ハマりすぎご用心! ゆる〜く歴史が“体験できる”関ケ原ウォーランドに夢中
この夏、遊びに行く所をまだ決めていないなら、関ケ原はいかが? 岐阜県が4億5千万円を投じて観光推進を図るプロジェクトの核として選んだ地でもあり、NHK大河ドラマ「真田丸」にハマった人からも人気が高い。しかし、「このまち、“まるごと古戦場”」というキャッチコピーを掲げるだけに、小早川秀秋が布陣した松尾山や徳川家康が最初に陣を構えた桃配山、そして大谷吉継や福島正則、島津義弘の陣跡など山の中から平地まで合戦の陣跡が広域に点在する。そんなに動き回るのはキツイし、時間もないという方にうってつけなのが「関ケ原ウォーランド」。歴史マニアでなくても、夢中になってしまう“おそろしい”場所なのだ!!

コンクリート像と楽しむ摩訶不思議な“体験型”資料館
「関ケ原ウォーランド」は、関ヶ原の戦いをコンクリート像で再現した資料館。約1万坪の敷地に200体以上の像があり、合戦当日の様子を再現している。また、コンクリート像がある屋外展示場のほかに、甲冑や兜、陣羽織、具足などが並ぶ屋内展示場もあり、見どころ満載。

高い壁で仕切られた関ケ原ウォーランド。この奥にどんな世界が待っているのか、期待が高まる。入館料は大人500円、中学生未満の小人300円

屋内の資料館には、関ヶ原の戦いの際に井伊直政の軍団や浅野幸長が着用していたと言われる甲冑も展示されている
鎧や兜などの展示物も気になるが、筆者のココロはコンクリート像のことでいっぱい。なぜなら、像をただ眺めるだけでなく、触れあったり、ものによっては乗ることもできるのだ。これだけでもテンションが高まるが、なんと甲冑を着て屋外展示場を回ることも可能(料金:大人2,000円、中学生未満の小人1,000円)。さっそく、甲冑を付けて“合戦”へ、いざ出陣!

チープなものを想像していたら、本格的な甲冑がズラリ。甲冑の数は7体なので、混雑時には少し待たなくてはいけないことも

甲冑は重量があるので、子どもが着用できるようにダンボール製の甲冑も用意されている。ダンボール製と言っても、クオリティが高い! 鎧には関ヶ原の戦い絵巻の柄があり、とてもお洒落だ

着付けは5分程度。なかなかサマになっている!(自画自賛!!) このあと、脇差しと刀2本を装着し(もちろんレプリカ)、兜をかぶれば合戦の地へ向かう準備は完了

ちなみに、甲冑の着付けが終わると馬のコンクリート像の前で記念撮影をしてもらえ、プリントアウトしたものをいただける
そして、いよいよコンクリート像との対面へ。ガチャガチャと甲冑の音を鳴らしながら進んでいくだけでも合戦気分がどんどん高まるので、絶対レンタル着用はしたほうがいいだろう。さて、コンクリート像と聞くとB級感が漂うが、かなり芸術性が高いものだったりする。実は、園内にある像は幻の造形作家・浅野祥雲が作ったもの。浅野祥雲が手がけた作品が展示されている場所は全国に10か所あるが、浅野祥雲マニアの中で関ケ原ウォーランドはトップ3と言われているそう。テレビ番組「タモリ倶楽部」の浅野祥雲特集で関ケ原ウォーランドが取りあげられたこともあり、歴史ファンのみならず番組のファンや浅野祥雲の遺作を求める人など幅広い層が訪れている。そんなコンクリート像で再現された合戦の地の雰囲気を、まずは見てみて!










東と西に分かれ、戦いが繰り広げられている。指揮する武将や勇敢に向かっていく兵、切腹する者がいたりと、まさに合戦場! 関ヶ原の戦い当時の陣形どおりにコンクリート像が配置されており、合戦の開始から終了後の東軍による首実検までを再現した、まさに「関ヶ原合戦のダイジェスト版」と言える。名のある武将の像には名前を記した札があるので、ぜひ、あれこれと物語を想像してみてほしい。

西軍副総大将の宇喜多秀家は、ちょっと小高い所から指令を出している

東軍・福島正則軍の武将である可児才蔵は、鬼気迫る顔で敵に馬乗り!

関ケ原に没したとの噂のある島左近。これは、最期の姿か!?

