ダッジ・パーシュート」

gm:「ポリス・パーシュート・ヴィークル」(PPV)「スペシャル・サービス・ヴィークル」(SSV)

などの呼称となる。

日本車もアメリカではプリウス、カムリ、アルティマなどがパトカーとして使われている。

SUVパトカーの利点を直撃取材

実際、セダン型とSUV型にはどんな違いがあるのだろうか?

世界最大の自動車アフターマーケット見本市「SEMAショウ」の会場で警察官に聞いてみることにした。


セダンやSUVのパトカーの他にピックアップも存在する。    加藤博人

最終日に開催された「イグナイト」という屋外イベントには20台以上のパトカーが来場していた。

ちょっと暇そう? な警察官に話を聞くことに。

――今日、会場に訪れているパトカーにはSUVが多いですね。どのような利点がありますか?

「SUVはラゲッジルームが広く、コーン(パイロン)など通行規制のための機材を搭載する場合も余裕だよ」

「荷物の出し入れもしやすく、使いやすい高さで腰に負担が少ないんだ」

「車内でパソコンを使う際にも室内高が高いSUVは使いやすい。新型エクスプローラーはパソコンが内蔵されているからパソコンを載せるためのステーやアームがない分、室内を有効に使える」

「とにかく室内が広くて使い勝手がいいね」

――セダン型と比べていかがでしょうか?

「セダン型はとにかく燃費が悪くて室内も狭く、設計が古いから仕方ないけど使い勝手もいまいちだった」

「環境のことを考えても燃費が良いクルマをパトカーとして使うのがいいと思うよ」

――それでもまだセダン型が使われているのですね。

「そうなんだよ! 実は、パトカーを替えるには年数や距離の規定があって、それを満たすまでは乗り換えができないんだ」

「だから、燃費が悪くて使い勝手が悪いセダン型を一刻も早くSUVパトカーに入れ替えるために、今は古いセダン型を極力使っているんだ」

「早く乗り換えたいよ」

セダン・パト、続々と姿を消す

2021年はクラウン・ビクトリアの生産終了から10年が経過した年。

この間、全米の警察署からは続々と「クラウン・ビック引退」の報告がなされている。2つ紹介してみよう。


バーモント州警察のフェイスブックに紹介された、クラウン・ビクトリア退役。    加藤博人

バーモント州警察(Vermont State Police)は「1つの時代の終わり……」として2018年10月31日に現役最後のクラウン・ビクトリアの写真を掲載している。

そこには「フォード・モーター・カンパニーの象徴であるクラウン・ビクトリアは、1世代にわたってアメリカの警察当局に選ばれたクルーザーでした」

「そのクラウン・ビクトリア・ポリスインターセプター(CVPI)が、2011年に生産終了となりました」

「今週、バーモント州警察が現役で使用した最後のクラウン・ビクトリア『EQ258』はオークションに出品するため、フリートサービスガレージへ最後の旅に出ます」

なお、同警察署にはVSP50周年記念の後期型と1997年モデルの2台のCVPIが保存されているそうだ。

また、カリフォルニア州では2020年9月に「カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール」(CHP)が、クラウン・ビクトリアの完全終了を伝えている。

CHPがフェイスブックに投稿した内容によると、

「カリフォルニアハイウェイパトロールは2020年9月1日午後5時に象徴的なフォード・クラウン・ビクトリア・ポリスインターセプターを正式に引退させました」

「クラウン・ビクトリアは1984年以来、カリフォルニアの人々に最高レベルの安全性、サービス、セキュリティを提供するためにカリフォルニアの道路をパトロールしてきました。CHPを支援していただきありがとうございます」

全米各地に配備されて1984年から活躍してきた「フォード・クラウン・ビクトリア・インターセプター」は、日本で言うところの17クラウン(S170系トヨタ・クラウン)のような存在だろうか。

日米を代表するパトカーは偶然にも同じ「クラウン」が車名に入っており、日本のクラウンも2018年に発売された現行クラウンで生産終了を発表している。

とはいえ、警察向けの車両としては当面の間、生産が続くとされているので、クラウンパトカーがSUVに代わることは今のところなさそうである。