店内で焼く生地のおいしさが感動的! 専門店の威信をかけた絶品フルーツタルト
店によって配合に差はあれど、タルトの生地自体は同じで上にのせる食材だけが変わるのがフルーツタルトだと思っていました。ところが恵比寿にオープンしたタルト専門店「アム ストラム グラム」は、食材によって生地そのものも変えてしまうそう! しかもすべての作業を店で行い、“その日に焼いたものはその日に販売する”という徹底ぶり。その味わいは格別、いえ、次元が違います!

つい足を止めてしまう意外性のある佇まい

恵比寿駅から代官山へ向かって歩いていると、目を惹くお店が出現します。カジュアルながらセンスあふれる佇まいに足を止めたくなるのですが、半透明のポリカーボネート製の壁で、外からは何のお店かわからず仕舞い。外に並ぶフルーツを見てレストラン? フルーツショップ? カフェ?と妄想し尽くし勇気を出して中へ入ってみると……。
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タルト専門店でした。広々とした空間は木の温もりを感じさせ、ショーケースの中にはおいしそうなフルーツがのったタルトが端から端まで並んでいます。これだけでも胸がワクワク、心が躍ります。

イチゴ、ブドウ、クルミ……、どれもキラキラしてまるでジュエリーのよう! 「今、イチゴは宮崎の大野農園が作った、実になったまま完熟させた『おおきみ』と、伊豆の『きらぴ香』、練乳クリームには同じく伊豆の『紅ほっぺ』を使っています」と、代表の五條敦広さんが教えてくれました。
余韻までおいしくする!

練乳入りのホイップクリームの上には半分にカットしたイチゴをぎっしりのせた「イチゴと練乳クリームのタルト」。人気トップ3に常にランキングされているそうですが、このビジュアルなら頷けます。
人気のイチゴはこちらの練乳クリームとフルーツタルトを常備しており、スペシャルでフランボワーズ味の練乳クリームが登場したり、予約&数量限定でイチゴのショートケーキも注文できたりするそう。サイズも1ピース、ホール12cm、17cmとバリエーションがあるのはイチゴだけ。

早速味わってみましょう。甘い、けれど思ったより甘くない? タルトとクリームの上に所狭しとぎっちりのったイチゴは甘さと酸味が香りと共に口の中でじんわりと広がります。フワッフワの練乳クリームはきめ細かくす〜っと溶け、するとまたほんのりと甘みを感じます。その正体は自家製のイチゴジャム。最後に甘さと調和するかのようにタルトの生地の塩気を感じます。
「口の中に甘さが残るとコーヒーや紅茶で流したくなりますよね。うちのタルトは余韻をいつまでも楽しんでいただけるように、最後に口の中に残るタルト生地は甘くしないのです」。それで甘いのに甘くないと感じたのでしょうか。最後の余韻までおいしくする! それは“タルトのデザイン”にかかっていました。

タルトをデザインする! これはどういうことかと言うと、先端から食べていくと想定して、例えばこの「鳴門金時と黒糖クリームのタルト」はさつまいもと黒糖クリームで口の中がもったりしてきたところにクリームで食感を、その後にクルミを置くことで味わいを変化させているのです。そして最後に口に入れることになるタルト生地はクレープダンテル(薄焼きクッキー)を砕いて練りこみコーンフレークのような食感を加え、シナモンを味の余韻にしました。このシナモン、効果絶大です。

ケーキにのせるものはおいしくなければ!

「できたてのおいしさは変えがたいもの。実は味見がいちばんおいしいのです」と、食材はブランドにこだわらず、おいしいもの、新鮮なものであることを優先して仕入れているそう。

その食材をさらにおいしくするために気をつけているのが切り方だそう。柑橘類は輪切りにすれば面積も大きく見た目も派手ですが、いちばんおいしく食べられるのは房を切らずにそのままです。
フルーツは果肉が厚いほどジューシーに感じられるので、イチゴそのものの味やシルエットが感じられる切り方にこだわっています。外国産のブドウは上の方だけ切ったり、真ん中で切ったりとランダムにすることで味も変わるし食感が楽しくなります。「タルトの上にのっているものはおいしくなければ」と話します。
専門店のプライドにかけて、焼きたてのタルト生地で作る!

おいしいものを提供するという点ではタルト生地もしかり。こちらではその日に焼いた生地はその日に売り切って、保存はしないと決めています。
一般的に、ケーキには生地だけでもタルト、スポンジ、クッキー、サブレと焼くものがたくさんあります。そのため、多くの種類のケーキを扱うパティスリーでは、店によってはタルト生地のように日持ちするものは冷凍保存し、必要になったらドレッセ(フルーツなどを盛り付けること)だけして販売することも。しかしながら冷凍すると水分が抜けてしまいサクサク感と風味がまったくの別物となってしまうそう。

のせる食材とクリーム、トータルの味を考えてタルト生地を変えています。ベースは基本の「ブリゼ」「サブレ」「シュクレ」「フォンセ」の4種類。そこにココアやトマトペーストを加えたり、ホールの大きさによってタルト生地の占める割合が違ったりしてくるので、底や側面の厚さまで変えるこだわりよう。ここまでするから記憶に残るタルトが作れるのでしょう。

「私たちが目指すのは作りたての味を食べていただくことなのです。そのために食材はおいしい状態であることを見極めて使用し、生地はその日に売り切る分だけ焼きます。焼きたてのタルト生地に、おいしくしたフルーツをのせているのです」と五條さん。食材以外はすべてお店で手作りしています。

こんなに完璧なタルトを作っておきながら、「まだまだです。同じ粉や水を使っても気温や湿度、職人の体温や体調によって味も食感も変わってしまうのです」と語る五條さん。常に未完であり、日々反省し、究め続けるのだそう。見た目は同じでも来年、再来年と、きっとどんどんおいしくなっていくに違いない!
※価格はすべて税抜です。
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。
<店舗情報>
◆アム ストラム グラム
住所 : 東京都渋谷区恵比寿西1-16-8
TEL : 03-6416-5783
取材・文:高橋綾子
撮影:三好宣弘(RELATION)
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