救急医療の道を進む 新米ママさんドクターの一日【徳島】
救急医療は24時間・365日体制で急な患者を受け入れる過酷な現場です。
そうした中、県立中央病院にはこの救急医療の道を歩む新米ママさんドクターがいます。
なぜ過酷な救急医療を選んだのか?
彼女の一日を追いました。
救命救急センター、医師としての総合力が求められる過酷な現場。
「もう一度お名前教えてもらっていいですか?ここはどこにいるか分かりますか?」
「足これ触って痛くないですか?」
このチームに、新しく医師が加わった。
折野由布子さん29歳、折野さんのもう1つの顔それは…。
子育て真っ最中の新米ママ。
1秒を争う命を守る現場で思うこと。
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「急いでいる場だとしても、どういう患者さんに丁寧に接して関係性を築けるような」
「みんなに頼ってもらえるような、お医者さんになりたいなと」
これは懸命に奮闘する1人の医師と、チームの物語。
子育てのため、実家に近い美馬市に住んでいる折野さん。
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「行ってきます」
(夫・大介さん)
「いってらっしゃい」
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「おはようございます」
「はよ帰りたい、はよ帰りたいって、とにかく子ども起きているうちに帰れたらいいなあって」
「毎日きょうはどんな一日なんだろうって思いながら、想像が予想がつかなくて」
自宅から1時間30分。
勤務する県立中央病院に到着しました。
一日は、夜間に運ばれた救急患者の引継ぎから始まります。
いつ、どんな患者が来るのか分からない救急外来。
引き継いだ患者について、かかりつけの病院に連絡を取り、これまでの状況を確認します。
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「かかりつけの先生に聞いて、老年期の鬱とか可能性もあるんかなって」
「1回、精神科の先生に話を聞いてもらっていいんじゃないか」
徳島県は現在、ドクターヘリの安定運航が難しい状況が続いています。
その穴を埋めるのが、医師が乗り込み現場へむかう「ドクターカー」です。
2026年度から365日体制に。
それに合わせて、救急救命士も2人増員されました。
その1人が山根夏美さん、この春チームに加わりました。
(県立中央病院救急救命センター・山根夏美 救命救急士)
「チームとして人の命を助けられ たらなって、医師や看護師に認められて頼られる救命士になれたらなって思います」
(県立中央病院救急救命センター・森勇人 医師)
「香川のヘリで、香川のヘリを呼んでください」
「もしもし、香川のヘリを呼んでください」
(県立中央病院救急救命センター・森勇人 医師)
「ドクターヘリが要請されているんですけど、当院 今、ヘリがなくなっている状況で」
「消防の本部からこちらに連絡が入って、香川のヘリを呼ぶかどうか最終決定して、お伝えしているという状況」
「ドクターカーも出しますか?」
「出る」
(県立中央病院救急救命センター・森勇人 医師)
「木屋平(美馬市)で2メートルの転落外傷、救出も必要そうだ」
「ヘリとカー、どっちが早いのか分からないので」
実は折野さんは、この春からドクターカーに乗りはじめ、独り立ちしたばかりです。
救急救命士の山根さんも一緒に乗り込みました。
山根さんは現場の救急隊と連絡を取りながら、患者の状態や状況をチームに伝えていきます。
「もしヘリの方が早いようだったら、ヘリ行ってもらって構わんけん」
「まだ救出時間は見えないみたいです」
「2メートルの高さだから、救出できるだろ」
「木屋平までどれくらいかかりますか」
「遠いぞ木屋平までだったら、まだ1時間20分以上かかる」
香川のドクターヘリは、すでに現場に向かっていました。
限られた人員と時間の中で、ドクターカーは別の要請に備える必要もあります。
チームは決断しました。
(県立中央病院救急救命センター・森勇人 医師)
「これはもうヘリで、帰る方向で行きましょう」
「Uターンで?」
「キャンセルで」
病院へ戻ることになりました。
美馬市木屋平から、患者が搬送されてきました。
「軽トラで運転中に2メートル転落して、ちょうどそこに木の枝があって、木の枝に軽トラが乗っている状態」
到着後、患者はすぐにCT検査へ。
70代の男性で、頭の中に出血があったほか、検査の中で全身にがんが見つかりました。
「痛くないです?」
仕事に一段落をつけ、ようやく昼食をとることができました。
医師である、父と母の背中を見て育った折野さん。
自然と自分も、同じ医師の道を目指すようになりました。
ただ、忙しい両親と過ごす日々に、子どもの頃は寂しさを感じたこともありました。
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「葛藤はありましたね」
「自分が医師になったら、子どもに同じような気持ちを感じさせるんじゃないか」
「けどやっぱり、大きくなるにつれ救急医療というものを知って、そういうものに対する憧れがあって、葛藤はありました」
食後に束の間の休憩。
そこへ今度は、別の病院から一報が入ります。
患者が大量に血を吐いたという、緊急の知らせでした。
(県立中央病院救急救命センター・森勇人 医師)
「吐血のショック、66歳女性でバサッといった間にショックになっているというので」
「折野先生、もうあと3分で着きます」
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「患者の続報、来てないですか?」
「続報来てないです」
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「やっぱり、経験していないことが 起きていたらどうしようとか、対応とか不安はあります」
(県立中央病院救急救命センター・森勇人 医師)
「折野先生、今、血圧どれくらいあるんかな」
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「今100あります」
「ごめんなさいね、ちょっと目を見せてくださいね、眼瞼結膜は蒼白やね」
「血圧出ました87、59」
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「ノルアドレナリン(薬)いきましょうか」
患者は救急車で県立中央病院へ。
輸血と詳しい検査を行うことになりました。
次々と判断を迫られる現場、それでも折野さんが救急を続ける理由…。
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「もし、自分の子どもとか家族に何かあった時に、救急を続けていたら、いつかはどこかで役に立つんじゃないか」
「その時に動けない自分は嫌なので、少しずつでも続けられたらいいな」
(県立中央病院救急救命センター・森勇人 医師)
「当院の救命救急センターで一緒に戦ってくれるチームメートでありまして、非常に頼りになる仲間だと思っています」
(記者)
「おつかれさまでした、きょうは一日どうでした?」
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「そこそこ忙しいけど、っていう感じでしたね」
❝1時間かけて美馬市まで帰る❞
夫の大介さんと、娘の琴葉ちゃんが待っていました。
琴葉ちゃんの笑顔があすへの活力、大切にしたいひと時です。
(夫・大介さん)
「長い距離を通勤して、いろんな人の命を救うという所が尊敬しています」
「本当に寝かしつけくらいしかできていなくて、休日もやっぱり仕事に行っていたりするので」
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「私の両親と夫に支えてもらっています。こっちの方が尊敬しているくらいです」
(県立中央病院救急救命センター・折野由布子 医師)
「心折れそうなときも結構あるんですけど、やっててよかったなっていうのが少なからずあると、続けようと思うし」
「家に帰って、子どもの顔見たり」
「ほな出動しますね、ドクターカーですね」
1秒を争う命の現場。
一人一人が命と向き合う、これはママであり救急医として奮闘する1人の医師とチームの物語。