病におかされて余命いくばくもない大谷吉継が、大親友である石田三成のために西軍に加担するも、小早川秀秋の裏切りにより自害するシーン。詳細は割愛するが、周囲の者が病の感染を恐れ大谷吉継を避ける中、石田三成だけがなんら変わらぬ態度で接したなど、2人の友情物語は何回聞いても感涙ものだ

生首を運ぶ兵たちが“無”な表情というのが、実にリアル

甲冑に泥が付いているペインティングも、臨場感をかきたててくれる。意外に仕事が細かい!

「もう争いはやめい! ノーモア関ヶ原合戦じゃ!」と叫ぶ武田信玄の像も有名。天下分け目の戦いが起きた関ケ原で平和の大事さを伝えるため、あの世からのメッセンジャー・武田信玄に代弁させているという

コンクリート像に武将名とは違うネームプレートがぶら下がっているのだが、これはペンキ塗りイベント(不定期開催)で塗った人の名前なのだという。今度、参加してみたい!
見て回るだけでなく、コンクリート像に触ったり記念撮影してもOK。ちなみに石田三成率いる西軍の人気が圧倒的で、石田三成の像と一緒に写真を撮りたがるお客さんが多いという。ほかにも最近は、「真田丸」で片岡愛之助さんが演じる大谷吉継も人気とのこと。

東軍・大野治長軍の兵士、団九郎兵衛と戦ってみた。甲冑を着ていると、こういう時にサマになる! ところで、団九郎兵衛はなぜ裸? と思われた方もいるだろう。通説は2つあり、1つは肉体を見せびらかしたかったから。そして、もう1つはギャンブルで負けて甲冑類を手放したからと言われている。どちらにしても、ちょっとヤバイ(笑)

脚立が設置されている馬は、乗ってもOKなもの。武将気分でまたがってみよう!
関ケ原ウォーランドの名物は、コンクリート像だけではない。密かに人気なのが、館長・西村さんによる歴史講談だ。初心者向けから上級者向けまで幅広いテーマが話せ、60以上の講談ができるという。しかも、講談調や演歌調といったように話し方もお客さんにあわせて変える玄人っぷり! 最近は不倫ネタが人気で、筆者が訪れた際には豊臣秀吉の側室・淀殿と秀吉の家臣・大野治長の不倫疑惑について語ってくれた。「大野治長はもともと浅井家の家臣だったので、淀殿とは気心知れた仲。秀吉の身長は150cm強と小柄なのに対し、息子の秀頼は190cm。ちなみに大野治長も170cmと長身だったことを考えると……」と、ただのゴシップではなく歴史の背景も交えつつ教えてくれるので、どんどん話に引き込まれていく。

ホワイトボードを使って行われる講談だが、ユーモラスに語ってくれるので歴史が苦手な人でも楽しく聞けるはず!

元・国鉄→遊園地のお抱えペンキ職人という異色の経歴を持つ館長。園内の看板や、石田三成と正妻の顔ハメパネルも館長のお手製だ

時間がある時は、屋外展示場を館長が解説付きで案内してくれることも!
館長の講談を希望する場合は、電話予約が必須。毎日数時間しか講談の時間は取れないので、早めに連絡しておこう。ちなみに、2016年8月11日から16日までは1日を通して講談できるように時間を確保してくれているそうなので、この期間がチャンスかも!?
ゆる〜い関ケ原観光を続行したいなら 関ケ原笹尾山交流館へ!
関ケ原ウォーランドで関ヶ原の合戦を堪能したら、ちょっと足を伸ばしていってもらいたいところがある。石田三成の陣跡、笹尾山隣りにある「関ケ原笹尾山交流館」だ。こちらでも、甲冑を着用(有料)して記念撮影や史跡散策ができるが、なにより廃校を利用した観光施設というところがグッとくる。

小学校の校舎をそのまま利用しているため、グラウンドも健在だ。大人になってから訪れると、足を踏み入れるだけでわくわくする。入館は無料

校長室は戦国図書館になっていた。関ヶ原合戦関連の書籍がたくさんあり、武将塗り絵など子ども向けの遊びもある

予定を記入する黒板には、7月にあった関ケ原の歴史事件が手書きされていた。7月は9月15日の関ヶ原合戦に向けての攻防があったので予定が目白押しだ

荷物を入れるロッカーは、家紋当てクイズの場に変身。扉に貼られた家紋がどこのものかを考え、開けると答えが出てくる

関ヶ原の戦いに参戦した武将の家紋スタンプも、いい味を出している。22武将の家紋をすべて押して持ち帰れば、いい記念になるだろう。ちなみに筆者が押しているスタンプ帳は、関ケ原笹尾山交流館と後述の関ケ原駅前観光交流館で販売されている(価格100円)

