地上波で見られない最終予選は、DAZNで視聴することになった最終予選は、世間一般からどのように受けとめられたのだろう。

 試合翌朝の地上波のワイドショーなどでは、扱いが小さいか少なかった印象だ。自民党の総裁選と新型コロナウイス関連のニュースがあるので、サッカーに割ける時間がなかったのかもしれない。
それでも、地上波にまったく取り上げられないわけではなかった。久保建英が先発して決定的なシーンを作ったこともあって、ワイドショーやニュースで短いハイライトが流された。

 最終予選のアウェイゲームは、時差の都合で深夜キックオフにもなる。日本代表のブランド力が低下している現状では、深夜や早朝に中継をしてもテレビ局側はメリットが見つけにくい。それなのに、放映権は安くない。地上波での中継が無くなるのは、避けられなかった。

 それが悪いとは思わない。関心のある人しか見ない時間帯の試合なら、放送がなくてもサッカーとか日本代表のブランドに大きな影響はないと考える。視聴率が低かったなどと報道されるほうが、ダメージを被るだろう。

 DAZNの番組作りは良かったと思う。テレビのように時間とCMに縛られないのが配信の強みで、放送枠に合わせて無理に中継を終わらせなくてもいい。試合前やハーフタイムに、CMを立て続けに流す必要もない。
 
 制作側からすると、「好きな人が観ている」との前提に立てるから、初心者向けの説明を省略できる。一つひとつのトピックを噛み砕かなくていいし、ひとつのプレーを思い切り深掘りできる。地上波に比べるとまわりくどいところがないので、「サッカーが好きで観ている」人はストレスを感じなくて済むのではないだろうか。

 裏解説が用意されたのも良かった。地上波の副音声に相当するもので、オマーン戦では中村憲剛さんと岩政大樹さんの掛け合いが分かりやすかった。決定機や失点シーンでは、ふたりの生々しい反応が伝わってきた。

 ネット上の反応はどうかと言うと、いつもと変わらなかった。

 DAZNの配信だけでも試合終了直後から記事が配信され、たくさんのコメントがついた記事もある。テレビよりも新聞よりもネットが身近なツールになっており、ネット上に記事が上がっていれば認知度は維持できるのだろう。

 試合は辛勝だった。
「最終予選に簡単な試合はない」と言われる。結果を出したことは評価されるべきだ。

 しかし、中国が不慣れな5バックを採用し、4バックに戻すまでの60分強を無駄に過ごしたことは、日本にとって強力なアシストとなった。シュート数は多かったが決定機は少なく、1対0での勝利にとどまったのは、勝ってなお不安と不満を呼ぶ要因となっている。

 このチームは「カタールW杯で過去最高の成績」を目ざしている。世界のベスト8入りというターゲットに照らし合わせると、オマーンに0対1で敗れ、中国を辛うじて退けた現状は、まるで満足できないことになる。

 他方、この試合をのちに振り返ると、日本サッカー界にとってターニングポイントになったと位置づけられるかもしれない。

 久保建英が出色のパフォーマンスを披露したからだ。

 東京五輪で全6試合に先発出場し、新天地マジョルカでもスタメンに名を連ねているから、久保がトップ下で起用されることに驚きはなかった。オマーン戦に敗れていたことを踏まえれば、むしろ当然のこととして受け止められただろう。

 ただ、状況は簡単ではなかった。日本からカタールへ移動し、中4日で迎えた一戦である。何よりも連敗は許されず、引分けでも批判を浴びる一戦で、20歳の選手がほとんどミスもなくプレーしたのだ。しかも、相手に脅威を与えたのである。

 1対0でリードした終盤には、サイドで時間を使いながら相手のスキを見逃さず、決定機につながるパスを通した。この日の攻撃は、久保抜きには成立しなかった。

 同じような試合が、20年以上前にあった。
 1997年5月21日、中田英寿が日本代表デビューを飾った。直前のフランスW杯1次予選を全勝で突破した加茂周監督は、「最終予選突破には戦力の上乗せが必要」と話し、中田をテストしたのだった。

 この試合で堂々たるパフォーマンスを見せた中田は、代表のレギュラーに定着することになる。最終予選を経て、日本サッカー新たなシンボルとなったのだった。

 2021年9月7日の中国戦は、久保が日本代表の中心となるきっかけだった──1年後、5年後、10年後に、そんな認識が広がっているかもしれない。