年末の大本命「新型ハスラー」はホンダN-BOXの牙城を崩せるか ついにスズキの猛追撃が始まる…

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前回より開催日の2日延長、高校生以下無料などの施策が功を奏し、結果としては100万人という目標を大幅に超えた130万900人の総来場者となった「第46回東京モーターショー2019」。単純にコンセプトカーや新型車を展示させるだけでなく、未来におけるモビリティの提案なども評価された結果であることは間違い無い。それでも来場者の多くのお目当ては「遠くない時期に発表されるニューモデル」であることは正しい感覚だろう。

その中でも特に筆者が注目していたのが、スズキの「ハスラー コンセプト」である。

東京モーターショー2019で初お披露目となった「ハスラー コンセプト」(C)スズキメディアサイト

正直に言えばもはやこれは「コンセプト」出展ではなく、発売直前のモデルであることは筆者だけではなく、来場者も感じていたことはずだ。

その前に現在販売されているハスラーというクルマについてもおさらいしておく必要がある。

スズキもビックリのスマッシュヒット

現行型のハスラーが発表されたのは2013年12月24日のクリスマスイブ(発売は翌年1月8日)。スズキは例年、年末の慌ただしい時期に新型車を発表するのがもはや定番(?)になっており、2018年も12月20日に「スペーシアギア」、2017年に至っては12月14日に「スペーシア/スペーシアカスタム」、12月25日には「クロスビー」を発表、これら3モデルは同日に発売を開始している。

別にスズキが特別というわけではないが、それでも同社は年始の“初売り”を重視している。スタートダッシュが重要であることはもちろんだが、年内に発表・発売を行い、冬休みの間にじっくり購入を検討、新年明けに契約を結ぶのがひとつのパターンなのだろう。広告関係者に話を聞いても、ここ数年では「ももいろクローバーZ」をCM等に起用し、集中的にオンエアすることでフェアの認知度も高い。

少々話は脱線してしまったが、ハスラーの発売当初の月間販売台数目標は5000台と意外と控え目であったことを記憶している。昨今では当たり前に販売されているいくつかのジャンルの商品を融合させた「クロスオーバー」車ではあるが、スズキとしても全く未知の分野(それでも過去には「kei」というユニークなモデルも存在していた)への挑戦であったが、蓋を開けてビックリ、生産が追いつかないほどのヒットを生み出した。

当時販売担当の役員から話を聞いたところによればこのクルマが売れることを予想していたのは鈴木修会長兼社長(当時)で、生産と販売の読み違いをしたことに対して叱責を受けた、という話は業界関係であれば結構有名な話である。

その後ハスラーの販売は堅調。2014年には「グッドデザイン賞」や「オートカラーアウォード2015」なども受賞することで評価もうなぎ登り、マイナーチェンジ時には先進安全装備の充実、また同社が得意とする商戦期周辺に投入する極めて買い得感の高い「特別仕様車」も販売を牽引したことは間違い無いだろう。

このハスラーのヒットを受けて、ライバル各社は前述した新ジャンルの軽自動車を投入するが、なかなかヒットに結びつかなかった。それだけハスラーのコンセプトやデザインにブレがなかった証明とも言える。

似て非なる新旧のヴィジュアル

東京モーターショー2019で展示されたハスラー コンセプトだが、冒頭に述べたように発表は例年からの流れを踏襲するとすれば年内(12月中旬以降)は確実だろう。

(C)スズキメディアサイト

実際ショーではドアを開け、乗り込むことも可能な車両が数台展示されていた。ここがスズキのユニークな部分でもあるが、コンセプトカーと称する場合、車両は高めの舞台に置かれ、ドアもロックされ、人が触れることができないのが普通なのである。

過去にも「アルトワークス」が発売前に舞台では無く、会場内にさりげなく置かれ(ベース車のアルト自体が既存車種であったことも理由)、ライバル他社のエンジニアが驚いていたこともあった。

まず軽自動車にはボディサイズの上限がある。それゆえにデザインの難しさは登録車の比ではないのかもしれないが、周りにいた来場者の意見は大きく分かれていた。「あまり変わらないね」「何か立派になった」など様々である。

確かにハスラーのアイコンのひとつである丸目の大型ヘッドライトや最低地上高を上げたパッケージングなどは人によっては「キープコンセプト」と捉えがちかもしれない。しかし筆者的には「似て非なる物」「ネクストステージへの大きな進化」であると感じている。

現行型にはない「リアクォーターウインドウ」を採用(C)スズキメディアサイト

エクステリア上の特徴はサイドに回ると顕著である。ルーフを約120mm延長することで現行型にはない「リアクォーターウインドウ」を採用した6ライトキャビンとしていること。デザイン上の差別化はもちろんだが、車両後端にウインドウが設定されることで後方視界の向上など実用上のメリットもある。

