市川市のドコモショップ前で山岡さん(左)を出迎えたドコモ幹部。山岡さんの表情は疲れきっていた

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謝罪をめぐって右往左往 社内モラルの低下もここに極まった

市川市のドコモショップ前で山岡さん(左)を出迎えたドコモ幹部。山岡さんの表情は疲れきっていた

 1月8日、ツイッターに投稿された一枚のメモを巡り、大手携帯キャリア会社「NTTドコモ」が大炎上している。

 下に掲載したのが、問題となっているそのメモ。何とドコモは、客のことを「クソ野郎」とメモに書き、しかもそれを誤って手渡していたのだ。

 メモを受け取った当事者である山岡正昭さん(仮名)が経緯を振り返る。

「1月6日の午後、スマホの機種変更のため、千葉県市川市のドコモショップの窓口で相談していたときのことです。新しい料金プランの説明を受ける際に店員から見せられた資料をパラパラめくっていると、例のメモが目に入りました」

 メモには、親名義で携帯料金を支払っている山岡さんを「親のスネかじり」と決めつけて罵倒し、有料オプションを勧める内容が書かれていた。店舗内で山岡さんの「お客様情報」を見たスタッフが、窓口担当に指示を出すために書いたものだったという。メモに気付いた山岡さんは、すぐに責任者を呼ぶよう要請した。

「出てきたのは30代前半ほどの色白でひょろっとした男性社員。『店舗責任者』を名乗っていましたが、ヘラヘラしていて誠心誠意謝罪しているようには見えませんでした。こんな人と話しても意味がないと思い、ドコモ本部に電話させてもらうよう頼みました。しかし、彼が繋いでくれたコールセンターからは『指導不足で大変失礼しました』みたいな言葉で謝罪されただけ。納得はいきませんでしたが、時間もなかったのでその場ではそれ以上追及しませんでした」

 その後、2日経ってもドコモ側からは何の音沙汰もなかった。どうにも気持ちがおさまらなかった山岡さんは、知人に頼んで出来事の顛末をツイッターで拡散。またたく間に炎上すると、ようやくドコモ側から謝罪の申し入れがあったという。

 12日、山岡さんはドコモショップを訪れ、ドコモ千葉支店長やドコモショップを運営する兼松コミュニケーションズの首都圏支店長らの謝罪を受けた。しかしその場に、メモを書いた「店舗責任者」の姿はなかった。

「本人から直接謝罪してほしいと伝えていたのですが、その場になって本人は同席できないと言われ、愕然としました。電話で彼と話しましたが、『6日当日に解決したと思い、本部に報告しなかった』などと言い訳を重ねるばかりで、納得はできていませんね……」(山岡さん)

 誤って渡す以前に、客を侮辱するメモを書いていたこと自体が大問題だが、いったいなぜ大企業ドコモでこんなことが起きてしまったのか。兼松コミュニケーションズの担当者はこう回答した。

「社内モラルの低下が原因だと考えています。お客様のご契約があって会社が成り立っているという感謝の気持ちがしっかりと根付いていれば、あんな言葉は出てこないと思います」

 企業の労働問題に詳しい人事コンサルタントの新田龍(りょう)氏は言う。

「全国に販売・サポート網を築くため、携帯キャリア各社は人件費を安く抑えられる代理店を活用する傾向にあります。当然、代理店に丸投げするのではなく、キャリア会社が独自のショップスタッフ教育プログラムを用意し、接客スキルの向上に努めている。しかし、基礎能力やモラルには教育の限界があります。雇用条件の良い代理店が能力の高いスタッフを雇う一方、たとえば給料の安い代理店にはレベルの低いスタッフしか集まらない。結果、今回問題を起こしたようなドコモショップが生まれるのです」

 とにかく人件費を安く抑えて商品を売りつけたい。そんな「ホンネ」を隠して「タテマエ」で商売をする限り、同じような問題は起き続けるだろう。

山岡さんはドコモショップ裏口から店内に招き入れられた。その後、ドコモからの謝罪は1時間にも及んだ

ツイッターで拡散されて大炎上したメモ。本来、客には見せないヒアリングシートに走り書きされていた

PHOTO:濱粼慎治