部下に「不文律」をわからせる4ステップ

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■「損得で説明」が一番効く

どの会社にも不文律はあります。その会社にしか通用しない暗黙の了解なので会社案内にも就業規則にも載っていません。私も新卒でコンサルタント会社に入ったときは面食らったものです。新人だけに課される雑事が存在しました。

ゴルフのときは、家が遠いのに早朝に社長の家に車で迎えに行ったり、宴会を盛り上げるために全員分の芸を企画して休日に小物を買い出したりといった仕事です。それらをこなすかどうかも、上司からの評価につながっていました。もちろん、そんなことは人事評価シートなどには書かれていません。

20代の頃は本業以外のことに時間を取られるのは好きではありませんでしたが、「NO」を言わない社員だったのでいろいろな雑事が回ってきました。出身校へ出掛けていき、事務局にお願いして採用案内のポスターを壁に貼る仕事をしているときなどは、「こんなことのためにコンサルになったのではない」と嘆いたものです。

20代の私と同じように、最近の若手社員の間にはこうした雑事を嫌う傾向があります。キャリア志向がますます高まっているため、ちょっとした雑事を頼んでも「それは私の仕事ではありません」「キャリアにつながらないので意味がありません」と拒絶します。とりわけ、いわゆる頭のよい社員は「仕事で評価してくれ」「企画勝負だ」との意識が強く、合理性の見出せない不文律を忌避する「潔癖症社員」になりやすいのです。

しかし会社は仕事だけで社員を評価しません。「NO」を言わなかった私は5つ、6つと担当する案件が増え、それが後につながるキャリアになりましたが、雑事に対してヘリクツを述べて避けていた同期は、頭の回転が速く優秀だったのにもかかわらず、2件しか担当させてもらえませんでした。

雑事もしっかりこなせる人は、ここぞという大きい仕事でも活躍できる。だから上司はそこも評価ポイントにするのです。潔癖症社員にはその点をきちんと説明し、キャリアにつながらないように見えても、先で関係してくるのだと納得させることが大切です。

実力だけで評価されたい彼らは、たとえば「大型企画を通すには○○部長と△△部長への根回しが必要」といった不文律も合理性がなくくだらないと捉えがちです。

雑事にせよ、根回しにせよ、説得の仕方としては、相手を認めるところから入ります。「ほかの人が、気がついてもスルーするところによく目がいったね。問題意識を持つことは大事だよ」と褒めるのです。そのうえで、「でもくだらない不文律に敵愾心を燃やしてやりたい仕事ができなかったら、大損じゃないか」と諭すのです。

今の若手は「損をしたくない」という気持ちが強いので、損得を明確にするのは有効な話し方です。

組織に属すことで、自分の実力以上に大きな仕事ができる。理不尽と思うような不文律に従うことは、その看板料なのだとわからせるのです。潔癖症社員は理想や志を持っている人が多いですし、能力も高いので、自分のやりたいことと不文律の軽重を天秤にかけさせれば納得しやすいでしょう。

また、どんなにムダなものに思えても、何年も続いてきた不文律なら何かしらメリットがあるものです。それをあなた自身の言葉で説明することが大切です。部下に同調して「本当に意味のないルールだよな」などと言ってしまうのは最悪な上司と言えるでしょう。

最後に、潔癖症社員が失敗を犯したタイミングで説得する手も有効です。ミーティングが終わった後などに会議室の隅に呼んで、「今回のプロジェクトはあまりうまくいかなかったね。○○部長に根回ししなかったのがネックになったんじゃないかな」と話してみるのです。それでも納得がいかないと反論するなら、「じゃあ、この会社を辞めて自分の力で勝負してごらん」と突き放すしかないでしょう。私が転職した中にも不文律などなく本当に実力勝負の企業がありました。そういうところで仕事をすればいいのです。

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投資ファンド勤務 島出純次
東京大学大学院修了。経営コンサルティング会社や事業会社の経営企画部門を経て、事業再生型の投資ファンドに勤務。多くの企業に直接入り込み、再建・成長させてきた。

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(投資ファンド勤務 島出純次 構成=大下明文)