「カルビーの白黒パッケージ」に官邸はピリピリ 民間企業を「呼び出し」までする背景には「疑念」も
「必要となる量は確保できている」
大手菓子メーカーのカルビーは11日、主力商品である「ポテトチップス」などのパッケージを「白と黒」の2色に変更する方針だとされる。この判断に官邸はピリピリしているが……。
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カルビーはホルムズ海峡封鎖などによる中東情勢悪化でナフサ・印刷インクの調達が不安定化していることを受け、「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」など主力14商品のパッケージを白黒に変更する方針を発表した。25日以降、カラーのパッケージがなくなり次第、順次切り替えられることになる。
高市早苗首相は、石油不足、原料不足については一貫して、心配なしとの説明を繰り返してきた。11日の国会でも、原油の安定供給について高市首相は「各国から代替調達を通じて、原油も石油関連製品も日本全体として必要となる量は確保できている。国民の皆さん事業者に向けて、定量的かつ適時に発信をしております」と答弁している。が、ポテトチップスの白黒化という思わぬ形で、産業界の懸念が可視化された格好である。

官邸はピリピリ
政府が安定供給に動いているのは事実だろう。12日には、アゼルバイジャン産の原油を積んだタンカーが神奈川・横浜に到着した。原油調達先の多角化の一環で、ホルムズ海峡の封鎖後では中央アジア産の輸入は初めてとなるという。
「高市氏の言葉に現時点でウソはないようですが、そもそもこの問題がいつ決着するのかわからないのだから、企業がさまざまなシナリオで独自の動きをすることは合理的です。材料の調達費用が上がっていることは間違いなく、企業ごとに耐えられるポイントが違うのは仕方ない。官邸としてもそこはやむを得ないというスタンスですが、カルビーの場合はモノクロというショッキングなやり方でのインパクトが強く、官邸はピリピリしていましたね」
と、政治部デスク。佐藤啓官房副長官は12日、カルビーからヒアリングを行う方針を明らかにした。
「カルビー側もやたらとナフサ不足をあおるつもりは毛頭ないようで、経費節減のためにやむを得ない選択をしたというスタンスのようですね。官邸はそれを受け止めつつ、また違ったリアクションをしています」(同)
フロンティア精神
カルビーの大ヒット作で“やめられない、とまらない”のキャッチフレーズで知られる「かっぱえびせん」は1964年に生まれたが、地元の瀬戸内海で獲れる小エビにヒントを得たとされる。1995年に発売された「じゃがりこ」はそれまで家でたべることが一般的とされていたスナック菓子をコンパクトに外部に持ち出すことを目指したものとして画期的だった。2009年には創業家以外からトップにプロ経営者を招いたこともあった。
「カルビーは業界で進取の精神と言うかフロンティアの心をより強く持っている企業だという評価を受けていると聞きました。官邸もそういう評価をしているということですね。そのため、ある意味で今回のモノクロパッケージ版の発売もそうした精神のあらわれであり、マーケティングの色合いもあるのではないかという捉え方が官邸内では強いですね」(同)
どういうことなのか。
うまくやったよね
「カラーパッケージ版がなくなることを惜しむ客が商品に集い、代わって登場するモノクロパッケージ版にも客は興味を示し、結果的に売り上げがアップするという流れですね。もちろんこれも企業努力のたまものではありますが、どこよりも早く大きなインパクトのある商品を出せば注目を集めやすいという点で、カルビーはうまくやったよねという評価もまた官邸内でありますね」(同)
実際に白黒パッケージが店頭に並べば、すべてのニュース番組で取り上げられることは間違いない。さらに店頭でも逆に目立つ存在となるだろう。
危機を逆手に取ってしたたかに儲けるのはある意味で企業経営の要諦ともいえるが、ナフサ不足の危機をあおることにつながりかねず、「いささか矩(のり)を越えている」のではないかと官邸が見ていることもまた事実のようだ。わざわざ「ヒアリング」と称して呼び出すあたりには、こうした不満や疑念があると言えるだろう。
鈴木憲和農水相は、この件を受けて「食品包装に必要な資材など、ナフサ由来の化学製品の供給につきましては、全体として年を越えて継続できる見込みと承知している」と会見でコメント。さらに困りごとがあれば農水省の相談窓口へ、と呼びかけている。これを冷静な情報発信と捉えるか、大本営発表の一種と捉えるかは人それぞれであろう。しかし政府に相談して仕入れ価格の高騰や原料不足がどうにかできるなら苦労はない、と考える企業人のほうが多いのではないだろうか。
デイリー新潮編集部
