街の喫煙所で見かけるのが珍しくなくなった加熱式タバコ。年配のビジネスパーソンだけでなく、流行のファッションに身を包んだ若者が吸っている姿も珍しくない。

「IQOS(アイコス)」の名古屋限定発売が2014年、「Ploom TECH(プルーム・テック)」のテスト販売と「glo(グロー)」の仙台先行販売が16年と有名どころの加熱式タバコが世に出てからある程度の期間を経ている。

加熱式タバコといえば、それまで紙巻きタバコを嗜んでいた喫煙者が様々な理由で乗り換えたり、ときには併用したりするケースをよく聞く。

しかし、加熱式タバコがある程度普及した2019年――もしかしたら、喫煙を始めたときから加熱式タバコしか知らない若者がいてもおかしくない。

そこでJタウンネット編集部は街に繰り出し、「加熱式タバコしか吸ったことがない人」を探した。

まさかの結果に

このアイデアをJタウンネットのS編集長に提案すると、

「そんなやついるわけないじゃん。マジでゼロ人だと思うよ」

と思い切り反論されてしまった。

コンビニでも気軽にデバイスの購入が可能で、デザインの良さもアップデートされるたびに磨きがかかっている加熱式タバコ。

きっと、いてもおかしくはない――頑迷な編集長に負けては仕方ないとかつて野球少年だった筆者の闘争心に火が付いた。

100人以内で見つけることを条件に取材の許可を得た。

そして休日返上で向かったのは東京・渋谷と原宿だ。若者が集まるスポットの筆頭格に上げられるエリアだ。流行と共にあり、アバンギャルドな人たちも多いだろう。

生憎の雨であったが、街頭調査を開始。今回は20代の若者にターゲットを絞っていく。

まずは原宿に点在する小さな喫煙所を回っていく。この調査に対し気宇壮大であった筆者は、この段階で打ちのめされていった。声をかけるにも天候のせいか、それほど人数が多くないこともあり、調査は難航。イヤホンをつけている人も多く、声が届かない場面も目立った。

結局、この日は3時間ほど調査をしたが、加熱式タバコの愛用者に紙巻きタバコ未経験者はいなかった。


池袋駅東口の喫煙所

翌日、渋谷・原宿エリアからスピードを上げるために年齢と紙巻きタバコ経験のみに質問を絞った。

池袋でも相変わらず、空振りが続く。そろそろ協力してくれた加熱式タバコの利用者数が20人になろうとしている。

人数が増えていっても「紙巻きタバコを吸ったことがありますか?」との質問に「あります」との回答ばかりだ。


新宿駅東口の喫煙所

気を取り直して新宿駅付近に場所を変える。ここで奇跡が起こった。

東口の喫煙所が不発だったが、東南口高架下の喫煙スポットに移動したとき、

「紙巻きタバコ吸ったことありますか?」(筆者)
「いえ...」(Aさん)

加熱式タバコの利用者23人目でついに発見か。念のため3度ほど確認したが、Aさんは紙巻きタバコの喫煙経験はないとのこと。

半ばあきらめていただけについ喜んでしまった。

都内在住の26歳女性のAさん。どこか落ち着いた服装で、優しそうな雰囲気の女性だ。幸運なことに詳しい話も聞くことができた。


さすがに顔はNGだったため、下半身だけ。

プルーム・テックを愛用しているAさん。利用歴は1年足らずでそれほど長くない。きっかけを聞くと、

「大学時代のサークルとか元カレが喫煙者で興味はあった」

とのこと。さらに詳しく聞いた。

「興味はあっても普通の(紙巻きタバコ)だとヤニとか臭いが気になって。ライターを使うのも怖いし...」
「良いのがないか探したときに加熱式タバコにしようかなって。最初はアイコスにしようと思ったけど、高くて... 比較的安いし、初心者にも優しいイメージが持てたプルーム・テックがあったのでそっちを購入しました。確か通販で買ったような...」

かなり情報を細かく収集した上で判断をしたようだ。

今後、紙巻きタバコを吸う予定はないというAさん。再度、加熱式タバコの魅力について、

「紙巻きタバコより吸っているシルエットの柄が悪くない。見た目って気を遣いたいし、スマートに見えるのはこっち(加熱式タバコ)」

とコメントした。

23人目にしてついに発見。探してみれば、いるものだ。この結果を編集長にさっそく電話で伝えると「いたの!?」と驚いた様子だ。

今後、加熱式タバコの利用者が増えるはず。そうなれば当然、Aさんのように紙巻きタバコ未経験者ももっと増えるはずだ。

Jタウンネット編集部の見解としては19年6月現在、「加熱式タバコの利用者23人に1人は、紙巻きタバコ未経験」とさせてほしい。

さすがに2人目を探す気力は筆者になかった。