【独白】井上尚弥、適正階級はスーパーバンタム!? 大橋会長が描く将来像「37歳まで現役なら」
大橋会長直撃インタビュー/「モンスターの育て方最終回」
ボクシング日本最速3階級制覇王者の井上尚弥(大橋)が出場するバンタム級の賞金トーナメント、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)。井上は1回戦(10月7日・横浜アリーナ)で元WBA世界スーパー王者のフアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)と対戦する。
デビューから16連勝(14KO)という圧倒的な強さで快進撃を続ける井上。対戦相手のマッチメークという重要な役どころを演じているのが元WBC、WBA世界ミニマム級王者・大橋秀行会長だ。大橋会長は類まれな才能を有する“怪物”をいかに“モンスター”に育てたのか。「THE ANSWER」ではインタビューを行い、その秘密を「モンスターの育て方」と題し、4回に分けてお届けする。
最終回は今やすっかり定着した“モンスター”の愛称について。名付け親の大橋会長によると、そのルーツは意外にも“平成の怪物”だった。また井上の本来の適正階級や、今大会で最大の強敵と認める選手についても語ってもらった。
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──前回の負けて強くなる、試合を怖いと思うことは恥ずかしいことではない─―。大橋会長の考えがよく分かりました。とはいえ、井上選手に関しては、いまのところ負ける姿はまったく想像できませんね。
「井上尚弥というボクサーは、私が中学生のときに思い描いた理想を実現しているんです。高校1年でインターハイ優勝して、3年で全日本選手権に優勝。国際大会でメダルも獲って、プロに入って最速で世界チャンピオンになり、これまた最速で2階級制覇、3階級制覇した。中学生のときに夢に描いた漫画のような世界です。それを尚弥は現実にしている。本当にすごいですよ」
──いったいいつまで負けないと思いますか?
「人間だから尚弥だっていつかは負けます。それで終わりじゃないというのは他のボクサーと同じです。ただ、リカルド・ロペスはプロでもアマでも負けないで引退しました。尚弥にもその可能性はあるのかな……。彼はストイックだし、ほぼ打たれてないですからね。37歳まで現役をやると言ってますけど、どうなるかは分からないですね」
“怪物”の名付け親が語る由来「松坂選手のニックネームが好きで」
──井上選手の適正階級はどのあたりだと考えていますか?
「う〜ん、スーパー・バンタム級くらいですかね。37歳まで現役を続けるなら、あと12年……。真面目ですしね。この前も試合が終わって1週間後にはスパーリングしてましたからね。いろいろな選手を見てきましたけど、飛び抜けてますよね。自信もすごい。強がっているだけの選手って、そばにいれば分かるんですよ。でも尚弥はそうじゃない。一緒にいて疲れないというのも特徴かもしれないですね。悲壮感が漂ってしまう選手もいるんですけど、そういうのもないですしね」
──やはり怪物……そもそもの話になりますけど“怪物”というニックネームをつけたのは大橋会長ですか?
「そうです」
──大橋会長は85年のプロデビュー当時、“150年に一人の天才”というキャッチフレーズがついていました。
「あれは米倉健司会長がつけました」
──やはりわかりやすいニックネームはあったほうがいい?
「自分は横浜高校出身で、甲子園で活躍した横浜高校の後輩、松坂大輔選手の“怪物”というニックネームがすごく好きだったんです。自分のところの選手にもいつかつけられたらいいなと思っていました。そこに尚弥が現れたんです。デビュー戦のときに怪物で、いずれ米国に行くときにモンスターに変わる、というのが当初の考えでした」
──いまや海外のメディアはみんな“モンスター”という表現を使いますから、思い描いた通りになったということですね。それにしても最初はちょっと大げさというか、恥ずかしいという感覚もあったと思います。
「自分はないですけど、みんなにはそう言われましたね。尚弥も『怪物ってどういう意味なのか分かりません』って、なんだかちょっと不満そうで(笑)。でもこうして定着しましたからね。良かったです。個人的にはナルバエスに勝ったとき、怪物からモンスターに進化したと思いました。尚弥もマクドネル戦の直後『モンスターらしさは出せたかなと思います』とか言ってましたからね。いまは受け入れているのだと思います」
WBSSの最大の強敵はIBF王者「井岡一翔みたいな感じ」
──10月に開幕するWBSSはバンタム級の世界チャンピオンが4人出場する、ボクシング版ワールドカップです。モンスターの活躍が楽しみですね。
「本当に楽しみです。このトーナメントに出場するというのは、日本のボクシングファンの夢を背負っていると思うし、これがボクシングを超えてボクシングに興味のない人たちにも広がっていけばいいと思いますね。いい流れができています。マクドネルに勝って3階級制覇して、そのあと普通に防衛戦だったら、いまひとつ盛り上がらないと思うんですよね。こういう大会があって本当に良かったですよ」
──マッチメークも楽になります。
「本当にそう。決勝まで行くなら、これから3試合はマッチメークのこと考えなくていいと思うと私自身は楽になります」
──誰が強敵になりそうですか?
「みんなそれぞれ強いと思いますけど、IBF王者のエマヌエル・ロドリゲスが一番強そうな気がしますね。すごくシャープで、井岡一翔みたいな感じです。自分は井岡の評価ってすごく高いんですよ。ロマゴンよりも井岡というくらいで」
──ほかにも5階級制覇のノニト・ドネアや、1回11秒という世界戦の最短KO記録を持つWBO王者のゾラニ・テテも出場しています。いまからワクワクしてきますね。
「ファンの方はもちろんですけど、一番ワクワクしているのは自分なんじゃないかと思ってます。これに優勝すれば、その先にはスーパー・バンタム級で同じようなトーナメントが開催されるかもしれないし、本当にフィリピンから米国に進出して世界的スターになったマニー・パッキャオみたいになる可能性もあると思っています。いや、本当に楽しみですよ(笑)」(終わり)(渋谷 淳 / Jun Shibuya)
