《不正会計》ニデック永守重信が依存した“ゲシュタポ”特命部長(70代)の正体「メールではなく書面で報告」「しかも事後に破棄していた」
〈永守氏の指示を受けて、不正を闇で処理する存在であり、ニデックのガバナンスシステムの外側の存在〉(第三者委員会の調査報告暑)
相次ぐ不祥事に揺れるモーター製造大手「ニデック」(旧日本電産)。なぜ、不正は放置され続けたのか。そこには謎の人物の関与があった。

調査報告発表前に辞任した永守氏
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「イエスマンじゃ困るけど、クーデターを起こされても困る」
5月13日、ニデックは検査データの改ざんなど1000件を超える品質不正の疑いが判明したと発表した。
「先月、第三者委員会による最終報告が公表され、営業利益に約1600億円のマイナス影響を及ぼす会計不正(利益のかさ上げ)が明らかになったばかり。今度は品質不正に関する第三者委員会が新たに設置された。
会計不正と同根で、創業者でワンマン経営者の永守重信氏(2月に名誉会長職を辞任)による苛烈な業績プレッシャーが原因とみられます」(経済誌記者)
同社は品質不正を発表した日、取締役の刷新を表明。これに伴い、不正を見抜けなかった社外取締役6人が退任することに。
6人の“戦犯”のうち元キャリア官僚が3人を占める。元財務事務次官の佐藤慎一氏、元外務省国際協力局長の梅田邦夫氏、元文科省研究振興局長の小松弥生氏。全員、エリート中のエリートだ。
「永守氏はかつて、財務省幹部5人ほどをお座敷に呼んでもてなす“接待会合”を毎年開催していた。そうした場で永守氏に見出され大きな存在感を放ったのが、佐藤さんでした」(財務省元幹部)
経済ジャーナリストの井上久男氏が指摘する。
「数年前の株主総会で、社外取をどんな基準で選んでいるのか、という質問が出た時、永守さんは自ら『イエスマンじゃ困るけど、クーデターを起こされても困る』と答えていた。永守さんの首に鈴をつけられるような人は、選ばれていなかったのでしょう」
永守重信が依存した“ゲシュタポ”特命部長(70代)
なぜ、元キャリア官僚たちは全く機能しなかったのか。不正の背後で蠢くのが、冒頭の報告書に登場する「特命監査部長・A氏」と呼ばれる70代前半の人物だ。
「附属高校から慶應大学経済学部に進学。卒業後、日立製作所に入社し財務監査を担当。その後所属していた日立のグループ会社が買収されたのを機に、ニデックに所属。『組織に馴染もうとしないが、監査能力は高い』という評判を聞きつけた永守氏が、『特命監査部長』の肩書を与えた。暗い雰囲気をまとっていて近寄り難かったそうです」(ニデック関係者)
A氏は2011年から20年まで、永守氏の“懐刀”として暗躍。不正の「裏監査」を一手に担った。
「正規の内部監査部門があるにも関わらず、単独で社内の会計不正や横領・着服疑惑などを調査。しかも、秘密裏に処理し永守氏ら限られた幹部のみに報告していた。ただ、在任期間中も会計不正が減少することはなかった」(同前)
永守氏への報告はメールに残さず書面で行い、事後に破棄。徹底した秘密主義は「ゲシュタポ」顔負けだ。A氏は永守氏の後任の社長に業務内容を説明するために作成した資料で「8年間特命調査で不正約300件・約350億摘出」と実績をアピール。そして「組織防衛を最優先に外部漏洩阻止」と、歪んだ監査信念が窺える。
「A氏と永守氏らは、監査法人や社外役員に不正を秘匿していた。さらには、会計不正を直ちに是正せずに、子会社が営業利益を大きく落とさないよう不適切に不正を処理していた疑いがあります」(同前)
永守氏はたった一人の社員の特命監査に依存し、不正は長年、隠蔽されてきたのだ。A氏は4年前に退職している。第三者委員会のヒアリングに応じておらず、不正の全容解明は進んでいない。
都内のA氏の自宅を訪ねると、親族が応対した。
「日立製作所の後、どこに勤めていたかも知らない。でもその方(永守氏)の名前は知っています。15年ほど前、(A氏の)母親の葬儀に遅れて来られていました。(A氏は)質実剛健で口が堅い。不正をやるようなことはないと思う」
A氏本人からは親族を通じて「取材には一切答えない」と返事があった。
次の調査は、8月末までの完了を目指すという。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2026年5月28日号)
