東京に“ネブミ男”と呼ばれる男がいる。

女性を見る目が厳しく、値踏みすることに長けた“ネブミ男”。

ハイスペックゆえに値踏みしすぎて婚期を逃したネブミ男・龍平は、恋愛相談の相手としてはもってこい。

相手を値踏みするのは女だけではない。男だって当然、女を値踏みしているのだ。

そこで値踏みのプロ・龍平に、男の値踏みポイントを解説してもらおう。

これまでに、姫気質な「ワタシ姫」春菜や、ぬり化け女子の絵美里や自称サバサバ系の鯖女子・麻里子や、円満大王の由香子を見てきた。

今週、彼の元にやってきたのは...?




「龍平さんの周りに、誰かいい人残っていませんか?」

北京ダックを食べながら、桃香はぷくっと頬っぺたを膨らませている。

「気が付けば、周りの良い男たちは皆売れちゃっていて...残っているのはバツイチか年下か、それかアラフォー以上の変わった男ばかりで」

ー僕も一応、34歳でまだ独身ですが...。

そう言いたい気持ちをグッと抑え、桃香の話の続きを聞く。

「龍平さんも薄々気がついているとは思うんですよね。妙齢を過ぎても独身でいる男たちには、どこか欠点があるってことに」

何も反論できず、パリパリとした食感の北京ダックを噛み締める。

龍平自身も、分かっている。

ひねくれでこじらせ男で、もうすぐ35歳。前みたいに食事会へ行けば無条件でモテることも少なくなってきた。

しかし桃香の発言を聞いていくうちに、桃香だけではなく龍平自身が結婚できない決定的な理由も見えてきたのだ。


良い男はどこ!?条件で男を探し求める女の末路は


とにかく“良い男は皆成約済み”と言う女


「でも桃香ちゃんの周りって、良い人いっぱいいそうだけど?」

桃香は六本木にある外資系メーカーで秘書をしており、顔が広い。

桃香とは、知り合いの経営者から誘われた食事会で初めて会った。その食事会を主催していたのが桃香だったのだ。

「良い人はたくさんいるんですけど...“条件に合う”人がいないんです。良い男は皆成約済みだし」

その時の食事会にいたのは、かなり有名な経営者陣だった。

普通に生きていると知り合えないような人たちとも、すぐに繋がる桃香。その人脈を活かせば結婚なんてすぐにできそうな気もするが、どうやらそうでもないらしい。

「毎週食事会もしているし、せっせと色々なイベントとかには顔を出すようにしているんですが、いい出会いがなくて」

-ここにもいたか、婚活モンスターが...

龍平は次に運ばれてきた熱々の麻婆豆腐を食べながら、小さくため息をついた。




「桃香ちゃんの言う良い男って、どんな人なの?」

さっきから桃香の口からは、“良い男がいない”とか、“条件”などと言うワードが出てきている。

「私、全然理想は高くないんですよ!人並みに仕事ができて、普通に優しい人であればいいなぁと」

本人に自覚はないのだろうか。自分が言う“人並み”が、世の中の人が考える一般的な価値観ではないということを。

「そうなんだ。でもそれって、たくさんの男性に当てはまるでしょ?もうちょっと具体的にないの?」

それなりの覚悟はしていた。

しかし、この質問を機に、桃香の口からは決壊したダムのように次から次へと条件が放出し始めたのだ。

そして、ハイスぺ男のDNAを求めて彷徨う吸血鬼・ハイスぺ男キラーの牙がニョキっと生えてきた。


良い男はどこにいるの?条件を求めて彷徨う婚活モンスターたち


見過ぎた悲劇。“普通”の人を求めて今日も彷徨う


「た、例えば?」

「至って普通のことですよ。例えば浮気をしなくて誠実で。あとは東京で最低限の暮らしができる年収があって、できれば家柄もしっかりしているくらいですかねぇ。あと、長男じゃないとか?海外経験もあれば尚良しですが...」

それは、全く“普通”ではない。

「あと、欲を言うなら子供が生まれた時にちゃんとお受験ができるよう、ある程度の学歴と社会的ステータスがある人がいいかなあ」

東京で最低限の暮らしと言いながら、桃香が求める理想の暮らしはきっと年収2,000万以上ないと実現できない。

ちなみに、年収3,000万以上の人は人口の約0.2%とも言われている。その上優しくて浮気もしない人となると、更に険しい道のりとなるだろう。

「でもせっかく結婚するなら妥協はしたくないんです。良い遺伝子が欲しいって思うのは、女の本能ですから」

「良い遺伝子、ねぇ...」

「男性だって、綺麗な人が好きですよね?それと同じことですよ。女性だって結婚して将来子供を産むことを考えると、良いDNAが欲しいんです」

彼女が言う“良い男”とは、間違いなく希少なハイスペ男である。

-将来産まれてくる子供のことを既に考えながら、世に生息数の少ないハイスペ男の血を求めているなんて...

龍平には、桃香が吸血鬼以外の何者にも見えなくなってきた。




以前出現した、結婚願望が強すぎて結婚したいオーラと気迫が溢れている婚活モンスターとは一味違う。

桃香の場合もっとこじらせているのが、条件が厳しい上に、理想が鬼のように高い。その獲物を狙う眼差しを浴びれば、大抵の男は怯んでしまうだろう。

「もっと、単純に好きとかそういう思いで動けばいいのに...」

素朴な疑問を桃香にぶつけてみる。

そんなに条件ばかり言っていると、一生結婚はできないだろう。

世の中に、完璧な人なんていない。皆何かしらの欠点があり、それがその人の個性になっていくのに。

しかし、龍平は思わぬ反撃にあってしまった。

「龍平さんだって、人のこと言えないですよ!可愛くて綺麗で優しくて、且つ家庭的で自立していてSNSをやっていない子なんて滅多にいないですから」

-うっ……。

何も反論できず、龍平は下を向く。

今まで散々可愛い子たちを見てきた。だが、龍平のまわりに生息しているような可愛い子は、みんな派手すぎた。だから今は家庭的で優しい子がいいと思っている。

しかし、容姿と中身のバランスがとれた女性というのは、なかなかいない。

多くの女性に会って比較対象が増えるほど、「ないもの探し」をしてしまうのだ。

結局のところ、自分の理想とするような人なんて、全人口の統計でみると0.1%以下なのかもしれない。

「見過ぎた悲劇ですね」

桃香の言葉に、龍平はただ黙って頷くことしかできなかった。

目の前では、熱々の麻婆豆腐がグツグツと音を立てていた。

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