ごみの持ち去りは違法?

写真拡大

 引っ越しシーズンや災害後を中心に、ごみ捨て場に家具や家電などが捨てられているのを見かけることがありますが、中には、マニアがうらやむ高価なおもちゃがきれいな状態で捨てられていることもあります。思わず、自分の物にしたくなる人もいるかもしれませんが、ごみ捨て場から物を持ち去ると罪に問われてしまうのでしょうか。グラディアトル法律事務所の井上圭章弁護士に聞きました。

「持ち去り厳禁」とあれば条例違反も

Q.そもそも、ごみ捨て場に置いてある物を持ち去ると、罪に問われるのでしょうか。

井上さん「窃盗罪や住居侵入等罪、または条例違反に問われる可能性があります。

一般に、ごみ捨て場に置いてある物は持ち主が捨てたもの(所有権を放棄したもの)なので、それを持ち帰ったとしても窃盗罪に問われることはないでしょう。しかし、例えば、『ごみ捨て場に置いてある物の所有権を市区町村が取得する』旨の条例を定めている場合は、市区町村が持ち主となり、市区町村の持ち物を盗んだということになって、窃盗罪に問われる可能性があります。

また、ごみ捨て場がマンションの敷地内にある場合など、その住人しか入ることのできない場所に入ってごみを持ち帰ることは、住居侵入等罪に問われる可能性があります。さらに、条例によって、ごみ捨て場に置いてある物の持ち去り等を禁止している場合、持ち去り行為が条例違反に問われる可能性があります。

ごみ捨て場に『無断持ち去り厳禁』などの張り紙があったり、粗大ごみの処理券に同様のことが書いてあったりすることがありますが、これは、ごみ捨て場に置いてある物の持ち去りが条例に違反するものであることを明確にしたものです」

Q.「燃えるごみ」「燃えないごみ」といった一般ごみではなく、缶や瓶、段ボールなどの資源ごみの場合は特に、持ち去りが問題になることが多いようです。

井上さん「資源ごみも一般ごみと同様、条例で市区町村の所有物と定められている場合、窃盗罪に当たる可能性があります。また、資源ごみを持ち去るためにマンションなどの敷地内に入る行為は、先述したように住居侵入等罪に当たる可能性がありますし、条例で資源ごみの持ち去りが禁止されている場合、条例違反に当たる可能性があります」

Q.ごみを持ち去る行為が罪に問われた場合の量刑は。

井上さん「窃盗罪の場合、10年以下の懲役または50万円以下の罰金、住居侵入等罪の場合、3年以下の懲役または10万円以下の罰金がそれぞれ科されます。条例違反については例えば、東京都世田谷区では、持ち去り行為の禁止命令に従わなかった場合、20万円以下の罰金を科し、持ち去り行為の常習者には50万円以下の罰金を科すと定められています」

Q.過去に、ごみを持ち去って罰せられた事例はあるのでしょうか。

井上さん「例えば、世田谷区内において、古紙約4キログラムを持ち去った行為が世田谷区清掃・リサイクル条例に違反するとして、罰金20万円の有罪判決が言い渡された事例があります。2017年度の環境省『資源ごみの持ち去りに関する調査』報告書によると、資源ごみの持ち去りに対し、『罰金、科料、過料』の罰則を適用した自治体が34あったようです」