また現行型ハスラーはルーフを色分けするいわゆる「2トーンカラー」が人気であったが、コンセプトではルーフカラーを前述したクォーターウインドウまで回り込ませる手法を取っている。ちょうど真横から見るとボディカラーによってはリアドアのすぐ後ろからが独立したハードトップや幌を装着したようなイメージにも見えてくる。この手法自体は現在販売されている「スペーシア」でも使われているが、このデザインが生きるようピラー自体をボディと同色化することで力強さも両立させている。

まるで“G-SHOCK”?なインテリア

エクステリア以上にインパクトのあるのがインテリア、特にインストルメントパネルの造形だろう。現行型もボディカラーに準じたパネルを設定するなど、アルファロメオなどのイタリア車などでも使われていたポップなデザインが評価されていたが、ハスラーコンセプトはドアを開けると目に飛び込んでくるのが3つの大きなフレームである。

最初はカシオのG-SHOCKを連想したが、考え方としてはシンプルで右側に“メーター系”、真ん中はナビなどの“情報系”、左側はボックスなどの“機能系”を独立させ、その周辺をフレームで囲っている。スズキの説明員によれば、独立と言ってもインパネの上下に黒のバーを通し、これらを挟み込むような造形としてタフさも演出しているとのこと。

特に会場にあったバーミリオンオレンジと呼ばれるボディカラーの場合、フレーム自体も同色化されることで視覚的なインパクトも十分ある。それでも重箱の隅をつつくわけではないが、エアコンパネルやステアリングなどは現行のスズキ車で採用されている部品のキャリーオーバー。こういう部分でコストダウンを行っている点は相変わらずスズキの巧みさを感じさせる。

やっと巡ってきたタイミング

室内に関してはホイールベースが30mm拡大されていることで元々広かった室内空間にはさらに余裕が生まれることは間違いない。

車内はより収納性の高い広々した空間に(C)スズキメディアサイト

今回ハスラーコンセプトに注目した理由はクルマの「モデルチェンジサイクル」にある。全てではないが、クルマは概ね4〜5年でモデルチェンジを行う。順当にハスラーが12月にフルモデルチェンジを行えばやはり5年になる。

CASEやMaaSに代表される自動車産業の変革期と呼ばれる昨今を見ても、モビリティの新しいあり方と同時にADASに代表される先進安全装備の進化は極めて早い。1年前の最新技術が翌年には普通、であることも珍しくはない。

ハスラーの場合、現行型の発売が2013年12月ということで先進安全装備に関しても現在の技術と比較したらその差は歴然だ。2015年12月の一部改良では衝突被害軽減ブレーキを従来の「レーダーブレーキサポート」からステレオカメラを活用した「デュアルカメラブレーキサポート」に換装することで安全性を大きく高めているが、他社の最新モデルはその上を行っている。

要は進化の早いADAS領域ひとつを取っても現行ハスラーはモデルサイクル的にも古くなってしまっている。こればかりはどうしようもないが、ハスラーコンセプトからはそこからの脱却ならぬライバルと肩を並べるレベルまで進化させてくることが発表されている。

基本的な考えは前述したステレオカメラを活用するが、制御自体を根本的に見直すことで「夜間時における歩行者検知機能」またターボ車限定のようだが、前々から要望の高かったACC(アダプティブクルーズコントロール)もスズキの軽自動車として初採用する。さらにこのACC、車速ゼロまでの制御を可能とする「全車速対応」型である点も登録車であるスイフトより性能が上、但しパーキングブレーキはEPB(電動パーキングブレーキ)ではなく、従来と同じフット式を採用するので、停止後の車両保持は数秒で解除されるタイプになるだろう。

(C)スズキメディアサイト

またシステムの進化により、ACC作動時には車線を逸脱した際の抑制機能(車線内に車両を戻す支援を行う)も搭載する。

この他にもスペーシアなどには搭載済みの「後退時ブレーキサポート」などの実用性の高い機能も搭載されてくるはずだ。

ヒットは間違いなし、しかし…

この他にも同社が得意とする環境性能(燃費向上)技術である「Sエネチャージ」をブラッシュアップしたマイルドハイブリッドは全グレードに適応されるはずだ。

価格に関しても軽自動車という特性上、早々大幅な値上げは考えにくい。特にスズキのユーザーは価格にかなり敏感、性能等を大幅に向上させつつ車両本体価格は5万円強で抑えてくるはず。その点でも現行モデル以上にコストパフォーマンスに優れ、ヒットは間違いないだろう。

クルマ自体としての完成度の高さなど期待が持てるハスラーコンセプトだが、他社も手をこまねいているわけではない。ジャンルこそ異なれど、日本の軽自動車市場には「ホンダ N-BOX」という登録車も含め一番売れているオバケ商品がある。

もちろんスズキにもスペーシアがあり、販売も2019年の上半期で4位に位置するなど好調を維持しているが、なかなかこの牙城を崩すのは容易ではない。それでもモデル末期でも軽自動車の販売ベスト10をキープしたハスラーは紛れもないヒット商品だ。2020年は創立100周年を迎えるスズキだが、“コンセプト”の名前が取れた時、ハスラーの猛追随が始まると期待しているのである。