“笑い話にならない実態”とは

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 新型コロナに感染し、病院をたらい回しにされた挙げ句、ひと月の入院を経て、8月末にようやく退院した54歳の男性Aさんが言う。「年寄りではないからと言って、コロナをナメちゃいけない。もう自由な生活はできないと諦めたほど、苦しかった」。そして、「あんな思いをするくらいなら、フィリピンパブには二度と行かない」と……。

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 Aさんに体調の変化が現れたのは7月末のことだった。

Aさん:朝起きたら、風邪っぽいので、熱を計ると39度ほどありました。1時間後に計ると今度は36度。人によるのでしょうけど、僕の場合はそれの繰り返しで、体温計が壊れているんじゃないかと思ったほどです。咳は出ませんでしたが、とにかく体がだるくて、筋肉痛もある。それで病院に電話すると、「熱があるなら来ないでくれ」と言われました。

“笑い話にならない実態”とは

 自力で病院に行くと、コロナの疑いありとしてPCR検査を受けることに。

Aさん:血液検査も炎症反応が出て、肺も白くなっていたので、普通なら肺炎で即入院となるそうです。コロナだったら保健所からの指示がどうのこうのと言われ、自宅に帰されました。すると、その日の夜に体調がさらに悪化。救急車を呼んで、別の病院に搬送されました。もう一度、検査のやり直しです。今度は抗原検査を受けて、陽性になったのですが、入院はできず、またもや自宅に帰されました。

たらい回し

 翌日、保健所の車で別の病院に搬送されて入院となった。だが、さらに病院を移ることに。

Aさん:1日半、入院しましたが、急激に悪化したので、そこから救急治療室がある病院に搬送されました。直ちに人工呼吸器が付けられ、1週間はそのまま。意識が朦朧とする中、親族を呼ぶ手配をされ、ECMO(人工心肺)使用の承諾書の説明などを受けました。当然の話ですが、呼吸ができないってことが、あれほど苦しいものだとは思いませんでした。

 コロナで重症化するのは60代、70代という報道が多いが……。

Aさん:50代半ばだって悪化する例もあるわけです。ECMOを付けるまでには至りませんでしたが、肺炎が悪化したために後遺症が残る恐れがあると言われました。この年齢で、鼻にチューブ入れて酸素ボンベを付けなきゃいけないのか、と悲しくなりました。

客はフィリピンパブを渡り歩く

 8月末に退院したAさん、幸いにも後遺症はないという。そもそもどこで感染したのだろうか。

Aさん:フィリピンパブとしか考えられないんですよ。僕が行ったのは上野の有名店ですが、ちょうどその頃、お店では「竹の塚の客が来ていた」という噂が流れていました。

 東京都足立区の竹の塚は、フィリピンパブが軒を連ね、“リトル・マニラ”とも呼ばれる。7月20日、足立区は竹の塚のフィリピンパブ2店舗で従業員と客計22人が新型コロナウイルスに感染したと公表した。その後、別の2店舗でもクラスターの発生が確認され、従業員の家族を含め100人以上の感染が確認されている。

Aさん:退院してから知ったのですが、結局、上野の店で従業員など少なくとも6人が感染していたそうです。

 店では感染防止対策は取られていたのだろうか。

Aさん:都の虹色ステッカー(感染防止徹底宣言ステッカー)が張ってあったかは覚えていませんが、店に入ると、体温も測られるし、アルコール消毒もしていました。ドアも開け放して、サーキュレーターも回していた。

 一見、ちゃんと対策は講じられていたようだが……。

Aさん:結局は何の役にも立ちませんよ。酒を飲むわけですから、女の子も客もマスクなどしていない。キスだって平気な子もいるわけだから、三密どころの話じゃありません。寮で暮らす従業員も多い。そんな中に1人でも感染者がいれば、感染は拡がるし、僕のように重症化することだってあり得るわけです。フィリピンパブにクラスターが多いのはそのためですよ。

 8月以降も、市原市(千葉県)のフィリピンパブで従業員11名、店舗外で私的に会っていた50代男性も感染していたことが分かった。

 亀有(東京葛飾区)のフィリピンパブでも従業員や客23人の感染が発表されている。

 また、江戸川区のフィリピンパブでは、客と従業員8人の感染が確認されたことから、都の職員が店を訪れ、“虹色ステッカー”を撤去した。しかし、その後、「感染対策が十分だった」として返却している。

Aさん:フィリピンパブが好きな客は、1つのお店だけに行くわけではないんです。ハシゴをする客もいる。それこそ、竹の塚の店がコロナで一時閉店してしまったから、上野に行ってみようという客だっています。フィリピンパブ好きは、ぐるぐる渡り歩いているわけです。あの子が可愛いとなれば、“場内”(指名)だってあるし、その子に近づきたいから行くわけですよ。もちろん、それを待っている女の子もいるわけです。コロナ禍で、三密を避けるのが当たり前ですけど、そうした感覚のない客が多いのがフィリピンパブなんです。店によって客層は異なるとはいえ、下心は大差ないでしょう。

 キャバクラやホストクラブも同様だが、

Aさん:それらよりも濃厚接触しやすいのが、フィリピンパブです。そして問題は、従業員に感染者が出ても、口封じさせる店があること。実は、私が行った店も2週間程度、自主閉店して、しれっと再開していました。それを僕は後から知りました。あの苦しさを思い出すと、フィリピンパブにはもう行きません。

週刊新潮WEB取材班

2020年9月17日 掲載