「気持ち悪くて怖い」“音大おじさん“から大量DM…現役藝大生「実名SNSは閉鎖」音楽活動続けるには耐えるしかない?迷惑でも拒否できない“演奏者と客”の関係

女性演奏家を悩ませる“音大おじさん”。卑猥なDMが来たり、個人情報を聞かれたりといった迷惑行為が相次いでいる。
しかし、対策をすると自身が不利益を受けてしまうという現実もあり、演奏者たちは様々な悩みを抱えながら活動しているという。
ニュース番組『わたしとニュース』では、音大おじさんに悩む現役音大生の声を紹介しつつ、解決への壁についてコラムニストの月岡ツキ氏とともに深掘りした。
■藝大生「実名SNSは閉鎖」対策と負担の理不尽さ

「本当に嫌です。あまり言ってはいけないですけど、気持ち悪くて怖いです」そう語るのは、音大おじさんによる迷惑行為に悩む現役音大生のAさん。SNSのDMでメッセージが相次いだため、実名のアカウントを閉鎖したという。
ただし、それは音楽活動の実績をアピールする場が減るということでもある。
「でも変なことに巻き込まれるよりはいいかなって思って。自分以外は多分我慢してやっています。割とみんな実名でちゃんとやっています」(東京藝大生・Aさん)
音楽活動を続けていく上では耐え続けるしかないのだろうか。ピアニストとして活躍を続ける栗原麻樹氏に、コンサートなどでの対策を聞いた。
「私の場合は、男性のスタッフさんに、何か困ったことがあったら、『何か合言葉を言ったら間に入ってくださいね』みたいなのは一応決めている」(栗原氏、以下同)
わざわざ会場に足を運んでくれるお客さんは大事にしたいし、演奏後の会話の時間も取りたいという栗原さん。第三者に入ってもらうことで場の空気を壊さず、迷惑行為を防いでいたという。
しかし、身内などの協力が得られない場合、第三者の費用をどう捻出するかが課題になってくる。
「会場費が結構高い。そこに広告宣伝費・チラシ代と人件費などもかかる。赤字かトントンかってなってきた時に、もう一人誰か雇うってなると、やっぱりすごく大変なんじゃないのかな。(コンサートの)2時間を作るために何百時間、何千時間と練習してきているが、練習している時間は時給が出るわけじゃない。華やかな生活に見えて、意外とみんなカツカツな部分が多い」
こうした現状に対し、月岡氏は理不尽さを指摘する。
「第三者をアサインして雇うのにもお金がかかるし、そのお金を払うのは自分となると、なんで芸術とは全く関係ないところに労力やお金を投じなきゃいけないのかという理不尽さがある」
■不快だが…違法ではない?法的な課題

音大おじさん問題について法律の専門家はどう考えるのか。自身も音楽活動に関わっている骨董通り法律事務所の橋本阿友子弁護士は次のように話す。
「被害を受けていると思っている人が、直接的に加害をしていると思われる人に対していろいろ行動するのは危険。施設側から言ってもらうのが一番現実的な解決だと思う」(橋本氏、以下同)
橋本氏によると、施設管理権を基に「会場内は撮影禁止」などのルールを定めた上で、守れない場合には出入り禁止にするなどの手段が考えられるという。それでも対応が難しい問題については…。
「自分の演奏の活動に影響が出るんじゃないかと、どうしても前に進みにくい方がいる。これがまさに被害者心理。(弁護士が)こういう行為をしてはいけませんよと通知すると、それでストップすることもあるので、程度がエスカレートしない間に、『こんなことで相談してもいいのかな?』ぐらいの段階で相談に来ていただく方が早く解決する」
迷惑行為は法的にはどうなのか。明確な盗撮なら違法だが、例えば、勝手に自分の写真を撮られていたり、足元ばかりを集めた動画がアップされているケース。性的な姿態の撮影は処罰の対象だが、演奏中の写真や、足元を写しただけの画像そのものが性的な対象物とは言い難いそうだ。ただし、無断でSNSなどにアップされた場合、削除要請ができることもある。
その上で、橋本氏は「違法な行為なのかそうじゃないのかを法律家以外が判断するのは難しい。違法と言える場合があったり、別の解決方法があるかもしれないなので専門家に相談を」と話す。
一方で、演奏者と客という関係が続く以上、形は変わってもこの問題に悩み続けるのではないか。Aさんはそこから抜け出す方法を模索している。
「こちら側も変わらないといけないなって思うのが、クラシックだけに固執している人がすごく多いので、ほかの音楽もやって収入の口を増やすというか、おじさんに頼っていかなくてもちゃんと食べられるように自分たちで変えていけばいいんじゃないかと思うけど、なかなかそれが難しい……」
■「底辺学生の気持ちは…」相談にハードル
大学側も対策に乗り出している。東京藝術大学では、美術系の展示会で女子学生に執拗な付きまといなどを行う「ギャラリーストーカー」という行為が確認されていたことから、学祭の際に注意喚起を出している。迷惑行為に対して、退場を求めることや警察に通報することを警告している。
では、実際に被害を受けた場合はどうなるのか。Aさんは、匿名で相談できる場を望んでいたが、現状では外部のカウンセリングを除く学内の解決手段としては、匿名で相談できる窓口はない。東京藝術大学側も「匿名での相談は困難」と回答している。
Aさんは「『自分がやられています』というのは恥ずかしい。藝大の先生は、学生からしたら圧倒的上位なので、底辺の学生の気持ちを伝えられない」と、言い出しにくい実情を語る。
学生側が相談することに対してハードルを感じていることで、迷惑行為の実態が把握しづらくなる可能性もある。
これに月岡氏は「『私なんかまだまだなのに、こんなこと言ったら…』と思ってしまう。学校の中で、先生ではない誰かに安心して相談できるところがあると、学生たちも創作活動ができるのではないか」と指摘した。
(『わたしとニュース』より)
