ブラジルW杯を戦う日本代表メンバー23人が決定! 辛口解説でおなじみのセルジオ越後氏が、イタリア人指揮官が選んだメンバーへの期待と課題を語った!

■左サイドから仕掛けて大久保と岡崎で勝負

大久保の選出がサプライズといわれているけど、以前にも言ったように、今の充実ぶりを見れば、彼をW杯に連れていくのは当然の選択。サプライズでもなんでもない。昨季のJリーグ得点王で、今季も順調にゴールを重ねている。そんな選手を代表に呼ばないなんて普通じゃ考えられない。むしろ、呼ぶのが遅かったくらいだ。

大久保はワントップでも2列目の両サイドでも、スタメンでも途中出場でも持ち味を発揮できる選手。ただ、ザッケローニ監督には、ぜひスタメンでワントップに使ってほしい。なぜなら、それが彼の高い決定力を最大限に生かす起用法だからだ。

所属する川崎では大久保がワントップを務め、その後ろの2列目に右から小林悠、中村憲、レナトの3人が並ぶことが多い。それが岡崎、本田、香川に代わるだけ。大久保は裏へ抜け出す動きに優れているし、本田や香川との相性も悪くないと思う。

香川や長友のいる左サイドから仕掛けて、中央にいる大久保と、欧州で今季最も結果を出した岡崎で勝負する。それが今の日本代表にとっての最高の攻撃の形だ。少なくとも、何かが起こるかもしれないという期待を持てる。

また、大久保には、プレー以外の部分でも期待がある。

今の日本代表は長い間、固定メンバーで戦ってきたせいか、良くも悪くも選手間の距離が近い。でも、大久保なら“王様”本田にもモノを言えるし、精彩を欠く香川のお尻だって叩ける。昔は、代表ではおとなしかったと聞くけど、彼ももう31歳。4年前の南アフリカW杯の経験もある。誰にも遠慮する必要はないし、本人もその自覚は持っているだろう。

とまあ、大久保への期待は大きいけど、正直に言えば、僕も大久保は選ばれないかもしれないなと思っていた。ザッケローニ監督のこれまでの選手選考、起用法を見れば、とにかくメンバーを固定するタイプで、新しい選手にはなかなかチャンスを与えないからだ。 では、なぜザッケローニ監督は、土壇場になって大久保を呼ぶことにしたのか。

その理由は、これまで主力として重用してきた選手たちの不調にある。具体的に挙げるなら、プレミアリーグで今季無得点に終わった香川、Jリーグで調子の上がらない柿谷、ブンデスリーガでパッとしなかった清武だ。もしブラジルのように層の厚い国なら、彼らは落選しただろうし、選ばれたらブーイングの嵐だ。

でも、日本はブラジルほど層が厚くないし、ファンやメディアも優しい。だから、ザッケローニ監督は彼らを外すことなく、“保険”として大久保を追加した。そう考えるのが自然だ。

逆に言うと、ザッケローニ監督は守備陣にはテコ入れする必要はないと考えたということだ。

これまでの親善試合ではセットプレー時の守備など、攻撃面以上に守備面での不安要素が多かった。しかも、長谷部、内田、吉田など故障から復帰したばかりの選手もいる。ベテランの遠藤もJリーグでのプレーを見るかぎり、決して万全ではない。高さのある選手も吉田しかいない。

個人的には心配だらけだし、守備陣にもサプライズ選出が欲しかったけど、ザッケローニ監督にすれば今までのメンバーで十分戦えるというわけだ。そこはお手並み拝見だね。

■グループリーグ突破は最低限のノルマだ

短期決戦のW杯で一番大事なのは初戦の入り方。相手はコートジボワール。欧州のトップクラブで活躍する選手も多い強豪だ。何よりアフリカ勢のフィジカルの強さは、ブラジルだっていやがるほど。そんな相手にフィジカルの弱い日本が真っ向勝負を挑んでも仕方ない。うまくパスをつないで相手をいなせるかどうかがポイントになるだろう。相手に攻めさせ、ペースダウンしたところで逆襲を狙いたい。そうしたサッカーをキッチリとやるためにも、コンディション調整が重要なカギを握る。名前や実績よりも100パーセントのコンディションで試合に臨めるかどうかを、選手起用における最優先基準にしなければいけないね。

昨年10月のオランダ戦(親善試合)では、遠藤と香川を後半からスーパーサブっぽい感じで起用したけど、状況次第ではそういった柔軟な采配も求められる。

W杯での目標設定について、ザッケローニ監督は具体的な発言を避けた。その代わりに日本サッカー協会の原専務理事が「グループリーグ突破」と話していたけど、僕に言わせればそれは最低限のノルマ。南アW杯で決勝トーナメント(ベスト16)進出を果たしているのだから、それ以上を目指すのが当然だし、そのためにザッケローニを監督に迎え入れたはずだ。ファンもメディアもそのことは忘れてはいけない。

最後に、落選したメンバーについても触れておこう。

決まったことについてどうこう言っても仕方ないけど、豊田(鳥栖)の落選は残念だった。常に代表を意識して、大久保同様にJリーグでゴールを決め続けてきた。強豪ではない鳥栖を上位に押し上げた。にもかかわらず、代表ではほとんどプレー時間をもらえなかった。29歳という年齢を考えても、彼にはもう少しチャンスを与えてほしかったよ。

ただ、彼に限らず、W杯に出られないからといって、サッカー人生が終わるわけではない。この先、見返すチャンスはいくらでもある。そもそも、落選したからといって、実力が劣っているということでもない。選手選考はすべて監督の好み。運やタイミングにも大きく左右される。

大事なことはこの悔しさを忘れず、今後の糧(かて)にすること。今までの自分に何が足りなかったのか、謙虚に反省しつつも、「4年後は俺が」という強い気持ちを持って、所属クラブで頑張ってほしい。個人的にもそういう選手を応援したい。豊田には、ぜひ今季のJリーグ優勝&得点王の二冠を狙ってほしいね。そして、選ばれた23人の選手たちには、日本代表の名に恥じない熱いプレーを期待したい。

■セルジオ越後(SERGIO ECHIGO)

1945年生まれ。72年の来日以降、指導者・解説者として活躍。公式HP【http://sergio-echigo.com】

(構成/渡辺達也)