プレミア新記録を樹立したヴァーディ…終わらない“シンデレラ・ストーリー”

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 2012年5月、後にイングランド代表まで上り詰めるジェイミー・ヴァーディは、カンファレンスプレミア(5部相当)のフリートウッドから、当時チャンピオンシップ(2部相当)のレスターへと異例のステップアップを果たした。それからわずか3年半――。世界最高峰のリーグの一つ、プレミアリーグで旋風を巻き起こすヴァーディの“シンデレラ・ストーリー”はまだ結末を迎えそうにない。

 11月28日に行われたプレミアリーグ第14節で、日本代表FW岡崎慎司が所属するレスターはマンチェスター・Uと対戦し、1−1で引き分けた。この試合でレスターのFWヴァーディは、プレミアリーグ新記録となる11試合連続ゴールを決めた。

 ヴァーディは前節のニューカッスル戦で10試合連続ゴールを記録し、マンチェスター・UのOBで元オランダ代表FWルート・ファン・ニステルローイ氏が持つリーグ記録に並んでいた。また、第13節終了時点ではチームもマンチェスター・Cやアーセナルといった強豪クラブを抑えて首位に立ち、多くのフットボールファンを驚かせた。記録更新に期待がかかる中で2位との首位決戦を迎えたヴァーディは、そのプレッシャーを物ともせず、24分にあっさりとプレミアレコードを更新。試合後には「自分でも信じられないよ。二度と繰り返すことはできないだろうね」と喜びを爆発させた。

 満面の笑みを浮かべるヴァーディがこれまで辿ってきたキャリアは、決して華々しいものではなかった。イギリス、サウス・ヨークシャー州シェフィールド出身のヴァーディは、16歳の時に地元の名門クラブ、シェフィールド・ウェンズデイの下部組織を追われた。スタートからいきなりつまずいたのである。さらに、その後加入したストックスブリッジ・パーク・スティールズやハリファクス・タウンは7部や8部をさまよう小クラブで、表舞台とは程遠い場所だった。決して恵まれた環境ではなかったが、そこでストライカーとしての基本を身に着け、しっかりと結果を残して2011年8月に5部のフリートウッドへの移籍を勝ち取った。

 フリートウッドではさらにその勢いを増し、リーグ戦36試合に出場して31ゴール、17アシストを記録。チームをカンファレンス・プレミア優勝とフットボールリーグ2(4部相当)昇格へ導いた。この功績が認められ、5部から2部という大きなステップアップ、異例中の異例とも言うべき前述のレスター移籍を果たしたのだ。レスターが獲得に費やした金額は100万ポンド(約1億9000万円)からオプションを含めた170万ポンド(約3億2000万円)と推定され、ノンリーグ(5部以下)の選手の移籍金としては史上最高額となった。

 鳴り物入りで加入したレスターでの1年目は、リーグ戦26試合で4ゴールと不完全燃焼。終盤戦はベンチを温める日々が続いた。それでもヴァーディの成長は止まることなく2年目で本領を発揮する。2013−14シーズン開幕戦のミドルスブラ戦でいきなりシーズン初ゴールを決めると、中盤戦以降は完全にチームの得点源となり、37試合で16ゴール10アシストをマーク。イングランド最高峰のプレミアリーグへの挑戦権を手に入れた。

 初挑戦のプレミアでも21試合連続ノーゴールとスランプに陥った時期もあったが、終盤戦にかけて調子を取り戻し、ラスト10戦では4ゴール4アシストと爪あとを残した。すると今年5月にイングランド代表初招集を受け、今シーズンの大ブレイクにつながっている。

 屈強なDFたちがそろうプレミアリーグの中で、ヴァーディは178センチ、76キロとごく“平凡”な体格。そんな彼の得点パターンは主に2つある。相手DFの裏に抜け出す形と、バイタルエリア付近でボールを受けてドリブルでシュートまで持ち込む形だ。その両方で最大の武器となっているのは、一瞬で相手を置き去りにするスピードに違いない。イギリスメディア『スカイスポーツ』が9月に発表したトラッキングデータでは、リーグ最速の時速35.44キロを記録し、数字の上でもその速さが際立っている。