シルバーウイークの最終日を迎え、Uターンラッシュで全国各地がごった返した9月23日の昼下がり。兵庫県神戸市内のホテルの一室に両親と共に現れたその女性は、丁寧に女性セブン記者にお辞儀をしてから席についた。

「あの人が少年院を出たと知った時、本当に怖かった。また戻ってくるんじゃないかって。正直、今だって怖くてしかたない。私がなにか言うことで、また彼を刺激するのではないかって…。でも、今だからこそ、私の言葉で伝えなければいけないことがあるのではないか。そう思って、取材を受ける決意をしました」

 そう語るこの女性は、堀内めぐみさん(27才仮名)。大きな瞳とショートカットが印象的な女性だが、彼女は1997年、神戸連続児童殺傷事件で元少年Aに刺され、奇跡的に生還した被害者である。

 めぐみさんは現在、看護師として多忙な日々を送っている。悪夢の事件を乗り越えて、病に苦しむ患者のために生きることを選んだ彼女の18年間の軌跡を、Aはどんな思いで聞くのか──。

 今年6月に手記『絶歌』(太田出版)を発表したA。8月末にはA4用紙20枚にわたる手紙を女性セブンに送りつけてきた。その内容は手記のプロモーションに終始していた。そのうえ、公式ホームページまで開設し、全裸自撮り写真やナメクジの写真などの公開を始めた。止まらないAの暴走に、めぐみさんがやっとの思いで手に入れかけていた心の平穏は一瞬で崩れ去った。

「手記は読んでいないし、これからも読む気はないです。ただ、ホームページは開いてしまいました。あのイラストや全裸写真…。気持ち悪い。なんであんなものを載せるのか。私、手記の出版以降、また事件の夢を見るようになってしまって…。Aはこの18年間、私や家族がどんな思いで生きてきたのか想像もできないのでしょうか」(めぐみさん)

 彼女がAに襲われたのは、1997年3月16日の正午だった。友達との待ち合わせ場所に向かう途中、前から歩いてきたAに、すれ違いざまにナイフで腹部を刺された。ナイフは刃渡り13cm。傷は深さ8cmに達し、めぐみさんの胃を貫いた。

「刺された時はパニック状態で痛みも感じず、意識もあったんです。よろめきながら待ち合わせ場所まで歩き、仰向けに倒れました。徐々に意識が薄れてきましたが、子供心に“このまま眠ってしまったらもう戻れない”と思って、意識を保とうと必死でした」(めぐみさん)

 何が起きているのかわからない恐怖の中、9才の少女は生きるためにもがいていた。めぐみさんの母親が続ける。

「背中の大動脈の3分の2が切れていて、あと何mmかずれていたら助からなかった。1500ccもの血液を輸血して…。めぐみはまだ小さかったので、体の血液量の半分を輸血したんです」

 2週間後に退院したが、傷口はケロイド状になり、激しい痛みに襲われた。そんな状態でも警察からの聴取は連日続けられた。

「犯人の姿を見ているのは私だけだったので、警察も必死だったのでしょう。私がAの顔を見たのはほんの一瞬でしたが、“若いお兄ちゃん”と伝えました。懸命に人相を思い出して、似顔絵を作ってもらいました」(めぐみさん)

 彼女が刺された同日、山下彩花さん(当時10才)が金槌で頭を殴打され、意識不明のまま1週間後に死亡。捜査の難航をあざ笑うかのように、Aは5月24日に土師淳くん(当時11才)を殺害し、27日、切断した首を中学校の正門前に置いた。

 6月28日にAが逮捕された時、14才の凶行だったことに日本中が凍りついた。めぐみさんの母が述懐する。

「あの日、警察から私たちのところに連絡がなく、逮捕を報道で知って仰天しました。めぐみはその時“同じ痛みを彼も知るべきだ”と言っていました」

※女性セブン2015年10月15日号