フランクフルトではご長寿モデルが今も現役で走っている

 フランクフルト市内を歩いていると、かなり“ご長寿”なモデルが現役で走っているのを見かけることが多い。5〜6年前には当時の新車でもクリーンディーゼルが当たり前だというのに、街を走るクルマが古いディーゼル車が多いので、歩いているとディーゼル車の出す排気ガスの臭いがきつかったのをいまでも覚えている。

 さすがにいまは排気ガスの臭いは目立たたないものの、ゴルフIIIはよく見かけるし、初代フォード・フォーカスや、初代オペル・ヴィータ、W124型のメルセデスベンツEクラスなど数え上げたらキリがないぐらい、筆者としては“少し懐かしい”クルマが走っていた。

 そして日本車も当然ながらというのも変なのであるが、日本でもあまり見かけなくなりつつある、“ちょっと古い”モデルが元気に走り回っていたのには驚かされた。そんな1台がトヨタ・ファンカーゴである。欧州では“ヤリス・ヴァーソ”の車名で販売されていたが、これを結構な頻度で見かけたので、当時ドイツ人のツボに見事にハマってよく売れていたこともあり、いまも多く生き残っているようである。少々日本車離れした独特のキャラクターは確かに欧州車の臭いを強く感じたが、事実ドイツ以外でも欧州では人気が高かったようである。

 ファンカーゴほどではないが数回見かけたのが、日産マーチ。欧州ではマイクラの車名で販売されていたが、“まさか”と思ったほどの運命的なめぐりあいである。日産が初代を発売する時に車名を一般公募し、筆者も応募(マーチではなかった)したのが中学生の時、さすがにそのころのではなく、初代の最終型に近いモデルのようだが大切に乗っているようであった。

実用性の高い日本車が今でも大切に乗られている

 マツダ・デミオの2代目もよく見かけた、ちょっと古い日本車の1台。いまのマツダとは違った意味で、実用性を重んじ道具に徹した“出来の良さ”が初代から評価の高かったデミオは2代目でさらにそれに磨きがかかっていた。実直なクルマづくりが好まれて、長い間使われているのかもしれない。

 学生の時に、サンバー・トライをベースにして1リッターエンジンを搭載した“ドミンゴ”というクルマがドイツ人の間で人気となっているという記事を読んだことがある。コンパクトボディなのに7名乗れる実用性の高さが評価されたと確か書いてあったのを覚えている。

 いまどきの日本車では何が目立つかといえば、日本ではトヨタ・ヴィッツの車名で販売されているヤリスを多く見かけた。

 いま日本で販売されている日本車は数え方にもよるが、およそ200車種ほどになる。だが、そのなかで広く海外で販売されているモデルは少ない。また欧州市場は日本車が苦手とする市場ともされるが、逆に韓国ヒュンダイブランドは欧州に強いともいわれている。

 最近はハイブリッド車が欧州市場で注目されてはいるものの、カンパニーカー制度などの諸事情もあり、地元ドイツ車が有利な状況が目立っているなかでは、日本車は実力うんぬんのほかの理由もあり少数派となっている。

 そのような市場環境で長年愛されている日本車は、そのような環境のなかでもドイツ人ユーザーのハートをつかんだモデルにちがいないのかもしれない。