志尊淳が見つめる未来「経験の先に見えてくる答えがきっとある」
16歳でミュージカル『テニスの王子様』でデビューを飾り、“若手俳優の登竜門”である戦隊シリーズ『烈車戦隊トッキュウジャー』で主演を果たし、3月に20歳を迎えた。トントン拍子という言葉が浮かぶが、志尊淳はそんな周囲の声に惑わされることなく「ここからが勝負」と前を見据える。『表参道高校合唱部!』に『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』と話題のドラマへの出演に続き、主演映画『先輩と彼女』もまもなく公開となる。ブレイクの萌芽を見せ始めた20歳に話を聞いた。

撮影/金子真紀 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

“王子様”ではなく等身大の高校生



――『先輩と彼女』は全2巻で100万部突破の南波あつこさんの人気少女漫画が原作です。『トッキュウジャー』終了後の初主演作品ですが、全くタイプの異なる作品、役柄ですね。

そうですね。撮影自体は『トッキュウジャー』と同時期の冬でした。少女漫画原作ということで、キラキラした王子様の役かと思ってたんですが、原作を実際に読んでみたら、僕が演じた美野原圭吾(通称:みの先輩)は主人公・りか(芳根京子)から見るとキラキラしていてカッコいい先輩なのかもしれませんが、普通の高校生なんです。

――なるほど、等身大のキャラクターなんですね。

最初はカッコよく見せなくちゃ…というプレッシャーもあったんですが、あまり意識し過ぎないでいいな、とにかく、みのという役に徹しようと思いました。

――物語はどうしても、りかの視点で進むので、“受け”の芝居が多かったですよね?

受けの芝居に関してはカメラが寄るシーンが少なかったので、ちょっと引き気味のグループショットや、りかとの2ショットのとき、表情や体の動きで感情やキャラクターをどう表現できるか? すごく難しいところでした。

――そこではどうしても彼女の理想の男性としてカッコよく見せないといけない部分もあったかと思います。

ただ、「カッコよく」という部分は、学校のイケメンの王子様という感じよりも、あくまでも、りかが「みの先輩、カッコいい!」と思ってくれるかが大事だったので、どうやったらりかが好きでいてくれる先輩でいられるか? そこを意識して、2人のシーンをすごく大切にしましたね。



壁ドン&アゴクイも自然体で



――窓際での壁ドン、頭ポンポン、酔ったりかをおんぶ、そして窓越しで抱擁など“ザ・少女漫画!”ともいえる胸キュンどころのフルコースですね。

周りが言うほど、僕は恥ずかしいとか照れくさいという気持ちは全くなかったです。観る人にいかに違和感なく受け取ってもらえるか? あの世界に見入ったまま、実際にあってもおかしくないと感じてもらえるか? そこだけを考えてました。

――単にキュンとさせられるだけでなく、みの先輩のキャラクターや2人の距離感が感じられます。

気持ちで動くというか、ああいうことをやる人間だと思わせたいけど、かといってチャラい感じではなく人間らしさを見せる――そのバランスを意識しました。

――2人のキスシーンはまさにそのバランスの極致ですね。少女漫画らしい部分と現実感が絶妙で、すごく美しいシーンに仕上がっていました!

ありがとうございます。あそこはとにかく自然体を意識してました。“アゴクイ(※手で相手のアゴを軽く持ち上げる行為)”は原作にも当初の脚本にもなくて、監督がその場で急遽、やってみようと言い出して入ったんです。

――志尊さんはアゴクイって知っていましたか?

知りませんでした…(笑)。難しかったですが、あれを自然にこなすことで表現できるものがあると思ったので、ナチュラルにというのを意識しました。

――池田千尋監督とはどんなお話をされたんですか? これまでに女性監督とのお仕事は…

女性監督との仕事は『トッキュウジャー』のVシネマ以来だったので、ほぼ初めてに近かったです。やはり、少女漫画原作で、女性の視点でどれがカッコいいか? と判断してくださるのでやりやすかったですね。「私たちが志尊くんの一番カッコいい姿を切り取るから」と仰ってくださったので、安心してお任せできました。

――現場での監督はどのような方でしたか?

すごく役者の気持ちを大切にしてくださる方で、いまどんな気持ちなのかをシーンごとに整理してくださるし、「いま、こういう気持ちだから、このセリフは言わないと思います」と相談すると、それを一度飲みこんでから、しっかりと落とし込んでくださるので監督を信頼し、納得して演じることができました。

――みの先輩に対して、共感したり似ていると感じる部分はありましたか?

好きな女の人に彼氏がいて、どんなにその人のことを想っても実らなくて、そんなときに後輩に言い寄られて――もちろん、それがりかだったからというのはあると思いますが――気持ちが揺れ動いてしまう…というところは共感できるなと思いました。どこかで拠りどころがほしくなって、思わず心が揺れるのってあると思うんです。この時の圭吾には、少女漫画らしくない人間らしさや泥臭さを感じましたね。



恋愛では年齢は「気にしない」



――志尊さん自身は、どんな高校生活を送っていましたか?

僕は、高校に入ってすぐに事務所のレッスンを受けるようになったので、高校生活を楽しむ、というよりは勉強とレッスンの両立を頑張っていたな、という思い出の方が強いですね。みんなが部活しているときに僕はレッスンに参加してる、みたいな。いわゆる「高校生ライフ」には憧れますね(笑)。

――ちなみに制服は学ラン? ブレザー?

ブレザーでした。

――本作だけでなく、『表参道高校合唱部!』、『あの花』も高校生役でした。いまになって、いろんなタイプの高校生活を味わえて、楽しめているのでは?

演じる前は僕もそう思ってたんですよ(笑)。でも、いざ現場に入ると、完全に役者としてそこにいるので、「高校生活を楽しむ」って感覚はまったくないんですよね…。いかに芝居を作り上げていくか? ということに集中してて、高校生ライフって感じがまったくない(苦笑)!

――ちなみに映画の中でみの先輩は、りかにとってはカッコいい“先輩”であり、憧れの女性である葵から見たらカワイイ“後輩”の立場でもあります。志尊さん自身は、所属する「俳優集団D-BOYS」では年齢的には下から二番目の後輩ポジションですが、普段から先輩キャラと後輩キャラ、どちらのタイプですか?

わりとどちらもありますね。「D-BOYS」で先輩に囲まれていると甘えちゃいますし、プライベートや後輩ばかりの状況だと引っ張ります。ただ、末っ子なので、強いてどちらかと言うなら年上の方にかわいがってもらう状況の方が多いかもしれませんね。

――恋愛に関しても、年上の大人の女性、年下のかわいい後輩、どちらが好みかというのはありますか?

あまり、年齢で相手を判断しないというか、恋愛で先輩とか後輩とかは気にしないですね。好きになった相手がいてこその恋愛ですから、最初からどちらがいいとも…年上の女性にも魅力感じますし、後輩の女の子をかわいいなとも思います。

――みの先輩のように想い続けている相手に恋人や好きな人がいたらあきらめますか? それともアタックしますか?

もし、相手に付き合っている恋人がいるなら、その期間中は何もアプローチしないですね。でも、単に好きな人がいるというだけなら、何とかこっちに振り向いてほしいという気持ちで何かするかもしれないですね(笑)。

――相手に恋人がいても「すぐにあきらめて次へ行く」という選択肢はないですか?

それは状況にもよるし…どうなんでしょうね(笑)? とはいえ好きなんですからね。映画の中でも「そこであきらめられるなら好きじゃない」というセリフが出てきますから。