関ケ原笹尾山交流館で着用できる甲冑は、すべてダンボール製。それにしても、関ケ原ウォーランドといい甲冑作りがうますぎる……と思っていたら、関ケ原の小学校では秋のお祭りに親がダンボールで甲冑を作らねばならない文化があり、作り方の講習会も催されているのだそう。うまさの理由に、納得

お土産物コーナーもあるので、ぜひ立ち寄ってみて。比較的、子ども向けの遊べるグッズが多い印象だ。販売されているおもちゃを体験できるのはうれしい
合戦の場は食事処に! 東西うどん合戦勃発
お腹が減ってきたら、麺処「やまびこ路」へ行ってみよう! 関ヶ原の戦いにより日本が東と西に分けられた歴史は、現在も料理の材料や味の違いとして名残りがある。有名なところで言うと、東は醤油の色が濃く、西は薄めの「うどんやそばのつゆ」だ。出汁の味が分かれる境界線が関ケ原で、「やまびこ路」では両方の味を楽しむことができる。せっかく関ケ原に来たのなら、天下分け目の味をいただこう。

やまびこ路の「天下分け麺」という看板は、関ケ原ではかなり認知度が高い

店内の貼紙を見ると、どうやら西(関西風)が優勢のようだ。なんでも、石田三成がこの地で戦争をすることになったから逃げるようにと事前に農民たちに伝えており、民衆を守った経緯があることから関ケ原では西軍びいきが多いという

せっかくなので、東西両方のうどんをオーダーしてみた。見るからに出汁の色が違う。関東風(右)は少し甘め、関西風(左)は出汁の風味がしっかりしていてどちらも甲乙つけがたい
<関連サイト>食べログで「やまびこ路 」をチェックする!
テイクアウトで東西うどん合戦! 関ケ原駅前観光交流館
筆者はひとりで東西うどん合戦をしたが、友達とワイワイやりたいなら即席カップ麺「どん兵衛」をチョイスするという手もある。東西で食べ比べできるセットがJR関ケ原駅前「関ケ原駅前観光交流館(愛称:いざ!関ケ原)」にあるので、行ってみた。

2015年10月に改築されたばかりなので、トイレもキレイ! お土産が売っているほか、観光案内もしてもらえる。飲料の自動販売機にも関ヶ原の戦いの絵巻が描かれており、雰囲気を損なわない

荷物を預けるロッカーにも、家紋と大名の名前が明記。必要なロッカーのサイズと自分の選びたい家紋がマッチしない時は、ひどく葛藤することが予想される……。いっそのこと、どちらも確保してしまうか!?

お目当ての東軍と西軍のどん兵衛は、戦国リアルイラストの第一人者・長野剛さんの絵をバックに陳列。「きつね」と「たぬき」が用意されており、それぞれ鰹だしの関東風、昆布だしの関西風がセットになっている。価格はワンセット380円

イートインスペースがあるので、その場で食べ比べることも可能

東西対決のどん兵衛とともに「関ケ原合戦水」を用意しておけば、合戦気分がさらにアップする。絵柄は徳川家康なため西軍びいきには残念かもしれないが、駆逐する勢いで飲み干してやればいい! ちなみに、名水で知られる岐阜県の「高賀の森水」が採用されている
今回の戦利品! お土産を食べつくす&遊びたおす
ここまでどん兵衛ぐらいしかお土産情報を載せていないが、もともとお土産ハンティングに重きを置く筆者だけに、各所をまわりながらお土産をゲットしている。今回、お土産を購入したのは、関ケ原駅前観光交流館(愛称:いざ!関ケ原)と関ケ原笹尾山交流館だ。
まずは、関ケ原駅前観光交流館で揃えた、西軍・石田三成目線で楽しめるお土産をいくつか紹介しよう。“毒”というインパクトに惹かれる「石田三成 胆の毒ゼリー」(520円)は、石田三成が処刑場に連行される際、東軍の役人に「喉が渇いたので白湯がほしい」と申し出たところ、白湯は出せぬが……と、代わりに勧められた干し柿を「胆の毒なのでいらないです」と断ったというエピソードをもとにされたものだ。胆の毒には諸説あるが、「柿は身体を冷やす効果があるため、お腹を下す可能性がある」が石田三成の言った毒なのかもしれない。

