今季から韓国のロッテ入りした京山【写真:羽鳥慶太】

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DeNAで9年間プレー、今季から韓国プロ野球入りした右腕の現在

 今季から韓国プロ野球「KBOリーグ」には各球団1人のアジア枠が設けられ、多くの日本選手が海を渡った。そのうちの1人が、昨オフDeNAを戦力外となり、釜山を本拠地とするロッテ・ジャイアンツ入りした京山将弥投手だ。開幕から1軍でリリーフを務めたものの、10試合に登板したところで2軍落ち。ただそこで「久しぶり」という感覚をつかみ始めている。異国での挑戦、そしてDeNA時代の終盤に苦しんだ「イップス」との戦いまで、自身の経験を言葉にしてくれた。

 5月30日、京山は1軍の本拠地、釜山・サジク野球場で2軍戦の先発マウンドに立った。5回1/3を投げて被安打6本、4失点。ただ5回までに出した走者は2人だけ。三振も4つ奪い、伸び伸びと腕を振っての快投だった。試合は乱戦になり、チームは延長タイブレークの末に10回サヨナラ勝ち。試合後にはこの日の殊勲選手に選ばれるほど、鮮烈な印象を残した。本人にも手ごたえ十分の投球だった。

「やっとというか、久しぶりでした。『この感じ、この感じ』みたいな……」

 京山は昨季限りで、9年間プレーしたDeNAから戦力外通告を受けた。最後の3年は肩痛と、投球がままならなくなる「イップス」との戦いに明け暮れた。突然身に降りかかってきたのは2023年の春季キャンプでのこと。今でも当時の状況を鮮明に思い出せる。

「キャンプ中に肩を痛めてしまって、原因はちょっとわからなかったんです。たぶん勤続疲労だと思うんですけど。なんか肩痛いなと思いながらキャッチボールして、何とか30球くらいバーって投げたんです。そうしたら次の日、キャッチボールでもう投げられないんですよ、全部ワンバウンドになってしまうんです」

 おかしいなと思いながら相手にボールを届かせようとすれば、今度は上空のあらぬ方向に行ってしまう。さすがに「これはちょっとヤバい」と思い中断。ただその後、何とか相手に届かせようとするあまり、ボールを置きに行くようなクセがついてしまった。「それが良くなかった。やっぱり自分の投げ方って、あまり変えてはダメなんです」。苦闘のスタートだった。

 一度光が見えたのは、その秋オリックスからやってきた入来祐作コーチとの出会いだった。2024年春の2軍キャンプでもつきっきりで指導を受け「お前はコントロール無いんやから、真ん中に投げ込め」という言葉が頭に残った。「思い切り投げこめばいいんだよということですよね」。この年、6月27日の対巨人戦(横浜)で延長10回表に登板して無失点に抑えると、チームがサヨナラ勝ちし2年ぶりの勝利をつかむ。シーズンでは23試合で防御率2.01と復活したかに思えたが、再び肩を痛めてしまう。7月、神宮球場でのヤクルト戦でのことだった。

「1軍で3連投したんですけど、3連投した日はもう、キャッチボールから20メートルも投げられない状態で。『今日は投げへんやろう』と思っていたら、試合が延長に行ってしまって……」

渡った韓国で変わったイメージ「本当に親切なんです」

 11回裏、ベンチから声がかかった。痛み止めを飲んでマウンドに向かったものの、次の日からもう、いい感覚は戻ってこなかった。 それから2年、韓国の2軍で好投しつかんだのは「本当に、めっちゃ久しぶりの感覚」だったのだ。

 昨季、DeNAでは1度も1軍からお呼びがかからなかった。時には2軍での登板間隔が2週間近く開くことも。そうなると選手は“先”がわかる。「7月、8月から、DeNAでは今年で終わりだと思って、先のために色々頑張ってました。ファームでも、違うチームにアピールするつもりで投げてました」。異国で伸びた現役生活。自分の野球人生を、どんな形で終わらせたいと思っているのだろうか。

「体が元気なうちはどこへ行っても野球したいなっていう。やっぱり悔いを残したくないので、どこの場所でも、このチームでも自分の体に感謝して野球したいなと思ってます」

 ここまで残した成績は、1軍で10試合にリリーフし0勝1敗1ホールド、防御率7.59。2軍でも8試合で防御率6.30。助っ人選手には過程ではなく、結果だけが求められるのはどの国も同じだ。アジア枠の選手はここまで成功例のほうが少なく、メディアでは交代論も上がる。「日本に来る外国人選手の気持ちがわかりました」と、エスコバーやオースティンら、仲が良かった選手の顔が頭をよぎったという。ただこの環境に飛び込み、韓国という国の印象は大きく変わった。

「人が本当に親切なんです。これは来て驚きました。外国人だし、もっとあしらわれるような感じかと思っていたら全然そんなことはなくて。後輩はしっかりあいさつしてくれますし、先輩もいつも『体大丈夫?』とか聞いてくれますし。韓国ってこんな人情があるんだと。僕が外国人だからかもしれませんけど、そこは日本より強いなと思いました」

 キャンプからエースのパク・セウン投手に食事に連れて行ってもらい、今季阪神から入団したジェレミー・ビーズリー投手とも日韓の野球の違いについて話しあった。ハングル文字の読み方は1か月ほどでマスター。「意味は全然分かりませんけど、読めると面白いですよね。たまに知っている単語もありますし」。ただ一つ、困ったことがある。ラーメンだ。

「僕、ラーメンが大好きで。もうプロ野球選手じゃなかったらラーメン屋になるって言ってるくらい好きなんですけど……」。現在暮らす釜山でも当然、街でラーメン屋を探した。ただ「違うんです。やっぱり味付けが韓国人向けなんです」と苦笑い。京山の好みはガツンと濃い、いわゆる“二郎系”だ。韓国のスープは薄くて物足りないのだという。

 そんなところにも日韓の「違い」が現れる。京山はそのギャップを乗り越えようと、今ももがいている。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)