毒が目に留まるが、包みが新聞紙風なところもかなり高ポイント

破れないように包みを開いてみると、本当に新聞だった! 「天下分け目新聞」には三成の柿エピソードをはじめ、関ヶ原の戦いをパロディ化した記事が満載だ。尋ね人に「島左近」を入れていたり、戦国ファッションコーナーで兜の飾りなどを紹介するといった遊び心とセンスにニヤニヤしてしまう

もちろん中身は毒ではなく、岐阜県銘産の富有柿を使ったゼリー。三成は拒否した柿だけれど、筆者は一気に全部食べてしまったよ……
東軍の兵たちに「明日死ぬ人が健康に気遣うとは」と笑われた三成は、「大志を遂げようとする者は、死ぬ間際まで自分の命を大切にしなければならない。その気持ちはわかるまい」と笑い返したという。一見するとストイックな健康オタクのようだが、その心意気はかっこいい。
続いては、関ケ原駅前観光交流館でしか購入できない「関ヶ原たまり」。宮内庁御用達のため通常は一般販売されないが、交渉に交渉を重ね、関ケ原駅前観光交流館限定で卸売が実現したという。

じっくり熟成させて造った醤油は、一般的な醤油よりも濃厚な味わいが特徴。330mlが980円、720mlが1,980円で販売されている

刺身に使うのもいいけど、卵かけごはんに垂らすと最高! と聞いたので、さっそくトライ。いつもの卵が高級品のようなうまさになり、何杯でもいけてしまうほどの味わいになった。今日から当分、晩御飯は卵かけごはんにさせてもらうよ……(すまん、旦那)

三成が好んでいたというニラ雑炊にも、「関ヶ原たまり」を数滴。これまた、あまりのうまさに箸が止まらない。この味なら、健康オタクの三成も食べすぎたであろう
関ケ原駅前観光交流館では食べ物ばかり買ってしまったが、関ケ原笹尾山交流館では玩具を2つ購入した。1つ目は、東軍西軍を競争させるペーパークラフト(価格1,000円)。自分で組み立てなければならない。筆者が完成までにかかった時間は、約1時間。久々の工作で少々苦戦したが、なかなかいい出来栄えだと思う。

西軍は石田三成だが、なぜか東軍は徳川家康ではなく黒田長政。三成の陣営に一番近い所に陣を張ったことから、黒田長政が選ばれたのかもしれない

糸を引き、馬を動かしてどちらが速いかを競って遊ぶ。この日は、筆者が操る石田三成の勝利! こういう平和的な戦いであれば、悲劇は起きなかっただろう
2つ目の玩具は、火縄銃。以前、浜松城を訪れた際に購入したゴム鉄砲と同じものだが、関ケ原にちなんでロングサイズの火縄銃となっている。

火縄銃風ゴム鉄砲は6連写できる。価格は3,800円

ただ打つだけでは何なので、石田三成陣跡とその麓の島左近陣跡にある馬防柵を竹串で作り、守備を万全にしつつ攻撃してみることに!

ちなみに本物の馬防柵はこのようなものだが、竹串製馬防柵の再現力、すごくない!? 筆者がこの時代にいたら馬防柵を作る達人となり、現世に名が残っていたかもしれないと妄想がふくらむ

的を変えて、バンバン撃ってみた(家康が多めなのは、西軍びいきゆえ仕方ない)。6連射なので、結構当たりやすい。また、馬防柵で先端が固定されるのも撃ちやすさに貢献してくれた
旅を終えて
始まりから終わりまで、ゆるさ全開だった今回の旅。なかでも関ケ原ウォーランドの逸脱した芸術性と館長のキャラクターは、一度体験すると抜け出せないほどハマってしまう。スルメ的な感じで、じわじわくる。なんて、おそろしい!! そんな珍スポットのような施設なのに、コンクリート像で再現された物語やウィットにとんだ館長の講談はしっかりと歴史をなぞっており、非常に勉強になるのがニクイ! 歴史の話がまったく苦でなくアタマに入ってくるので、子どもを連れて行けば歴史大好きになるのではないだろうか。まぁ、とにかく楽しいので、テーマパークに遊びに行く感覚で行ってみて。カップルでも友達とでも一人でも、楽しめるのは間違いない! 岐阜県にはほかにも関ヶ原の戦いにまつわる陣跡がいっぱいあるので、“ユル歴史”を皮切りに各地に足を伸ばしてみるのも一興だ。
>> ハマりすぎご用心! ゆる〜く歴史が“体験できる”関ケ原ウォーランドに夢中 の元記事はこちら